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濶歩
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かっぽ
ふりがな文庫
“
濶歩
(
かっぽ
)” の例文
幅員
(
はば
)
が三十三メートルもあるその大通りのまん真中を、
洋杖
(
ステッキ
)
をふりふり悠然と
濶歩
(
かっぽ
)
してゆくのだった。こんな気持のよいことはなかった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこにうち立てられた神は、人の魂を窮屈なる信条のうちに閉じ込むるものではなく、自由に
濶歩
(
かっぽ
)
するの力を人の魂に与うるものである。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その間に、トム公は、スタスタと自分で大股に
濶歩
(
かっぽ
)
して、相沢の大通りへ出た。巡査は追いかけて、彼の小さな両腕を左右からねじ取った。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
倉地は力のこもった目で葉子をじっと見てちょっとうなずくとあとをも見ないでどんどんと旅館のほうに
濶歩
(
かっぽ
)
して行った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
物音は
罷
(
や
)
まぬのみか、しだいに高まッて、近づいて、ついに思いきッた
濶歩
(
かっぽ
)
の音になると——少女は起きなおッた。何となく心おくれのした気色。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
▼ もっと見る
まるで自分の
一存
(
いちぞん
)
で来たような落付きようで、ほかに
相客
(
あいきゃく
)
の一人もない静かな廊下を
濶歩
(
かっぽ
)
して行って湯につかったり、スキーを習ったりしていたが
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼はその時
服装
(
なり
)
にも、動作にも、思想にも、ことごとく当世らしい才人の
面影
(
おもかげ
)
を
漲
(
みなぎ
)
らして、
昂
(
たか
)
い首を世間に
擡
(
もた
)
げつつ、行こうと思う
辺
(
あた
)
りを
濶歩
(
かっぽ
)
した。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こめかみにいつも浮んでゐる
癇癖
(
かんぺき
)
の筋、
炯々
(
けいけい
)
といふよりは寧ろ冷徹な眼光、とほりのいい幅のひろい声音、
独往無礙
(
どくおうむげ
)
なその
濶歩
(
かっぽ
)
ぶり、——小幡氏の話では
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
市中の道を行くには
必
(
かならず
)
しも市設の電車に乗らねばならぬと
極
(
きま
)
ったものではない。いささかの遅延を忍べばまだまだ悠々として
濶歩
(
かっぽ
)
すべき道はいくらもある。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
濶歩
(
かっぽ
)
埋葬地の間をよぎりて、ふと
立停
(
たちどま
)
ると見えけるが、つかつかと歩をうつして、謙三郎の墓に
達
(
いた
)
り、足をあげてハタと蹴り、カッパと
唾
(
つば
)
をはきかけたる
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は自分の力に
欣喜
(
きんき
)
しながらパリーの中を
濶歩
(
かっぽ
)
した。理解されなくとも結構だ。その方がかえって自由だろう。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いよいよ王政復古となったころは、彼は長い天井裏からはい出し、大手を振って自由に
濶歩
(
かっぽ
)
しうる身となった。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
此
(
かく
)
の如く人は皆これを難しとする所に向つて、独り蕪村は何の苦もなく進み思ふままに
濶歩
(
かっぽ
)
横行せり。
今人
(
こんじん
)
はこれを見てかへつてその容易なるを認めしならん。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
脱ぎ捨てる時も、ズボンのポケットに両手をつっこんだままで、軽く虚空を
蹴
(
け
)
ると、すぽりと抜ける。水溜りでも泥路でも、平気で
濶歩
(
かっぽ
)
できる。重宝なものである。
服装に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
三人共小倉袴に紺足袋で、
朴歯
(
ほおば
)
の下駄をがらつかせて出る。上野の山から根岸を抜けて、通新町を右へ折れる。お歯黒
溝
(
どぶ
)
の側を
大門
(
おおもん
)
に廻る。吉原を縦横に
濶歩
(
かっぽ
)
する。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
役人にしてその位地が
堅固
(
けんご
)
なりと思うあいだは随分
勝手
(
かって
)
な口をきき、いつ
辞
(
や
)
めても天下を
濶歩
(
かっぽ
)
する意気込みを現すも、一たび辞職を勧告さるればたちまち態度を変え
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ロシアの支配下のモンゴリヤ人が来て居るので、本当のロシア人はどこにも見出せないのに、それをラサの
市街
(
まち
)
を
濶歩
(
かっぽ
)
して居るかのようにダージリンへ来て
吹聴
(
ふいちょう
)
して居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
その
後
(
のち
)
に於ける頭山満、平岡浩太郎、杉山茂丸、内田良平等々の所謂、福岡浪人の
濶歩
(
かっぽ
)
の原因となり、歴代内閣の脅威となって新興日本の気勢を、背後から鞭撻しはじめた。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
墳墓の土地の風景と、
濶歩
(
かっぽ
)
した城廓の姿と——そして、それらの人に混って、自分もまたそこに
逍遙
(
しょうよう
)
していた。大小を腰に挾み、麻がみしもに威儀をただして大広間に進んでいた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
世にはこれよりも更に
大
(
だい
)
なる悪、大なる罪を犯しながら白昼大手を振りて、
大道
(
だいどう
)
を
濶歩
(
かっぽ
)
する者も多かるに、
大
(
だい
)
を
遺
(
わす
)
れて
小
(
しょう
)
を拾う、何たる片手落ちの処置ぞやなど感ぜし事も
数〻
(
しばしば
)
なりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
絶食しつづけた彼れらが、重い
鎧
(
よろい
)
を着て、勇気
凛然
(
りんぜん
)
たる顔附きをして、雪の大路を
濶歩
(
かっぽ
)
するその悲惨なる心根——それは実際の困窮を知らぬものには想像もつきかねるいたましさである。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼は幕府を経由せずして、皇家と直接の関係を有したり。彼は京都に藩邸を置くの特許を得たり。彼は三条橋上を、白毛
毿々
(
さんさん
)
たる長槍を
荷
(
にな
)
い、
儀衛
(
ぎえい
)
堂々、横行
濶歩
(
かっぽ
)
して練り行くの特権を有したり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
この死は、大股に
濶歩
(
かっぽ
)
して、あらゆるところを歩き廻る。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
「迷信」とだけが
濶歩
(
かっぽ
)
していた。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
しかしまた、その
垢
(
あか
)
じみた、被服大小たりとも、見すぼらしくは見えない程、この二人の
濶歩
(
かっぽ
)
には、悠々とした気概があり、堂々とした構えがあった。
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あまり車夫が猿股をつけて天下の大道を我物顔に横行
濶歩
(
かっぽ
)
するのを憎らしいと思って負けん気の化物が六年間工夫して羽織と云う無用の長物を発明した。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かくの如く
脆弱
(
ぜいじゃく
)
にして清楚なる家屋とかくの如く湿気に満ち変化に富める気候の
中
(
うち
)
に
棲息
(
せいそく
)
すれば、かつて広大堅固なる西洋の居室に直立
濶歩
(
かっぽ
)
したりし時とは
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
かくのごとく人は皆これを難しとするところに向って、ひとり蕪村は何の苦もなく進み思うままに
濶歩
(
かっぽ
)
横行せり。
今人
(
こんじん
)
はこれを見てかえってその容易なるを認めしならん。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
この時までも目を放たで直立したりし黒衣の人は、
濶歩
(
かっぽ
)
坐中に
動
(
ゆる
)
ぎ
出
(
いで
)
て、燈火を仰ぎ李花に
俯
(
ふ
)
して、厳然として椅子に
凭
(
よ
)
り、
卓子
(
ていぶる
)
に
片肱
(
かたひじ
)
附きて、眼光
一閃
(
いっせん
)
鉛筆の
尖
(
さき
)
を
透
(
すか
)
し見つ。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
急ぎ足に
濶歩
(
かっぽ
)
して改札口の所に近づいたが、切符を懐中から出すために立ち止まった時、深い悲しみの色を
眉
(
まゆ
)
の間にみなぎらしながら、振り返ってじっと葉子の横顔に目を注いだ。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
世人もまたかかる人物を
褒
(
ほ
)
める傾向があったゆえ、もし肩でも
怒
(
いか
)
らして往来を
濶歩
(
かっぽ
)
するか、あるいは人の気にさわることでも大声にしゃべり、相手の人が、病犬が
吠
(
ほ
)
えるかと疑い
避
(
さ
)
ければ
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
高等学校のころには、頬に
喧嘩
(
けんか
)
の傷跡があり、
蓬髪垢面
(
ほうはつこうめん
)
、ぼろぼろの洋服を着て、乱酔放吟して大道を
濶歩
(
かっぽ
)
すれば、その男は英雄であり、the Almighty であり、成功者でさえあった。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
筧
(
かけひ
)
の水で手を洗い、本丸の一室へはいったかと思うと、忽ち、衣服をあらため、小姓、二、三名をうしろに、書院のほうへ
濶歩
(
かっぽ
)
してゆく彼の小がらな姿が
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なに
咎
(
とが
)
めりゃ
私
(
わし
)
が名乗って聞かせる、雀部といえば
一縮
(
ひとちぢみ
)
じゃ。貴様もジャムを連れて堂々
濶歩
(
かっぽ
)
するではないか、親の光は七光じゃよ。こうやって二人並んで歩けばみんな
途
(
みち
)
を
除
(
よ
)
けるわい。」
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
けれど、もとより、その暴と権力が、横行し
濶歩
(
かっぽ
)
した時代。天堂一角のごとき、暴をもって
禄
(
ろく
)
を
食
(
は
)
み、暴をもって誇りとする
原士気質
(
はらしかたぎ
)
が、そんな条理に耳をかすべくもない。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「てめえ達とは、体のできが違うぞ、天城四郎は、不死身なのだ、
源三位
(
げんざんみ
)
の矢も、俺には通るまい」憎々しい見得を切って、大殿の屋根の峰を
濶歩
(
かっぽ
)
するように、手を振って
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
殺伐するに仮借のない張飛は、歩むところに
朱
(
あけ
)
をのこしながら胴の間を
濶歩
(
かっぽ
)
した。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
むなしく
災
(
わざわ
)
いの暴威と敵兵の
濶歩
(
かっぽ
)
におののくだけであった。
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
云いながら、彼は室内を大股に
濶歩
(
かっぽ
)
した。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
濶
漢検1級
部首:⽔
17画
歩
常用漢字
小2
部首:⽌
8画
“濶”で始まる語句
濶
濶達
濶葉樹
濶大
濶然
濶々
濶眼
濶葉樹林
濶葉
濶面