トップ
>
朱塗
>
しゅぬり
ふりがな文庫
“
朱塗
(
しゅぬり
)” の例文
歓楽の中に眼を覚したガラッ八は、
朱塗
(
しゅぬり
)
の
欄干
(
らんかん
)
をめぐらした廻廊に船をつけさせ、女達の手車で二階の座敷の上に導かれました。
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
提灯の前にすくすくと並んだのは、順に数の重なった
朱塗
(
しゅぬり
)
の鳥居で、優しい姿を迎えたれば、あたかも
紅
(
くれない
)
の色を染めた
錦木
(
にしきぎ
)
の風情である。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ザアッと湯の波に
抗
(
さから
)
って、
朱塗
(
しゅぬり
)
の
仁王
(
におう
)
の如く物凄く突っ立った陽吉が、声を限りに絶叫したとき、浴客ははじめて総立ちになって振返った。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
朱塗
(
しゅぬり
)
の
広蓋
(
ひろぶた
)
へ、ゆうべの皿小鉢や徳利をガチャガチャさせて、またそこへ、だらしのない女が二階から持って降りてくる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朱塗
(
しゅぬり
)
の
不動堂
(
ふどうどう
)
は幸にして震災を免れしかど、境内の
碑碣
(
ひけつ
)
は悉くいづこにか運び去られて、懸崖の上には三層の西洋づくり
東豊山
(
とうほうざん
)
の眺望を
遮断
(
しゃだん
)
したり。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
正面には一段高い所があって、その上に
朱塗
(
しゅぬり
)
の
曲禄
(
きょくろく
)
が三つすえてある。それが、その下に、一面に並べてある安直な
椅子
(
いす
)
と、妙な対照をつくっていた。
葬儀記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼女は産に間もない大きな腹を苦しそうに抱えて、
朱塗
(
しゅぬり
)
の
船底枕
(
ふなぞこまくら
)
の上に乱れた頭を載せていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大きな
朱塗
(
しゅぬり
)
の獅子は町の若者にかつがれて、家から家へと悪魔をはらって騒がしくねり歩いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
これも
半白
(
はんぱく
)
の頭で
襤褸
(
ぼろ
)
の著物の下に襤褸の
裙
(
はかま
)
をつけ、壊れかかった
朱塗
(
しゅぬり
)
の丸籠を提げて、外へ銀紙のお宝を吊し、とぼとぼと力なく歩いて来たが、ふと華大媽が坐っているのを見て
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
朱塗
(
しゅぬり
)
の大きな柱が並木のように並んでいた。彼は東側の廻廊から西側の廻廊へ廻ってみた。その西側の廻廊の往き詰めにうす暗い陰気な
室
(
へや
)
の入口があった。彼は
好奇
(
ものずき
)
にその中を
覗
(
のぞ
)
いてみた。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
沖縄の漆器もその
堆金
(
ついきん
)
や
沈金
(
ちんきん
)
で名があり、また
朱塗
(
しゅぬり
)
で眼を惹くものがありました。この技は新しい発展も試みられましたが、やはり在来の伝統的な作の方に、ずっと美しいものがありました。
沖縄の思い出
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
夜目には縁も
欄干
(
らんかん
)
も
物色
(
うかが
)
われず、ただその
映出
(
うつしだ
)
した処だけは、たとえば行燈の枠の
剥
(
は
)
げたのが、
朱塗
(
しゅぬり
)
であろう……と思われるほど定かに分る。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
取出したのを見ると、
虞美人草
(
ぐびじんそう
)
のような見事な
朱塗
(
しゅぬり
)
、紫の
高紐
(
たかひも
)
を結んで、その上に、いちいち封印をした物々しい品です。
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
府下
(
ふか
)
世田
(
せた
)
ヶ
谷
(
や
)
町
松陰神社
(
しょういんじんじゃ
)
の鳥居前で道路が丁字形に分れている。分れた路を一、二町ほど行くと、茶畠を前にして
勝園寺
(
しょうえんじ
)
という
匾額
(
へんがく
)
をかかげた
朱塗
(
しゅぬり
)
の門が立っている。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
重喜
(
しげよし
)
の身の廻りの物を運ぶ
侍女
(
こしもと
)
たちや、
潮除
(
しおよ
)
けの
幔幕
(
まんまく
)
を張りめぐらす者や、
櫂
(
かい
)
をしらべる
水夫楫主
(
かこかんどり
)
、または
朱塗
(
しゅぬり
)
の
欄
(
らん
)
の所々に、槍お
船印
(
ふなじるし
)
の差物を立てならべる
侍
(
さむらい
)
などが
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そばに、手ごろな
朱塗
(
しゅぬり
)
の棒まで添えてあるから、これで叩くのかなと思っていると、まだ、それを手にしない
中
(
うち
)
に、玄関の
障子
(
しょうじ
)
のかげにいた人が、「どうぞこちらへ」と声をかけた。
野呂松人形
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
山門の前五六間の所には、大きな赤松があって、その幹が
斜
(
なな
)
めに山門の
甍
(
いらか
)
を隠して、遠い青空まで
伸
(
の
)
びている。松の緑と
朱塗
(
しゅぬり
)
の門が互いに
照
(
うつ
)
り合ってみごとに見える。その上松の位地が好い。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長方形の
印度更紗
(
いんどさらさ
)
をかけた
卓
(
たく
)
があってそれに
支那風
(
しなふう
)
の
朱塗
(
しゅぬり
)
の大きな
椅子
(
いす
)
を五六脚置いた
室
(
へや
)
があった。
前
(
さき
)
に入って往った女は
華美
(
はで
)
な
金紗縮緬
(
きんしゃちりめん
)
の羽織の背を見せながらその椅子の一つに手をやった。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一処
(
ひとところ
)
、
大池
(
おおいけ
)
があつて、
朱塗
(
しゅぬり
)
の船の、
漣
(
さざなみ
)
に、浮いた
汀
(
みぎわ
)
に、盛装した
妙齢
(
としごろ
)
の
派手
(
はで
)
な女が、
番
(
つがい
)
の
鴛鴦
(
おしどり
)
の宿るやうに目に
留
(
とま
)
つた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
朱塗
(
しゅぬり
)
に
螺鈿
(
らでん
)
を
施
(
ほどこ
)
した美しい
鞘
(
さや
)
まで添えてありますが、
御殿勤
(
ごてんづと
)
めの女中などの持った品らしく、
脂
(
あぶら
)
が乗って曇ってはおりますが、作はなかなか良いものです。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その女達は、
伊万里赤絵町
(
いまりあかえまち
)
から、かわるがわる四、五人ずつ呼んでおく港の遊女で、
朱塗
(
しゅぬり
)
の
駕
(
かご
)
が
山峡
(
やまあい
)
を通る日は、
飽
(
あ
)
いた女が返されて、次ぎのみめよい女が
撰
(
えら
)
ばれてくる日だ。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
石燈籠
(
いしどうろう
)
や、石橋や、
朱塗
(
しゅぬり
)
の
欄干
(
らんかん
)
にのみ調和する蓮の葉は、自分の心と同じよう、とうてい強いものには敵対する事の出来ない運命を知って、新しい偉大な建築の前に、再び
蘇生
(
そせい
)
する事なく
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
燃えるようにちらちら咲いて、水へ散っても
朱塗
(
しゅぬり
)
の
杯
(
さかずき
)
になってゆるゆる流れましょう。海も
真蒼
(
まっさお
)
な酒のようで、空は
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
朱塗
(
しゅぬり
)
の
筐
(
はこ
)
は、騒ぎが一段落済むまで平次が預かり、親の三右衛門がお町に大事を託した心持をくんで、勘当された
倅
(
せがれ
)
の三之助を石井家へ入れてやろうとしましたが
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、うしろの床の間から、
朱塗
(
しゅぬり
)
の
狛笛
(
こまぶえ
)
を取って、ここへ——という目でさしまねきました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平和の克復したこの後の時代にジャズ模倣の名手として迎えらるべき芸人の花形は
朱塗
(
しゅぬり
)
の観音堂を見たことのないものばかりになるのである。時代は水の流れるように断え間なく変って行く。
草紅葉
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その
打囃
(
うちはや
)
す鳴物が、——向って、
斜違
(
すじかい
)
の角を広々と黒塀で取廻わした片隅に、低い
樹立
(
こだち
)
の松を
洩
(
も
)
れて、
朱塗
(
しゅぬり
)
の堂の屋根が見える、
稲荷様
(
いなりさま
)
と聞いた、境内に
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
俺に万一のことがあったら、
用箪笥
(
ようだんす
)
の中の
朱塗
(
しゅぬり
)
の
手筐
(
てばこ
)
を、中味ごとそっと妻恋坂の倅へ届けてくれ。その中には諸大名を始め、江戸中の大商人に貸した金の証文が一杯入っている。
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あるいはまた
麻布広尾橋
(
あざぶひろおばし
)
の
袂
(
たもと
)
より一本道の
端
(
はず
)
れに
祥雲寺
(
しょううんじ
)
の門を見る如き、あるいは
芝大門
(
しばだいもん
)
の
辺
(
へん
)
より道の両側に
塔中
(
たっちゅう
)
の寺々
甍
(
いらか
)
を連ぬるその端れに当って遥に
朱塗
(
しゅぬり
)
の楼門を望むが如き光景である。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
場所も
薔薇
(
ばら
)
の花の
盛
(
さかん
)
な中へ取って、
朱塗
(
しゅぬり
)
の
埒
(
らち
)
も結ってある、日給は一日三円、
十月
(
とつき
)
の約束でどうだという。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この図中に見る
海鼠壁
(
なまこかべ
)
の長屋と
朱塗
(
しゅぬり
)
の
御守殿門
(
ごしゅでんもん
)
とは去年の春頃までは
半
(
なか
)
ば崩れかかったままながらなお当時の
面影
(
おもかげ
)
を
留
(
とど
)
めていたが、本年になって内部に立つ造兵廠の煉瓦造が取払われると共に
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その
身体
(
からだ
)
の色ばかりがそれである、小鳥ではない、ほんとうの可愛らしい、うつくしいのがちょうどこんな工合に
朱塗
(
しゅぬり
)
の欄干のついた二階の窓から見えたそうで。
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
朱
常用漢字
中学
部首:⽊
6画
塗
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“朱塗”で始まる語句
朱塗土器