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旁々
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かたがた
ふりがな文庫
“
旁々
(
かたがた
)” の例文
旁々
(
かたがた
)
の手を見れば、
半
(
なかば
)
はむきだしで、その上に載せた草花の束ねが呼吸をするたびに
縞
(
しま
)
のペチコートの上をしずかにころがッていた。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
私は旅館の相談
旁々
(
かたがた
)
、紹介を得て来た図書館長の永山氏に電話をかけた。私、早口になると見え、電話がてきぱき相手に通じない。
長崎の一瞥
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それが午後七時頃のことだ。遠い所でもないので、彼はいつもの様に、散歩
旁々
(
かたがた
)
、吾妻橋を
迂回
(
うかい
)
して、
向島
(
むこうじま
)
の土手を歩いて行った。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
当時政治は薩長土の武力によりて
翻弄
(
ほんろう
)
せられ、国民の思想は統一を欠き、国家の危機を
胚胎
(
はいたい
)
するの
虞
(
おそれ
)
があり、
旁々
(
かたがた
)
小野君との
黙契
(
もっけい
)
もあり
東洋学人を懐う
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「この辺へ商売用で来ました、ついでと言っちゃ済みませんが、昨夜は親分の御世話になりましたのでお礼
旁々
(
かたがた
)
伺いました——」
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
仕方がないから葡萄の葉が陽を
遮
(
さえぎ
)
っている
四阿
(
あずまや
)
の中で時間潰し
旁々
(
かたがた
)
、心残りのないように遺言状を一通
認
(
したた
)
めておくことにしたのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
主税が、
小児
(
こども
)
衆は、と尋ねると、二人とも
乳母
(
ばあや
)
が連れて、土産ものなんぞ持って、東京から帰った
報知
(
しらせ
)
旁々
(
かたがた
)
、朝早くから出向いたとある。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
別にこの縁談については中に立ったというわけでもなし、
旁々
(
かたがた
)
下手に間に入って口をきくと、
反
(
かえっ
)
て
先方
(
せんぽう
)
から
怨
(
うら
)
まれなどした事もあったので
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
其の地の名産たるタマナ樹で豪勢な
舞踊台
(
オイラオル
)
を作らせ、それを持帰った上で、其の披露
旁々
(
かたがた
)
二人の夫婦固めの式を行うという条件つきである。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
……
参詣
(
さんけい
)
旁々
(
かたがた
)
遠眼にお姿を拝見したいから、六ツ半ごろ、眼に立つところにお立ち出でくださるようにと書いて差上げました。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
大先生の
尊顔
(
そんがん
)
も
久々
(
ひさびさ
)
にて
拝
(
おが
)
みたいし、
旁々
(
かたがた
)
かの土地を見物させて貰うことにしようかと、
師恩
(
しおん
)
に
篤
(
あつ
)
き金博士は大いに心を動かしたのであった。
戦時旅行鞄:――金博士シリーズ・6――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だが、生憎Aの細君は、歯医者へ行く
旁々
(
かたがた
)
街へ買物に出たばかりで留守だった。帰るのを待っている程の時間がなかった。
花嫁の訂正:――夫婦哲学――
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
久松家の用人をしていた私の長兄が留守番
旁々
(
かたがた
)
其所
(
そこ
)
に住まうようになって、私は帰省する
度
(
たび
)
にいつもそこに寐泊りをした。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
日暮れがた、南里君は瀬川君をおくり
旁々
(
かたがた
)
鶺鴒の巣を見に行った。陽がかげって、大気が夕靄のためにうすじめっているので水の音に秋を感じた。
鶺鴒の巣
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
気ばらし
旁々
(
かたがた
)
無音
(
むおん
)
払いを
兼
(
かね
)
て金儲けと一挙三得のうまい旅行だ。手近の碼頭から次々にと上流の方へ足を伸ばして行く。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
複刻を求めらるる向きも多く、
旁々
(
かたがた
)
前述の削除部分を、全部採録し、更に新たに発見された「続スウィス日記」をも合刻して、完本とすることにした。
「続スウィス日記」発掘の始末:附「スウィス日記」の由来
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
故人の口から最も親しき人の一人として聞いてゐた人見氏の言に応じて、予一個の追悼の情を尽す
旁々
(
かたがた
)
、此悲しき思出を書綴ることにしたのは其為だ。
悲しき思出:(野口雨情君の北海道時代)
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
すると、新年になって、年始
旁々
(
かたがた
)
譲吉の家を
訪
(
たず
)
ねた友人の杉野は、仕立下ろしと見える新しい大島の揃を着て居た。
大島が出来る話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
一つは警視総監の鼻を明かし
旁々
(
かたがた
)
、呉井嬢次の
讐討
(
かたきう
)
ちの
助太刀
(
すけだち
)
をするに就いて、準備的の偵察をこころみるために……それからもう一つは嬢次少年が
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その内に
御影
(
みかげ
)
の
狛犬
(
こまいぬ
)
が向い合っている所まで来ると、やっと泰さんが顔を挙げて、「ここが一番安全だって云うから、雨やみ
旁々
(
かたがた
)
この中で休んで行こう。」
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見入
(
みい
)
っているのではない。まさしくそれは心に聴き入っていると言った方が適切である。万一の場合を気遣って、御警固
旁々
(
かたがた
)
座に控えていた者はたった四人。
十万石の怪談
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
余っ程
閑暇
(
ひま
)
の時は、東京で病みついたトルストイの本を読んでいた。それから時々は、ぶらぶらと、近くにある世古の滝の霊場に
浸
(
つ
)
かり
旁々
(
かたがた
)
山や畠を見まわった。
忠僕
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
お詑び
旁々
(
かたがた
)
此処で白状してしまふが、幹彦君は私と違つて努めて土地の人情風俗に同化しようとする様子が見え、いつの間にか祇園先斗町の廓言葉などを覚え込んで
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
壁辰は、左官が本職で、
旁々
(
かたがた
)
お
上
(
かみ
)
の御用もつとめているのである。岡っ引きとして
朱総
(
しゅぶさ
)
をあずかり、その方でも、いま江戸で、一と言って二と下らない
眼利
(
めき
)
きなのだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
旁々
(
かたがた
)
伜が最期の際の御縁もゆかしく思われるので、是れはそのままそのもとに納めて頂きたい、いかなる境涯の人かは知らないが、末ながくお栄えなさるよう祈っている
金五十両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
赤十字病院を退院すると私はすぐに、
大船
(
おおふな
)
の常楽寺に行って静養する事になった。そこには今村のお嬢さんが絵の稽古
旁々
(
かたがた
)
松洲先生等と一緒に避暑に行っていたからであった。
骨を削りつつ歩む:――文壇苦行記――
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
きょうはそのお礼をいい
旁々
(
かたがた
)
時次郎さんに折入って相談があって参りました。
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
病人ノ加持ノ法又ハ摩利支天ノ鑑通ノ法、修行術種々、二カ月バカリニ残ラズ教エテクレタ、ソレカラコノ南平ハボロノナリ故、色々
入用
(
いりよう
)
ヲカケ、謝礼
旁々
(
かたがた
)
一年半バカリニ四五十両カケタ
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
先生の家にも多代子と同年の娘があって、おなじ女学校に通っているので、
旁々
(
かたがた
)
その世話をしてやることになったのである。兄の透はこの近所の植木屋の座敷を借りて、そこから通学している。
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
其の上に彼の高輪田長三が其の後も秀子を陥しいるる為に倫敦の解剖院の助手に賄賂して、女の死骸を買い取った事までも分り、昨日の昼頃礼
旁々
(
かたがた
)
にそれ等の次第を報じて権田の許へ来たに依り
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
まずはとりあえず御通知
旁々
(
かたがた
)
御伺いまで。敬具
平野義太郎宛書簡:01 一九三一年九月二十日
(新字新仮名)
/
野呂栄太郎
(著)
旁々
(
かたがた
)
御光来
(
おいで
)
を願ひました
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
旁々
(
かたがた
)
お邸を出るとなると、
力業
(
ちからわざ
)
は出来ず、そうかと云って、その時分はまだ達者だった、
阿母
(
おふくろ
)
を一人養わなければならないもんですから
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君を疑ったりして、全く相済まんと思っているのです。今日は、実はそのお詫び
旁々
(
かたがた
)
、事情をよくお話しようと思って、来て頂いた訳ですよ」
心理試験
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
睫毛はうるんでいて、
旁々
(
かたがた
)
の頬にもまた
蒼
(
あお
)
さめた唇へかけて、涙の伝った
痕
(
あと
)
が夕日にはえて、アリアリと見えた。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
降りこめた雨が三十一日(七月)の朝になつて
漸々
(
やうやう
)
霽
(
あが
)
つた。と、吉野は、買物
旁々
(
かたがた
)
、旧友に逢つて来ると言つて、其日の午後、一人盛岡に行くことになつた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
すると或日久しぶりに、よその奥さんが子供をつれて、年始
旁々
(
かたがた
)
遊びに来た。この奥さんは昔から若くつてゐたいと云ふ事を、口癖のやうにしてゐる人だつた。
東京小品
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
旁々
(
かたがた
)
もって今日は出勤せぬ旨を銀行へ電話させておいて、午後の三時頃には私は迎えに来た自動車でアベニイダ・フロリダ街の本邸へと引き揚げて来たのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「坊っちゃんの二七日の
逮夜
(
たいや
)
だし、今日はお富さんが引揚げて来ると言うんで、手伝い
旁々
(
かたがた
)
、河内屋へ行って、泊り込んだそうですよ、多分飲みつぶれたことでしょう」
銭形平次捕物控:050 碁敵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「左様ですか、皆さん態々お集り下すって恐れ入ります、今日は父の三十五日でもあり
旁々
(
かたがた
)
お話し申す事があってお出でを願いました、どうかお楽になすって下さいまし」
無頼は討たず
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
妾達を、追うて来る人でも、身体と心との
凡
(
すべ
)
てを投じて、来る人はまだいゝのよ。あの人達なんか遊び半分なのですもの。
狼
(
おおかみ
)
の散歩
旁々
(
かたがた
)
人の後から
従
(
つ
)
いて行くようなものなのよ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
また、前の年の秋頃から、時々、浅間山が噴火し、江戸の市中に
薄
(
うっ
)
すらと灰を降らせるようなこともあったので、
旁々
(
かたがた
)
、何か天変の起る
前兆
(
まえぶれ
)
でもあろうかと、
恟々
(
きょうきょう
)
たるむきも少くなかった。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
あの人とくると武州方面にも、贔屓にしている親分さんが、相当たくさんありますし、あの人の剣術の先生という人が、有名な小川の
逸見
(
へんみ
)
多四郎様なので、
旁々
(
かたがた
)
あちらへ参られたのでしょうよ
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「てまえごときもの、とうてい、お対手は出来申さず候。ついてはおわび
旁々
(
かたがた
)
、おちかづきのしるしに、粗酒一
献
(
こん
)
さしあげたく候間、
拙邸
(
せってい
)
までおこし下さらば腰本治右衛門、ありがたきしあわせと存じ奉りあげ候」
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
内々その予言者だとかいうことを御存じなり、外に
当
(
あたり
)
はつかず、
旁々
(
かたがた
)
それでは、と早速
爺
(
じじい
)
をお頼み遊ばすことになりました。
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これは別段さしたる用途もないのだけれど、ボンボン時計のネジを捲く二つの穴になぞらえて、装飾
旁々
(
かたがた
)
機械室に光線を取る為に開けてあるのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その晩は寝ても、妙な夢ばかり見て、何度となくうなされましたが、それでもようやく朝になると、新蔵は早速泰さんの所へ、昨夜の礼
旁々
(
かたがた
)
電話をかけました。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其処へ道庁に勤めてゐる友人の立見君が公用
旁々
(
かたがた
)
見舞に来て呉れたので、早速履歴書を書いて頼んで遣り、二三度手紙や電報の往復があつて、私は札幌の××新聞に行く事に決つた。
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
浜村屋の屋号
透
(
すか
)
しの
薄葉
(
うすよう
)
に、肉の細い
草書
(
くさが
)
きで、
今朝
(
こんちょう
)
、参詣
旁々
(
かたがた
)
、遠眼なりともお姿を拝見いたしたく、あわれとおぼしめし、六ツ半ごろ、眼にたつところにお立ち出でくだされたく、と書いてある。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
右釈明
旁々
(
かたがた
)
近日参邸いたし度く——あゝ何と云う
図々
(
ずうずう
)
しさだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
旁
漢検1級
部首:⽅
10画
々
3画
“旁”で始まる語句
旁
旁〻
旁証
旁人
旁看
旁㐌
旁付
旁午
旁故
旁旁