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曝
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さ
ふりがな文庫
“
曝
(
さ
)” の例文
それで、彼が
白髪
(
しらが
)
山と呼んでいる、玢岩の
曝
(
さ
)
れて怪しく光る鑓ガ岳——その裏尾根を乗り越えて、さらに硫黄沢の源頭へと降り込む。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
男は自分ひとりのような顔をしていて、裏にうらのある、そんな
稼業
(
かぎょう
)
のものの
真唯中
(
まっただなか
)
に飛んだ恥を
曝
(
さ
)
らすようなことがあってはならぬ。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
文筆を執ることを職業として、しじゅう名前を活字で世間へ
曝
(
さ
)
らしているかの女は、よくいろいろな男女から面会請求の手紙を受取る。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
悉皆
(
しっかい
)
焼印の御かめのごとく作り得たならばますます神の全能を表明し得るもので、同時に
今日
(
こんにち
)
のごとく勝手次第な顔を
天日
(
てんぴ
)
に
曝
(
さ
)
らさして
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
誰か旧
魚河岸
(
うおがし
)
の方の側で手鏡を日光に
曝
(
さ
)
らしてそれで反射された光束を対岸のビルディングに向けて一人で嬉しがっているものと思われた。
異質触媒作用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
汽車や電車に乗ると、
胸毛
(
むなげ
)
を
曝
(
さ
)
らし
太股
(
ふともも
)
を現すをもって英雄の肌を現すものと心得て、かえってそれを得意とするものがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
時々は馬鹿にした小鳥が白い糞をしかける。いたずらな
蜘
(
くも
)
めが糸で
頸
(
くび
)
をしめる。時々は家の主が汗臭い帽子を裏返しにかぶせて日に
曝
(
さ
)
らす。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その上古人は少くとも創世記に目を
曝
(
さ
)
らしていた。今人は少数の専門家を除き、ダアウインの著書も読まぬ癖に、
恬然
(
てんぜん
)
とその説を信じている。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私の門前には先ず見るも汚らしく雨に
曝
(
さ
)
らされた獄吏の屋敷の板塀が長くつづいて、それから例の恐しい土手はいつも狭い
往来中
(
おうらいじゅう
)
を
日蔭
(
ひかげ
)
にして
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
廃嫡された鳥小屋があり、その前に遊園地の番人の家が、切張だらけの
時代食
(
じだいば
)
んだ障子を、新時代の光に——初夏の日に——骨を
曝
(
さ
)
らして立っていた。
奥さんの家出
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
白い
腱
(
すじ
)
と赤い肉とが無気味な
縞
(
しま
)
となってそこに
曝
(
さ
)
らされた。仁右衛門は皮を棒のように巻いて藁繩でしばり上げた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして僕の方でも窓を開けておいて、誰かの眼にいつも僕自身を
曝
(
さ
)
らしているのがまたとても楽しいんです。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
狭くむさ苦しく、殆ど身を入れるにも堪へない程だつたが、外の吹き
曝
(
さ
)
らしがあまりに寒かつたし、中には打附けの腰掛けがあつて、休むにもよかつたのだ。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
覚めて桶の中に坐りて背を
日向
(
ひなた
)
に
曝
(
さ
)
らし、夕さりくれば又其桶の中に
衾
(
しとね
)
もなく
安寝
(
やすい
)
し、
瞑想幽思
(
めいさういうし
)
、ひとり孤境の閑寂を楽んで何の求むる所なく、
烟霞
(
えんか
)
をこそ喰はね
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ひたすら事業に
拘泥
(
こうでい
)
するばかりに侮辱に耐え、迫害にも身を
曝
(
さ
)
らして来たが、最近の諸種の事件のさ中にまき込まれ、いったい何が何であるか見当もつかなくなり
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
朝日はかくて
濡縁
(
ぬれえん
)
の端に及び、
忽
(
たちま
)
ちのうちにその全面に射し込んで来て、幾年の風雨に
曝
(
さ
)
らされて朽ちかかった縁板も、やがて
人膚
(
ひとはだ
)
ぐらいの
温
(
ぬく
)
みを帯びるようになる。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
そんな状態で、私は敵の前に我と我身の危険を
曝
(
さ
)
らしているので、朝夕の背広には実に弱る。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「おい、今あけるッたら、荒っぽくされちゃあ、
曝
(
さ
)
れた戸に、ひびがはいってしまわあな!」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
己の耻を
曝
(
さ
)
らすばかりじゃアない、主人や親までの恥になる、困ったなア……あゝ
好
(
い
)
いことがある、この橋の欄干に帯を縛ってぶら下れば、船で通る者ばかりしか見られない
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
破れカブレの
封切序
(
ふうきりじゅん
)
に。並べ上げたる不思議の数々。眼にも止まらず耳にも聞こえぬ。科学文化の地獄の正体。底のドン底のドンドコドンまで。タタキ破って
曝
(
さ
)
らげて拡ろげて。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして結局はどこにもそンな場所が見当らない。どの
畦道
(
あぜみち
)
も崩れ、
河土堤
(
かわどて
)
のどの辺も、ちかづいてみればとげとげしく肌を
剥
(
む
)
き出し、
空
(
か
)
らッ風に
曝
(
さ
)
らされている、といった工合だった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
その一つは小さな動物の骸骨でも見るように白く
曝
(
さ
)
れていたことを思い出した。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
さながら
野晒
(
のざらし
)
の
肋骨
(
あばらぼね
)
を組合わせたように、
曝
(
さ
)
れ古びた、正面の閉した格子を透いて、向う峰の明神の森は小さな堂の屋根を包んで、街道を中に、石段は高いが、あたかも、ついそこに掛けた
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
塗料の剥げた船体を軍港の片隅に
曝
(
さ
)
らしていたのは何が故でしょうか。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
望児山
(
ばうじさん
)
吹き
曝
(
さ
)
らす風の
風
(
かざ
)
さきは仰向きに
臍
(
へそ
)
の寒き砂湯や
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
真相を
曝
(
さ
)
らし、虚飾を剥がれずには置かれぬだろう。
ラスキンの言葉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
紫霞門
(
しかもん
)
の風雨に
曝
(
さ
)
れた
圓柱
(
まるばしら
)
には
一点鐘
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
午
(
ひる
)
さがり、
曝
(
さ
)
れし
河原
(
かはら
)
に
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
雨に
曝
(
さ
)
れて
白
(
しら
)
める岩の
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
髑髏
(
どくろ
)
を「されかうべ」と言う。この「され」は「
曝
(
さ
)
れ」かもしれないが、ペルシア語の sar は頭である。
言葉の不思議
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
寝巻姿ではあるが、長脇差しを引っ下げ、抜け上がっている額を月光に
曝
(
さ
)
らし、左門の方を睨んでいた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かさこそと雑木の葉が、ばさりと
朴
(
ほう
)
の木の広葉が、……朴の木の葉は雪のように白く
曝
(
さ
)
らされていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
煌々
(
こうこう
)
たる科学の光明下に
曝
(
さ
)
らけ出し、読者の頭をグワ——ンと一撃……ホームランにまで
戞飛
(
かっと
)
ばさせている……という筋書なんだがドウダイ……読者に受けるか受けないか……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
都会の始終
刺戟
(
しげき
)
に
曝
(
さ
)
らされている下町の女の中には、時々ああいう女の性格がある。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
中には
赤裸
(
あかはだか
)
の彼がある。見物人は、太陽と雀と虫と樹と草と花と家ばかりである。時々は褌の洗濯もする。而してそれを
楓
(
かえで
)
の枝に
曝
(
さ
)
らして置く。五分間で
火熨斗
(
ひのし
)
をした様に奇麗に乾く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
土を破って地上に
曝
(
さ
)
らされた根株は、大風雨の日に倒されたときのままに置かれてあるのであろう。その根元近くから幹の分れの大枝が出て、これも本幹に添うて斜に腕を押し伸べている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
蘇満国境春冴えかへり砂山の
低山
(
ひくやま
)
斑雪
(
はだれ
)
また吹き
曝
(
さ
)
れぬ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
行燈に透かすと夜露に
曝
(
さ
)
れて白けていた。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見るとその丘の頂きに三本の樫の木が立っていて、二丈あまりの高い所に風雨に
曝
(
さ
)
らされた木小屋が一ついかにも厳重に造られてあって、丈夫な縄梯子が掛かっていた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
満洲里
(
マンチユリイ
)
風車
(
ふうしや
)
片破
(
かたや
)
れ吹き
曝
(
さ
)
るる
残雪
(
ざんせつ
)
の丘に
寒
(
かん
)
ぞきびしき
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
危険に
曝
(
さ
)
らされている恋人のことが心に閃めき、頼母は、逃げた乾児どもを追おうともせず、身を翻えすと一気に、紙帳へ駆け寄り、左門の立っている位置とは反対の、紙帳の裏側に立ち
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
球
(
たま
)
のあたまは
曝
(
さ
)
らされて爪に掻かれて日に光る。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
(進んで危険に
曝
(
さ
)
らされよう! 生死の巷へ出て行こう!)
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
庭の土風に
罅
(
ひび
)
だつ冬の
曝
(
さ
)
れ鼠小走りただち隱れぬ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
稲荷
(
いなり
)
山に近く、
篠井
(
しののい
)
にも近い、吹きっ
曝
(
さ
)
らしの堤である。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
庭の土風に
罅
(
ひび
)
だつ冬の
曝
(
さ
)
れ鼠小走りただち隠れぬ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
曝
漢検準1級
部首:⽇
19画
“曝”を含む語句
曝露
雨曝
恥曝
吹曝
曝書
生曝
棚曝
偃曝
店曝
業曝
曝露症
野臾曝言
野曝
耻曝
簷曝雑記
秘密曝露
洗曝
曝骨
曝首
南軒曝背
...