男振をとこぶり)” の例文
紋服を着た西洋人は滑稽こつけいに見えるものである。或は滑稽に見える余り、西洋人自身の男振をとこぶりなどは滅多めつたに問題にならないものである。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
故郷くに靜岡しづをか流石さすが士族出しぞくでだけ人品じんぴん高尚かうしようにて男振をとこぶりぶんなく、さいありがくあり天晴あつぱれの人物じんぶついまこそ内科ないくわ助手しよしゆといへども行末ゆくすゑのぞみは十のさすところなるを
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
乳母 さいな、あのかたはッしゃるには、行儀ぎゃうぎもよければ深切しんせつでもあり、男振をとこぶりはよし、器量人きりゃうじんでもあり、流石さすが身分みぶんのある殿方とのがたらしう……おかゝさまは何處どこにぢゃ?
Kは大学生の中でも出来るのできこえてゐる方であり、弁才にもすぐれてゐれば、男振をとこぶりに於ても、とてもかれにその競争者となる資格のないのをBはよく知つてゐた。
島からの帰途 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
湯嶋ゆしま天神社内てんじんしやない楊弓場やうきゆうば高橋たかはしのおかねの、かれ大層たいそうきみめてつたぞ、杉山君すぎやまくん男振をとこぶりほどいからなにてもくお似合にあひなさるツて、ナニ真実ほんの事だぞ
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
心状しんじやうのほどはらず、仲問ちうげん風情ふぜいには可惜をしい男振をとこぶりわかいものが、鼻綺麗はなぎれいで、勞力ほねをしまずはたらくから、これはもありさうなこと上下かみしもこぞつてとほりがよく、元二げんじ元二げんじたいした評判ひやうばん
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
吹込ふきこみける故初瀬留も男振をとこぶりし大盡の息子と聞き眞實しんじつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
梅喜ばいきさん、本当ほんたうにおまへ男振をとこぶりげたよ。梅「へえわたし随分ずゐぶんをとこで、先刻さつきかゞみでよく見ましたが。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
……むすめ舞振まひぶりは、ることだが、たれかの男振をとこぶりは、みゝづくより苦々にが/\しい。はツはツはツはツ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思ひのままに遊びて母が泣きをと父親てておやの事は忘れて、十五の春より不了簡ふりようけんをはじめぬ、男振をとこぶりにがみありて利発らしきまなざし、色は黒けれど好き様子ふうとて四隣あたりの娘どもが風説うわさも聞えけれど
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
心状しんじやうのほどはらず、中間ちうげん風情ふぜいには可惜あたら男振をとこぶりの、すくないものが、身綺麗みぎれいで、勞力ほねをしまずはたらくから、これはもありさうなことで、上下じやうげこぞつてとほりがよく、千助せんすけ千助せんすけたいした評判ひやうばん
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもひのまゝにあそびてはゝきをと父親てゝおやことわすれて、十五のはるより不了簡ふりようけんをはじめぬ、男振をとこぶりにがみありて利發りはつらしきまなざし、いろくろけれど樣子ふうとて四隣あたりむすめどもが風説うわさきこえけれど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あぶない、たな破鍋われなべちかゝるごとく、あまつさへべた/\とくづれて、薄汚うすよごれた紀州きしうネルをひざから溢出はみださせたまゝ、……あゝ……あゝつた!……男振をとこぶり音羽屋おとはや特註とくちう五代目ごだいめ)の意氣いき
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)