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汲々
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きゅうきゅう
ふりがな文庫
“
汲々
(
きゅうきゅう
)” の例文
春泥は、警察の探索が怖くなって、当の目的であった静子の殺害を思い
止
(
とど
)
まり、ただ身を隠すことに
汲々
(
きゅうきゅう
)
としていたのであろうか。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
区々たる藩閥の巣窟に
閉籠
(
とじこも
)
り、自家の功名栄達にのみ
汲々
(
きゅうきゅう
)
たる桂内閣ごときでは、到底、永遠に日本の活力を増進せしめる事は出来ない。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
この辞句の裏には何よりも信盛が自己の罪のみを
汲々
(
きゅうきゅう
)
と怖れて弁解している気もちが出ている。いやそれ以外には何もないといってもいい。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世のいわゆる慈善家・道徳家・博愛家の丹心より出でずしてかえってかのただ利これ
汲々
(
きゅうきゅう
)
たるの商人より出でたることを見て
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
各人は私利にのみ
汲々
(
きゅうきゅう
)
として、組織的精神は競争心と変じ、
懇篤
(
こんとく
)
のふうは苛酷と変じ、すべての者に対する創立者の慈愛は各人相互の
怨恨
(
えんこん
)
に変わった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
そんな重大な役目を他人のために勤めたとは夢にも知らない虻は、ただ自分の刻下の生活の営みに
汲々
(
きゅうきゅう
)
として、また次の花を求めては移って行くのである。
沓掛より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
諸君が
汲々
(
きゅうきゅう
)
として帝都復興の策を講じているあいだに、わたしも勉強して書庫の復興を計らなければならない。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「
唯
(
た
)
だ東京の
奴等
(
やつら
)
を言ったのサ、
名利
(
みょうり
)
に
汲々
(
きゅうきゅう
)
としているその
醜態
(
ざま
)
は何だ! 馬鹿野郎!
乃公
(
おれ
)
を見ろ! という心持サ」と上村もまた真面目で
註解
(
ちゅうかい
)
を加えた。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
何より
恐
(
おそ
)
ろしいのは、両派の
巨頭連
(
きょとうれん
)
が、自分たちの勢力を張るために、青年将校の意を
迎
(
むか
)
えることに
汲々
(
きゅうきゅう
)
として、全軍に
下剋上
(
げこくじょう
)
の風を作ってしまったことだ。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
いつかコクトオが、日本へ来たとき、日本人がどうして和服を着ないのだろうと言って、日本が母国の伝統を忘れ、欧米化に
汲々
(
きゅうきゅう
)
たる有様を嘆いたのであった。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
営利にのみ
汲々
(
きゅうきゅう
)
としているところは
先
(
まず
)
相場師と興行師とを兼業したとでも言ったらよいかも知れない。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
けれどもそんな事にはいっこう
頓着
(
とんちゃく
)
なく一生懸命に眼前の小利を
謀
(
はか
)
ることに
汲々
(
きゅうきゅう
)
として居る。ですから
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
自分の名声については、
汲々
(
きゅうきゅう
)
として、それを保つ為には時に巧妙な卑劣な方法を取る事を辞さない。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
生徒は試験及第の事ばかりに
汲々
(
きゅうきゅう
)
としておって、徳を求めるなどのことは考えないのである。
今世風の教育
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ヴェランダには人々、女達が多勢立って外を眺めている。中には銃を持った者もいた。此の支那人ばかりではなく、島に住む外国人は皆自己の資財を守るに
汲々
(
きゅうきゅう
)
としている。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
英独の海軍競争既にかくの如くであるから、他の列強もこれと均衡を維持するために、各々海軍の勢力増大に熱衷し、今や列強共、海軍力の競争に
汲々
(
きゅうきゅう
)
としておるという有様である。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
算術の日課を授くるに
汲々
(
きゅうきゅう
)
として、他を顧みるのいとまなきがごとく、たまたま
閑隙
(
かんげき
)
ありて講学に志すものは、さほど実際に急切の関係もなきヘルバルト氏の学理を探求するをもって
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
外
(
ほか
)
に対しては卑屈これ事とし、国家の
恥辱
(
ちじょく
)
を
賭
(
と
)
して、
偏
(
ひとえ
)
に一時の栄華を
衒
(
てら
)
い、百年の
患
(
うれ
)
いを
遺
(
のこ
)
して、ただ一身の
苟安
(
こうあん
)
を
冀
(
こいねが
)
うに
汲々
(
きゅうきゅう
)
たる有様を見ては、いとど感情にのみ
奔
(
はし
)
るの
癖
(
くせ
)
ある妾は
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
自分が最早や妙子に対しては
殆
(
ほとん
)
ど愛情を持っていないこと、
寧
(
むし
)
ろ妙子が
捲
(
ま
)
き起す
災厄
(
さいやく
)
から自分たち一家を守ることにのみ
汲々
(
きゅうきゅう
)
としていることを、不用意のうちに
曝露
(
ばくろ
)
しているのであって
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
世と
相
(
あい
)
おりて、遠近内外の新聞の如きもこれを聞くを好まず、ただ自から信じ自から楽しみ、その道を達するに
汲々
(
きゅうきゅう
)
たれば、人またこれに告ぐるに新聞をもってする者少なく、世間の情態
中元祝酒の記
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しかし保胤は仏教の
所謂
(
いわゆる
)
六道の辻にも似た此辻の景色を見て居る間に、揚々たる人、
踽々
(
くく
)
たる人、営々
汲々
(
きゅうきゅう
)
、
戚々
(
せきせき
)
たる人、
嗚呼
(
ああ
)
嗚呼、世法は亦復
是
(
かく
)
の如きのみと思ったでもあったろう後に
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
常に単独行動を執って、当局の信用を博するに
汲々
(
きゅうきゅう
)
としていた。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
もちろん孔明その人も、
捲土重来
(
けんどちょうらい
)
をふかく期していたのである。彼は、そのまま漢中にとどまった。そして
汲々
(
きゅうきゅう
)
として明日のそなえに心魂を傾けた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かの欧州の権謀政治家や、日夜ただ兵備拡張に
汲々
(
きゅうきゅう
)
として、かえってその兵備拡張の手段なるものは兵備拡張の目的を
遮断
(
しゃだん
)
するの大敵たることを忘却したるはなんぞや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
国のためちょう念は死に
抵
(
いた
)
るまでも
已
(
や
)
まざるべく、この一念は、やがて妾を導きて、
頻
(
しき
)
りに社会主義者の説を聴くを喜ばしめ、
漸
(
ようや
)
くかの私欲私利に
汲々
(
きゅうきゅう
)
たる帝国主義者の
云為
(
うんい
)
を厭わしめぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
ただ専門知識を吸収するのみに
汲々
(
きゅうきゅう
)
としてこの点を閑却するに於ては人間は利己的となる。進んで国と世界とのために尽すという犠牲的精神は段々衰えて来るのである。恐るべきことである。
早稲田大学の教旨
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
平家の
門閥
(
もんばつ
)
が、民を
顧
(
かえり
)
みるいとまもなく、民の衣食を奪って、享楽の油に燃し、自己の
栄耀
(
えよう
)
にのみ
汲々
(
きゅうきゅう
)
としている
実相
(
さま
)
が、ここに立てば、眼にもわかる。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
名に
汲々
(
きゅうきゅう
)
たる君子にして名を欲せざるものあり。実に封建の道徳世界なるものは牛鬼蛇神、ほとんど吾人が想像しあたわざるものなり。しかれどもこれあにやむをえんや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
復
(
ま
)
た当年の
苦艱
(
くかん
)
を
顧
(
かえり
)
みる者なく、そが細君すらも
悉
(
ことごと
)
く虚名虚位に
恋々
(
れんれん
)
して、
昔年
(
せきねん
)
唱えたりし主義も本領も失い果し、一念その身の
栄耀
(
えいよう
)
に
汲々
(
きゅうきゅう
)
として借金
賄賂
(
わいろ
)
これ本職たるの有様となりたれば
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
が、今の民国政府にこの力の認むべきものがあるか。彼等はかくの如き場合に臨むや、
徒
(
いたずら
)
に人民に迎合し、その歓心を得るに
汲々
(
きゅうきゅう
)
たる態度を取る。これ明らかにその権力なきを自証するものだ。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
諸国戦乱の絶えまもなく、各〻が自己の存立に
汲々
(
きゅうきゅう
)
としている世情の常とはいっても、浅ましい限りであった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かくのごとくにして、選挙人も候補者もただただ私利を図る事にのみ
汲々
(
きゅうきゅう
)
として、更に公徳心の何たるを
弁
(
わきま
)
えぬ様になったから
堪
(
たま
)
らない。いわゆる目的は手段を
択
(
えら
)
ばずで、盛んに投票の売買をやる。
選挙人に与う
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
大いに
為
(
な
)
すあらんとしていたらしく、しきりに
蠢動
(
しゅんどう
)
しかけていたが、信玄が
退
(
ひ
)
いてからは、ぴたと自領の限界にすくみこんで、国境の保守に
汲々
(
きゅうきゅう
)
としていた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その世界的野心を遂ぐるに
汲々
(
きゅうきゅう
)
たる者は無い。
列強環視の中心に在る日本
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
その兵力や財力がないのではなく、彼自身も、藩老のすべても、現状の維持に
汲々
(
きゅうきゅう
)
としていたからであった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
於犬の如きは、同じ
筋目
(
すじめ
)
の者でありながら、本能寺直後には、立ちどころに、態度をかえ、秀吉ずれに、
媚
(
こび
)
を売って、身の栄達に
汲々
(
きゅうきゅう
)
たる——文字どおりの犬でござる。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
数百年来どんな国家の
大患
(
たいかん
)
という時でも、彼らは、自分たちの特権を
汲々
(
きゅうきゅう
)
と守ることしか知らぬ。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その一面、軍備と防塞に、拍車をかけて、急に、殻をかぶったように、
汲々
(
きゅうきゅう
)
と、国境をかためた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そういわれてみると、田豊はつねに学識ぶって、そのくせ自家の
庫富
(
こふ
)
を
汲々
(
きゅうきゅう
)
と守っている
性
(
たち
)
だ。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分の一身に
汲々
(
きゅうきゅう
)
と捉われている眼つきと、何ものも考えずにただ
怒
(
おこ
)
ってのみいる感情と——殆ど、瀬の渦に巻かるる落葉の片々たる
浮沈
(
ふちん
)
のすがたのように、収拾のつかない
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
爾後
(
じご
)
において、宿老輩との和を欠いて、三法師君を奉ずることが薄くなっては、足下の臣節も誠意も、私利私慾の営みに
汲々
(
きゅうきゅう
)
たり——などと誤解されても
詮
(
せん
)
ないことになりはしまいか
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
藩臣のうちには、いまだにかれの心事もわからず、その事業に対しての不平やら、あげつらいやら、またこういう際にも、
汲々
(
きゅうきゅう
)
と
自閥
(
じばつ
)
の利と勢力
扶植
(
ふしょく
)
にばかり策謀しているものも多い。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それによって建国されたこの呉の土を、むざむざ敵将操の手にまかしていいものでしょうか。
汲々
(
きゅうきゅう
)
、一身の安全ばかり考えていていいでしょうか。それがしは思うだに髪の毛が逆立ちます
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清洲以後は幼君のお
傅
(
も
)
りも怠って、ただ
偏
(
ひとえ
)
に、私利私慾の営みに
汲々
(
きゅうきゅう
)
とし、洛内においては、私権を
恣
(
ほしいまま
)
にし、洛外においては、事もない今日、
憚
(
はばか
)
りもなく、堅固な築城に莫大な
費
(
つい
)
えをかけている。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……今思えば、わしもあまり一徹であったが、洛陽の顕官どもが、私利私腹のみ肥やして、君も思わず、民をかえりみず、ただ一身の栄利に
汲々
(
きゅうきゅう
)
としておる
状
(
さま
)
は、想像のほかだ。実に嘆かわしい。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汲
漢検準1級
部首:⽔
7画
々
3画
“汲々”で始まる語句
汲々乎