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悧巧
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りこう
ふりがな文庫
“
悧巧
(
りこう
)” の例文
その間に——
悧巧
(
りこう
)
な例のお差控え連は事面倒と見て、道庵にこの場をなすりつけ、三人顔を見合わせると、
一目散
(
いちもくさん
)
に逃げ出しました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
悪く云えば小生意気なこの鼻先の笑い方が彼女の癖ではありましたけれど、それが
却
(
かえ
)
って私の眼には大へん
悧巧
(
りこう
)
そうに見えたものです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
つねから、お前の
悧巧
(
りこう
)
ぶった
馬面
(
うまづら
)
が
癪
(
しゃく
)
にさわっていたのだが、これほど、ふざけた
奴
(
やつ
)
とは知らなかった。程度があるぞ、馬鹿野郎。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
けれどもジルノルマン嬢は、年取った
悧巧
(
りこう
)
な女だったので、老人の命に従うように見せかけながら、最上の布は皆しまっておいた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
電車、人力車、荷車、荷馬車、馬、さま/″\の人間の間を、
悧巧
(
りこう
)
な自動車は巧に縫うて、家を出て三十分、まさに青山に着いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
厳密にいえば、科学的な方法で、その本態を捕えようという試みは、不可能ではないが、
悧巧
(
りこう
)
な方法ではない。その点だけは確かである。
茶碗の曲線:――茶道精進の或る友人に――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
大店
(
おおだな
)
の主人らしい
闊達
(
かったつ
)
さはありますが、弟の
悧巧
(
りこう
)
さを自慢にする人の良さ以外に、この荘太郎には大した
取柄
(
とりえ
)
のないことがよく判ります。
銭形平次捕物控:113 北冥の魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あの
悧巧
(
りこう
)
な
聡明
(
そうめい
)
な夫人が、こんな露骨な趣味の悪い技巧を
弄
(
ろう
)
する訳はない! やっぱり、夫人の本心から出た自然の書き散しに違いない。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「世間はあなたを
金万
(
かねまん
)
の若旦那として相応
悧巧
(
りこう
)
な方と思っていて下さるんですから、今更
態〻
(
わざわざ
)
自首をなさるにも及びますまい」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
天才肌のこの様な女の死はひどく
勿体
(
もったい
)
なさを感じるけれど、仲々
悧巧
(
りこう
)
なひとであったとも考えられる。とくにこのひとが女優であるが故に。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
母はまた笑ひながら「さうとも」といひ
升
(
まし
)
たから、余り
馬鹿
(
ばか
)
らしいこといふて恥しいとおもひ、
出直
(
でなほし
)
てモソツト
悧巧
(
りこう
)
らしい考案を出しました。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
彼女の頭には無論
朧気
(
おぼろげ
)
ながらある
臆測
(
おくそく
)
があった。けれども
強
(
し
)
いられないのに、
悧巧
(
りこう
)
ぶってそれを口外するほど、彼女の教育は
蓮葉
(
はすは
)
でなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
『
召上
(
めしあが
)
れ』と
云
(
い
)
ふのだから
此程
(
これほど
)
結構
(
けつこう
)
なことはないが、
悧巧
(
りこう
)
な
小
(
ちひ
)
さな
愛
(
あい
)
ちやんは
大急
(
おほいそ
)
ぎで
其
(
そ
)
れを
飮
(
の
)
まうとはしませんでした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
「ふむ」とお島は首を
傾
(
かし
)
げて
聴惚
(
ききほ
)
れていた。今まで莫迦にしていたこの男が、何か耳新しい特殊な智識を持っている
悧巧
(
りこう
)
者のように思えて来た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「ええ十銭です。この通り美しいさかなです。これは
支那
(
しな
)
では人魚ともいうそうです。ごらんなさい、この
悧巧
(
りこう
)
そうな眼付を見てやって下さい。」
不思議な魚
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
悧巧
(
りこう
)
なようでも十八の花嫁、まるきり違いし家風のなかに突然入り込みては、さすが事ごとに惑えるも無理にはあらじ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
まだ子供とはいえ素性の不確かな、しかも驚く程
悧巧
(
りこう
)
な人間を直ぐに信用して、その境遇に
心
(
しん
)
から同情して窃盗の助手を甘んじて引き受けている。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
わたしはぴったりとその
女
(
ひと
)
の胸に触れたことがないので、情の人か、理智の人かそれすら知らないが、
悧巧
(
りこう
)
な人であることは言わずもがなであろう。
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
自分ながらこの少年に引っ掻き廻されて、たださえ
悧巧
(
りこう
)
でない頭がいよいよもって、
可笑
(
おか
)
しくなってくるのを感じた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「風は止まないし、あの高波では仕方がないでしょう。先頃、蜀軍が捨てて行ったあの空陣屋へ入って夜明けを待ったほうが
悧巧
(
りこう
)
じゃありませんか」
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
神秘的に
悧巧
(
りこう
)
そうな影を、額から下にヴェールのように持っているこの若い娘が、そうやって笑うとき、口の中に未だ発育しない小さい歯が二三枚
覗
(
のぞ
)
かれた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
悧巧
(
りこう
)
な兄は父方の祖母のほめ者だったが、母方の祖母は自分をつかまえて、おまえは兄さんよりもきっと偉くなるよ、と無責任なことをいって可愛がってくれた。
大人の眼と子供の眼
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
趣味は草花
弄
(
いじ
)
りと謡曲を
唸
(
うな
)
るくらいで、至極平凡な男であった。叔母は叔父とは十も年の違った、背のすらりと高い、上品な、
悧巧
(
りこう
)
な、その上しっかり者だった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
悧巧
(
りこう
)
を鼻にかけた娘なら、
己惚
(
うぬぼ
)
れはよしてくださいといわんばかりにつんとするに極っているのだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
もし私がもっと
悧巧
(
りこう
)
だったらそんなに用心深くはしなかったんでしょうが、私はあなたにこの事実を知られたくないと云う恐れで半分気がどうかしていたんですわ。
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
なかなか
悧巧
(
りこう
)
な女らしいから、素早く
草鞋
(
わらじ
)
は
穿
(
は
)
いてしまって、もう江戸の飯を食っちゃあいねえらしい
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
悧巧
(
りこう
)
そうでも女の浅間しさだ。やはり二枚目がお気に召すと見える。
咄
(
とつ
)
ッ、この岩波文庫女史め。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
さっき
仰有
(
おっしゃ
)
ったように、この蠅男なる人物は、
偽
(
いつわ
)
りの旅行中の看板をかけるような
悧巧
(
りこう
)
な人間なんですよ。女だから蠅男でないとは云い切らぬ方がよくはありませんか。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
鳶の者は、そう聴くと、これは、
悧巧
(
りこう
)
な江戸ッ子流——三郎兵衛の側に近づいて、鉢巻を外して
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
彼等は
悧巧
(
りこう
)
だから、敢えて自己の不明を暴露するような危険のある仕事をしないのであろう。
現代能書批評
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
近代の個人的作品の欠点は、彼らの
悧巧
(
りこう
)
さから来るのである。それをこそむしろ未熟なる智慧とも呼び得よう。いつも知識はその無知に亡び、技巧は拙策に終るではないか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そして小面倒な家族関係で
揉
(
も
)
まれていたら、今ごろはもう少し人間が
悧巧
(
りこう
)
になっていたかと思うけれど、何しろのっぽう一方で暮してきたんだから自分ながら始末にいけない。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
仲々君も、近頃は
悧巧
(
りこう
)
になったね。だが、もしも君の言う通り、そんなに早く機関車の方の血が少くなって来たのだとしたなら、この調子では、もう間もなく血の雫は終ってしまうよ。
気狂い機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
ぬき出しは出来なかったが、
断
(
ちぎ
)
れたら
食
(
くい
)
かねない
勢
(
いきおい
)
で、
曳張
(
ひっぱ
)
り曳張りしたもんだから、三日めあたりから——蛇は
悧巧
(
りこう
)
で——湯のまわりにのたっていて、人を見て遁げるのに尾の方を
前
(
さき
)
へ入れて
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あいつよりこいつの方が少しは
悧巧
(
りこう
)
であろうという、その多少の標準でさえ、ファルスは決して読者に示そうとはしないものだ。尤も、あいつは馬鹿であるなぞとファルスは決して言いはしないが。
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
僧形をなして
慈悲善根
(
じひぜんごん
)
に訴えるのは、最も
悧巧
(
りこう
)
な方法でありますから、賤しい乞食坊主というものも随分沢山出来ました。しかし本来から云えば、乞食という語は必ずしも卑しい言葉でありませぬ。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
「弘さんはなかなか
悧巧
(
りこう
)
ですから」と民助が言った。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「人間はずるく
悧巧
(
りこう
)
にならないでは生きていられないのですものね。誠だの、正直だの、熱情だのなんて、そんなものは今時の人はみんな捨てちまわなくっちゃならないんですものね。——おお、だけど寒いわね。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
あの「
悧巧
(
りこう
)
な女は私でござい」と云わんばかりに、チンと済まして腰かけている
恰好
(
かっこう
)
はどうだ、「天下の美人は私です」というような
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「あの釜吉だって怪しいよ、——馬鹿だか
悧巧
(
りこう
)
だか判ったものじゃない。土蔵が破られた事を、一番先にお前に話したのはあの男だろう」
銭形平次捕物控:041 三千両異変
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
悧巧
(
りこう
)
な娘かも知れないわ。だがあたしはもうこんな靴はごめんよ、もうどうしたっていやよ。第一
身体
(
からだ
)
に悪いし、その上みっともないわ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
君も
悧巧
(
りこう
)
になったね、君がテツさんに昔程の愛を感じられなかったなら、別れるほかはあるまい、と汐田の思うつぼを
直截
(
ちょくせつ
)
に言ってやった。
列車
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「皮肉の意味もあったかしらん。でも、結局は貴女が、クラスで一番
悧巧
(
りこう
)
だということを認めていたのじゃない?」
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
よっぽど
悧巧
(
りこう
)
だと思ってるんだ。そうしてたとい自分は解らなくっても、お前なら後からいろいろ云ってくれる事があるに違ないと思い込んでいるんだ
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
キリッと口を結んで
悧巧
(
りこう
)
そうな……負けず劣らずお美しくて……ハイ、どっちがどっちともいえませんでした。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
しかし島崎は自己の才分を生かしていつか
悧巧
(
りこう
)
に波止場ゴロなどとの縁を切って、今では山の手に
庭園
(
ガーデン
)
付きの宏壮な邸宅や
厩舎
(
きゅうしゃ
)
をもって、取り澄ましている。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
意気
(
いき
)
でも
野暮
(
やぼ
)
でもなく、なおまた、若くもなく
老
(
ふ
)
けてもいない、そしてばかでも高慢でもない代りに、そう
悧巧
(
りこう
)
でも
愚図
(
ぐず
)
でもないような彼女と同棲しうるときの
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
高は余り
悧巧
(
りこう
)
な男ではなかったが、その代り正直で、素直で、その上珍らしいほどの働きものだった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
早く妻に
訣
(
わか
)
れてからは、異性には全然関心を持たなかつた。それは彼の最も世の中で価値ありとする品とか気位とか
悧巧
(
りこう
)
とかを
誑惑
(
きょうわく
)
する
魔性
(
ましょう
)
のものに
外
(
ほか
)
ならなかつた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「この通り一から十まで話が分っているので、士族平民の件は、狐につまゝれたような心持がしましたが、そこは
悧巧
(
りこう
)
な人丈けに
大勢
(
たいせい
)
を見て取って
掌
(
てのひら
)
を
反
(
かえ
)
すように……」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
悧
漢検1級
部首:⼼
10画
巧
常用漢字
中学
部首:⼯
5画
“悧巧”で始まる語句
悧巧者