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だき
ふりがな文庫
“
唾棄
(
だき
)” の例文
私には
皆目
(
かいもく
)
判らぬ。とにかく、私の中には色んな奇妙な奴らがゴチャゴチャと雑居しているらしい。浅間しい、
唾棄
(
だき
)
すべき奴までが。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかしここに体得せられた真理が、堂塔の建立に腐心することを
唾棄
(
だき
)
し、一切の財欲を排斥した道元の真理と同一であるはずはない。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
口では天下国家を論じながら、しょせんは私利私欲のため、売名のため人を殺す、そういうのを俺は
唾棄
(
だき
)
すべき根性と考えていた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
しかし一度芸術といふ心持を失ひ、わざと皮肉に出て、実際問題をその背景に持つやうになつて来ては、私もそれを
唾棄
(
だき
)
せずにはゐない。
通俗小説
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
こうして馬鹿にしたような
唾棄
(
だき
)
の態度をとってはみたものの、彼は何か恐ろしい重荷から解放されたように、急に様子がはればれしてきた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
▼ もっと見る
しかもこれに示すに洋画の梅を以てせんか、則ち卑俗として
唾棄
(
だき
)
す。彼もし真の白色の梅を愛せば南画の黒色の梅はこれを棄てざるべからず。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その卑劣な心事は、
唾棄
(
だき
)
すべきものだと、彼がのめのめ生きながらえているのを、
誹謗
(
ひぼう
)
する声が、敵にも味方にも高かった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
屈辱と怒りのために頭が
痺
(
しび
)
れ、足が震えた、自分を醜い
唾棄
(
だき
)
すべき者のように思う反面、不当な侮辱に対する怒りが抑えようもなく燃え上った。
山椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その心持に対して私は白眼を向けることが出来るか。私には出来ない。人は或はかくの如き人々を酔生夢死の徒と呼んで
唾棄
(
だき
)
するかも知れない。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
が、重武が
唾棄
(
だき
)
すべき
詐欺漢
(
イムポースター
)
であるとは! 無論確証はない。然し、野村には、そうであることが確かに感ぜられるのだ。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
後に残した華やかな客間を、心の中で
唾棄
(
だき
)
した。夫人の
艶美
(
えんび
)
な微笑も
蜜
(
みつ
)
のような言葉も、今は
空
(
くう
)
の空なることを知った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自分の弱い心をどうすることも出来ないでややともすると他の文芸の下にひざまずこうとするのは
唾棄
(
だき
)
すべきである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それは
陋劣
(
ろうれつ
)
なる偽善の最後の段階ではないか。それは
賤
(
いや
)
しい
卑怯
(
ひきょう
)
な陰険な
唾棄
(
だき
)
すべきまた
嫌悪
(
けんお
)
すべき罪悪ではないか!
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
常人さへ
唾棄
(
だき
)
して顧みなくなつた(従つて存在の権利を失つた)のも沢山あるだらうが、貴重なため容易に手に入りかねるのも随分あるべき訳である。
文芸とヒロイツク
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは、お高も、一方では
唾棄
(
だき
)
しながら、他方では
理窟
(
りくつ
)
なしに、多分にひかれているひとりであるために相違ない。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かれはそういう裏返しの人間を見ることに、こよなき興味を持った。つまり、かれの探求欲は、
唾棄
(
だき
)
すべきスパイ精神と相通ずるものがあったのである。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
煙草
(
たばこ
)
、知識階級の暴食、
唾棄
(
だき
)
すべき教育、筋肉労働の不足、都会生活の条件などの集合である、と指摘している。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
私には、深い思索が何も無い。ひらめく直感が何も無い。十九世紀の、
巴里
(
パリ
)
の文人たちの間に、愚鈍の作家を「
天候居士
(
てんこうこじ
)
」と呼んで
唾棄
(
だき
)
する習慣が在ったという。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「市井的で商人的で平和的でイギリス的な」社会主義を
唾棄
(
だき
)
して、世界は「
拮抗
(
きっこう
)
をもって法則とし、」犠牲に、たえず繰り返される常住の犠牲に生きてるという
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
センチメンタルな気風はセンチと呼んで
唾棄
(
だき
)
軽蔑
(
けいべつ
)
されるようになったが、
世上
(
せじょう
)
一般にロマンチックな気持ちには
随分
(
ずいぶん
)
憧
(
あこが
)
れを持ち、この傾向は
追々
(
おいおい
)
強くなりそうである。
時代色:――歪んだポーズ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
強烈にわれわれを魅するということはないが、
倦厭
(
けんえん
)
して、
唾棄
(
だき
)
し去るという風景でもありません。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
侮辱と
唾棄
(
だき
)
の表現のために、
刎
(
は
)
ね掛けられた柄杓の水さえ
救
(
すくい
)
の露のしたたるか、と多津吉は今は恋人の
生命
(
いのち
)
を求むるのに急で、
焦燥
(
しょうそう
)
の極、放心の
体
(
てい
)
でいるのであったが。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、何かしら——実際私には何かわからなかったのだが——
唾棄
(
だき
)
すべき下等な目的をもってここへ来たのに相違ない。私はその
陰険
(
いんけん
)
と
執拗
(
しつよう
)
とに感嘆に近い憎悪を燃やした。
秘密
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「俺の避難所はプアだけれど安全なものだ。俺も今こそかの芸術の仮面家どもを千里の遠くに
唾棄
(
だき
)
して、安んじて生命の
尊
(
とうと
)
く、人類の運命の大きくして悲しきを想うことができる……」
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
ケダシ賀寿ノ
筵
(
えん
)
ヲ設ケテ以テソノ窮ヲ救ヘト。先生曰ク、中興以後世ト
疎濶
(
そかつ
)
ス。彼ノ輩名利ニ奔走ス。我ガ
唾棄
(
だき
)
スル所。今ムシロ餓死スルモ
哀
(
あわれ
)
ミヲ
儕輩
(
せいはい
)
ニ
乞
(
こ
)
ハズト。晩年尤モ道徳ヲ
重
(
おもん
)
ズ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
背倫
(
はいりん
)
の行為とし、
唾棄
(
だき
)
すべき事として
秋毫
(
しゅうごう
)
寛
(
ゆる
)
すなき従来の道徳を、無理であり、
苛酷
(
かこく
)
であり、自然に
背
(
そむ
)
くものと感じ、本来男女の関係は全く自由なものであるという原始的事実に論拠して
性急な思想
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
またボウズグサ、ホトケグサ、ヘビクサ、ドクグサ、シビトバナなどの各地方言があるが、みなこの草を
唾棄
(
だき
)
したような称で、
畢竟
(
ひっきょう
)
不快なこの草の
臭気
(
しゅうき
)
を
衆人
(
しゅうじん
)
が
嫌
(
きら
)
うから、このように呼ぶのである。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
それに奇賊烏啼としては、ピストルを放って相手の命を取りっ放しにしたり、重傷を負わせて溝の中に叩きこんで知らぬ顔をしたりするのは、極めて彼の趣味と信条に反する
唾棄
(
だき
)
すべき事柄であった。
奇賊悲願:烏啼天駆シリーズ・3
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
唾棄
(
だき
)
せんばかりの憎悪を感じていたものであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
これがランボオの最も
唾棄
(
だき
)
するところであった。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
一の読者——厚顔無恥、
唾棄
(
だき
)
すべき奴だ。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
と、ある諜状を手にすると、
勃然
(
ぼつぜん
)
と怒りを東へ向け変えて、日頃、
唾棄
(
だき
)
している都の現状や一門の繁栄を擁護する
権化
(
ごんげ
)
となって、すぐ討伐の軍議を命じた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
過渡期を救う、推移を円滑にする、動揺をしずめる、立憲の擬政を行なって国民を王政から民主政に自然に転ぜしむる、そういう理屈はすべて
唾棄
(
だき
)
すべきものだ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
美しい法衣に官位を誇る僧侶に至ってはむしろ
唾棄
(
だき
)
すべきものである。人の価値はこれらの一切の外衣をはぎ去った赤裸々の姿において認められなくてはならぬ。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
『決闘』(一八九一)の第三節にフォン・コーレンがライェーフスキイの
唾棄
(
だき
)
すべき人格をこきおろす場面があるが、そこにはこれと同じ文句がちゃんと出ている。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
嘔吐
(
おうと
)
を催すような肉体の苦痛と、しいて自分を忘我に誘おうともがきながら、それが裏切られて無益に終わった、その後に襲って来る
唾棄
(
だき
)
すべき
倦怠
(
けんたい
)
ばかりだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ああ、それが如何に
唾棄
(
だき
)
すべき笑いであったか。若し彼があの恥かしい
仕草
(
しぐさ
)
を冗談にまぎらしてしまう
積
(
つも
)
りだったとしても、その方が、
猶
(
なお
)
一層恥かしい事ではないか。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし彼は、それらの破廉恥な行いや、
泥
(
どろ
)
のような心の
奴
(
やつ
)
らや、彼らが自分を陥れようとした不倫な共愛などを、いまいましく
唾棄
(
だき
)
しながら、林の間を逃げていった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
のみならず卿がシェクスピアを軽蔑していたわけは、シェクスピアがヴェニスの不良ユダヤ人シャイロックになればまた
唾棄
(
だき
)
すべき
梟雄
(
きょうゆう
)
ジョン・ケイドにもなりえたという点であろう
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「いずれ、そういうことであろうと、思っておりました。お前の良人——とは呼びとうない。磯五だ。磯五とは、ゆうべおそく、拝領町屋のおせい様の家で会いましたが、じつにどうも
唾棄
(
だき
)
すべき人間である」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
表面の生活から
観
(
み
)
られれば、妙な年増のあだ女に養われて、その妖情に溺愛して抜くにも抜けないところまで、足をふみすべらそうとしている
唾棄
(
だき
)
すべき非武士!
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一度
跪拝
(
きはい
)
せしものを
凌辱
(
りょうじょく
)
しながら、汚行より汚行へ移りゆきしあの上院の前から、遁走しながら偶像を
唾棄
(
だき
)
するあの偶像崇拝の前から、顔をそむけるのが正当であった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ただ、焼きつくように私の頭を襲うものは、恐らく一生涯消え去る時のない、私の妻に対する、井上次郎に対する、その妻、春子に対する、
唾棄
(
だき
)
すべき感情のみでありました。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
愚かな
屈辱
(
くつじょく
)
……ところが今日は人見がおたけを意識しながら彼の演説の真似をしたりするのを見ると、ある
忌
(
いま
)
わしい
羨望
(
せんぼう
)
の代りに
唾棄
(
だき
)
すべき奴だと思わずにはいられなくなっていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
幾度か彼は、そういう卑劣を犯してる人々を見ると、容赦なく
唾棄
(
だき
)
してきたことだろう! そういう不名誉な行ないを彼の面前でやってる友人らとは、交わりを絶ってしまったのだった……。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と、たった一つの
阿弥陀如来
(
あみだにょらい
)
をすえて見せたら、さぞ胸がすくであろうと常に思っているほど、その勢力と扮装に、内心
唾棄
(
だき
)
したいほどのものを抱いているのだった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
残る所は、ただ
唾棄
(
だき
)
すべき盗賊としての軽蔑ばかりだ
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その他、彼の
生立
(
おいた
)
ちを見、彼の野望する所を見ても、
唾棄
(
だき
)
すべき人物と、それがしは見ておるが。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼もいつか、むかしは
侮蔑
(
ぶべつ
)
し、
唾棄
(
だき
)
し、またその愚を笑った上官の地位になっていた。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「以前の恩義をわすれたか。
唾棄
(
だき
)
すべき亡恩の徒め。どの面さげて曹操に矢を射るか」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唾
常用漢字
中学
部首:⼝
11画
棄
常用漢字
中学
部首:⽊
13画
“唾”で始まる語句
唾
唾液
唾壺
唾吐
唾気
唾罵
唾掛
唾涎
唾舌
唾液腺