つかさど)” の例文
僧侶は、相互の契約によって、一切の霊界の仕事をつかさどり、そして俗人はその労働によって国家を富まし人口を繁殖せしめるのである1
すなわちオカタ殿のみのつかさどるところであり、誤ってその席を侵したアネ子などは、それだけでも離縁せられるに十分な理由があった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼らは真髄武士道の新参者と称すべく、その数や多大なり。彼らの中よりして軍隊の将校を出し、また政府の事務をつかさどるの公吏を出す。
武士道の山 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これよりさき生田葵山書肆しょし大学館と相知る。主人岩崎氏を説いて文学雑誌『活文壇かつぶんだん』を発行せしめ、井上唖々と共に編輯へんしゅうのことをつかさどりぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
天平てんぴょう四年八月、藤原宇合うまかい(不比等の子)が西海道節度使さいかいどうのせつどし(兵馬の政をつかさどる)になって赴任する時、高橋虫麿たかはしのむしまろの詠んだものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
何でも家庭料理をつかさどる人は平生あの分析表を側へ置いてこの食物は何の作用をするからどういう時に食べると承知していなければなりません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
守隨もりずゐ兵三郎なる者甲府から江戸に入つて、關東八州の權衡けんかうつかさどり、後徳川家康の御朱印ごしゆいんを頂いて東日本三十三ヶ國の秤の管理專賣を一手に掌握しやうあく
しかるにコムニスト党は務めて国権を拡張し務めて民権を減縮して農工商の諸業をも悉皆国家の自らつかさどるを良好となす
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
家々の生活は簡単なもので、醤油しょうゆなければ、麦の味噌はすべてのものの調味をつかさどっている。鰹節かつおぶしなどは、世にあることも知るまい、梅干すらない。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
高家というのは例の吉良上野介のような役目で、公家くげと武家との間に立って両者の交渉をつかさどる職務であるところから、自然賄賂わいろを受ける機会も多くなる。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
あのお方は天下の政務をつかさどる御身として、殿下のお留守を幸いに驕慢きょうまんの沙汰が多く、日々狂おしい御乱行にふけっていらっしゃるとのこと、委細の様子は
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
沼に連接した大きな河の水の調節をつかさどるために出来た閘門は、これから十町ほど下つたところにあるといふことであつた。私達は船頭のあとについて行つた。
ある日の印旛沼 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
武事をつかさどるオオトモ(大伴)氏やモノノベ(物部)氏やはそれについて重要のはたらきをしたのであろう。
我が古代における葬儀のことは、土師部はじべつかさどるところであった。葬儀は穢に触れるものとして、その専業者は自然他から卑しく視られるのはやむをえなかった。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
寛政八年正月十四日に五十七歳で歿した。時に大湫の歿後十八年で、豊洲は三十九歳になつてゐた。駒石は晩年山村氏のために邑政いふせいつかさどつて、頗る治績があつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さるを公子の車を誂へ置きたれば、共に醫師の家訪はずやと宣給ふがことわりなれば、隨ひて行きぬ。小く心安げなる家にて、年けたる姉の家政をつかさどれるあり。
そうして祭祀をつかさどった。貴族も文字通り貴族であって、主族の下に政治をとり、また武備に従事した。すなわち政治家と武人との族で、僧族に次いで威張っていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そうなすつたらわたくしが水をつかさどつておりますから、三年の間にきつと兄樣が貧しくなるでしよう。
浴主は特に禅刹ぜんさつで入浴のことをつかさどる役目だからである。しかし由玄はこの通り名で、大華厳寺八宗兼学けごんじはっしゅうけんがくの学侶のあいだに親しまれている。それほどにこの人は風呂好きである。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
これは適当な人物がなければ、いたまゝであつた。老中は年寄とも云ひ、譜代の五、六万石から十万石の大名を任じ、一切の政務を執り、大名の取締をつかさどつた。定員は五人である。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
アスビスは野干頭人身、これ野干が墓地に多く人屍を食う故屍をつかさどる神としたのだ。
折から彼等の腹心の中臣習宜阿曾麻呂スゲノアソマロが大宰府の主神カンヅカサとなつて九州へ赴任することになつた。主神は大宰府管内の諸祭祀をつかさどる長官で、宇佐八幡一社のカンヌシの如き小役ではなかつた。
道鏡 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
ただちに土方与志を葬儀委員代表に推し、前記の人々が葬儀委員として事務をつかさどることとなった。二十六日午前十時、築地小劇場に劇場員一同を集めて、青山杉作が以上の経過を報告した。
小山内薫先生劇場葬公文 (新字新仮名) / 久保栄(著)
「人の生命は、天がつかさどってるから、わしの力では、どうすることもできない」
北斗と南斗星 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
願はくは、妾のつかさどれる后宮の事、宜しく好仇ヨキツマに授け給ふべし。丹波国に五婦人あり。志トモに貞潔なり。是、丹波道主王の女なり。(〔道主王は、稚日本根子大日々天皇の子(孫)彦坐王の子なり。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この厠についてもちょっと言うが、世子の大便所は引出しの如きものになっていて、籾殻が底に敷いてある。そうして一回一回大便を捨ててしまうので、御下男といって最下等の卒のつかさどる所である。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
だが蜻蛉の場合は、既に神経の運動をつかさどるものを失っているのだ。
首を失った蜻蛉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
当時長州において藩政の枢機をつかさどる、周布すふ政之助、長井雅楽ながいうたの徒、松陰が才を愛せざるにあらず、また彼が心事を諒せざるにあらずといえども、彼が打撃的運動を以て、一藩の大事を破るものとなし
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
今は君静かにみずかつかさどらす夜の空より
家庭料理をつかさどる人は有益なる事柄を知るに随ってこの欄内へ記入しおかるべし。また新聞雑誌にでたるものは切抜きて貼付はりつけらるるも可なり。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
また「弁事(十人)ハ公卿諸侯大夫士庶人ヲ以テコレニツ。権弁事モマタコレニならフ。内外ノ庶務ヲ受付シ官中ノ庶務ヲ糺判きゅうはんスルコトヲつかさどル。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
守随しゅずい兵三郎なる者甲府から江戸に入って、関東八州の権衡けんこうつかさどり、のち徳川家康の御朱印ごしゅいんを頂いて東日本三十三ヶ国の秤の管理専売を一手に掌握しょうあく
女が酒の醸造をつかさどったことは、近昔の文学では狂言の「うばが酒」に実例がある。無頼ぶらいおいが鬼の面をかぶり、伯母おばの老女をおどして貯えの酒を飲むのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これけだし祝部はふりべすなわち神と人との間に立って、霊界との交通をつかさどる能力あるものが、土人すなわち地主側のものの後裔に多く存する事を示したものと解せられる。
「十三日。(五月。)晴。午後微雨。関帝祭祀。安石夫婦来割烹かつぱうす。」関帝を祭ることは、維新後にも未だ廃せられずにゐた。飯田安石と其妻とが来て庖厨の事をつかさどつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
(譯者云。古説に三女ありて人生運命の泰否をつかさどる。性命の絲を繰るをクロトと曰ひ、これを撮みたるをラヘシスと曰ひ、これを斷つをアトロポスと曰ふ。姉妹神なり。)
浴主は特に禅刹ぜんさつで入浴のことをつかさどる役目だからである。しかし由玄はこの通り名で、大華厳寺八宗兼学けごんじはっしゅうけんがくの学侶のあひだに親しまれてゐる。それほどにこの人は風呂好きである。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
懲役人も犯罪の恐るべきを教ゆる一つの教育家になってしまう。まして善人を賞し悪人をののしる講釈師、落語家、デロレンなどが教導職と称せられ、下層社会の教育をつかさどった観がある。
教育家の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
折から彼等の腹心の中臣習宣阿曾麻呂すげのあそまろが太宰府の主神かんづかさとなって九州へ赴任ふにんすることになった。主神は太宰府管内の諸祭祀をつかさどる長官で、宇佐八幡一社のカンヌシの如き小役ではなかった。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
代々神祇祭祀をつかさどる家柄であり、物部氏は、代々武将であり、これに反して、蘇我氏は、先祖武内宿禰すくね以来韓土と交渉を持ち、代々外交をつかさどる家柄であつたから、この対立が出て来たのであらう。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
よごとが段々一定の目的を持つた物に限られる様になつてから、元の意義の儘のよごとに近い物ばかりをつかさどり、よごとに関聯した為事を表にする斎部の地位が降つて来る様になつたのも、時勢である。
曰ク第一局ハ訟ヲ聴キ獄ヲきくシ捕亡ヲ督スルコトヲつかさどル。曰ク第二局ハ戸口ヲ正シ租税ヲ督シ出納ヲ算シ物産ヲ殖シ廨舎橋梁堤防ヲ修ルコトヲ掌ル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その権利を剥奪はくだつされて後は、江戸の秤座——通四丁目の守随彦太郎独り栄えて、全国の秤をつかさどり、富貴権勢飛ぶ鳥を落す勢いがあったと言われております。
君が今読んでくれた料理学校の試験問題のごとき料理人は勿論もちろん家庭の料理をつかさどる夫人令嬢は是非ぜひとも知らねばならん事だが僕にさえまだ判然と解らんことが多い。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
代を重ねて神を代表する任務をつかさどっているうちに、次第にわが始祖をも神と仰いで、時々は主神と混同する場合さえあったのは、言わば日本の固有宗教の一つの癖であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大宝令に宮内省の被管土工司があり、土作瓦埿をつかさどり、これに二十人の泥部がついている。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
優は無妻になっているので、勝久に説いて師匠をめさせ、もっぱら家政をつかさどらせた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
正成の光栄歓喜如何ばかりであつたであらう。御還幸の後、記録所きろくじよを再興し、親しくまつりごとをみそなはせ給ひ、雑訴決断所ざつそけつだんしよを置いて訴訟を決せしめ給ひ、武者所むしやどころを設けて、武士の進退をつかさどらしめられた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
一般にこの語を祭典をつかさどる家に専用させたためか、僅かに八月の節祭の行事に、ニライの大主という霊物が、かの島から渡ってくるという年々のわざおぎが残っていたのみで
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
代々の後藤家は金座の御金改役として、天下の通貨をつかさどり、わけても祖先後藤祐乘の打つた極印に對しては、一種微妙びめうな鑑定法が、一子相傳的に傳へられて居たといふことです。