吹聽ふいちやう)” の例文
新字:吹聴
さまたげんと何國いづくの者やら相分あひわからざる醫師を遣し世に有りしとも覺えざるテレメンテーナといふ藥の事を吹聽ふいちやうし結納までも取かはせし婚姻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けると、多勢おほぜい通學生つうがくせいをつかまへて、山田やまだその吹聽ふいちやうといつたらない。ぬえいけ行水ぎやうずゐ使つかつたほどに、こと大袈裟おほげさ立到たちいたる。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そは「アバテ」の天才より産まれし思想中の最も惡しきものなり。されどそを吹聽ふいちやうせんも氣の毒なり。友。吾意見は御主人とは異なり。
物見遊山と違つて用事が用事だから、旅へ出るんだつて、近所の人にも内證で、誰にも吹聽ふいちやうなんかしません、家の者には堅く口留めしてある筈で
けれどもぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんなることを、諸君しよくんごと立派りつぱ肩書かたがきもつらるるうち公言こうげんしてすこしはぢず、むしほこつて吹聽ふいちやうしたくなるのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
パンの破片かけら紙屑かみくづうしほねなど、さうしてさむさふるへながら、猶太語エヴレイごで、早言はやことうたふやうにしやべす、大方おほかた開店かいてんでも氣取きどりなにかを吹聽ふいちやうしてゐるのでらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ブロクルハーストさんがリード夫人からの受け賣りで、根據もないのに、大げさに吹聽ふいちやうしたこの嫌疑けんぎを、あなたは受けてゐる譯がないのを、私が知つてゐるやうに。
呆れながら、お前たちがあの鳥を聞いて何にするのだ、と言へば、いゝえ、お客樣ごとにその事を吹聽ふいちやうして勸めるのですよ、といふ。その代り佛法僧は近來頻りに啼くのださうだ。
梅雨紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
逍遙子沒理想を唱へて記實の業を操り、談理のやうなさを吹聽ふいちやうす。われこれを評せむとするに當りて、烏有ういう先生が有理想の説を擧げたり。この間わが談理の業を廻護したるところもありき。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
毎年まいねんのやうに新奇しんきなる潜行艇せんかうてい發明はつめいしたと誇大こだい吹聽ふいちやうするものゝ、その多數おほくは、「みづバラスト」とか、横舵わうだ縱舵じゆうだ改良かいりようとか、其他そのほか排氣啣筒はいきぽんぷや、浮沈機等ふちんきとう尠少いさゝかばかりの改良かいりようくわへたのみで
樺太から着した翌日には、氷峰に誇つて、渠のまだぐづ/\してゐるうちに、自分は三千圓ばかりの仕事をして來たぞと吹聽ふいちやうしたが、今はそれが殆ど正反對だ。外部的には殆ど何もやつてゐない。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
吹聽ふいちやうするやうに稱讚したために、多くの人が、云ひつたへ聞きつたへして、「あれは傑作だ」、「あれはおもしろい小説ださうだ」、と、附和雷同して、傑作にまつりあげたやうなところもある。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
相當に念を入れて食べ試みたから話すことはまだ澤山有るが、たいして詩的のものではなく、同好の人と談ずべく、世間に吹聽ふいちやうするまでの氣にならない。また吹聽するにはもつと十分の用意がいる。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
それをおもふとわたしため仇敵あだといふひと一人ひとりくて、あの輕忽そゝくさとこましやくれて世間せけんわたしのあらを吹聽ふいちやうしてあるいたといふ小間こまづかひのはやも、口返答くちへんたふばかりしてやくたゝずであつた御飯ごはんたきのかつ
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「今もいふ通り、この祕密は小幡夫婦と私のほかには誰も知らないことだ。小幡夫婦はまだ生きてゐる。小幡は維新後に官吏となつて今は相當の地位にのぼつてゐる。わたしが今夜話したことは誰にも吹聽ふいちやうしない方がいゝぞ。」
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
吹聽ふいちやうするに疑ひなし其上長屋中へ錢金ぜにかね用立家主へも金をかすゆゑ勘太郎を二なき者の樣におもひ我々如き後生ごしやう大事だいじと渡世する者は貧乏びんばふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくしてくにも、なんなかも、どんなはこ安心あんしんならず……じやうをさせば、此處こゝ大事だいじしまつてあると吹聽ふいちやうするも同一おなじります。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「よしツ、貴公のやることを、俺が引込む法はあるまい。この毒酒の果し合ひを嫌だと言つたら、貴公はそれを面白さうにお孃さんに吹聽ふいちやうするだらう」
この狂態を以つて吹聽ふいちやうしに行くらしい。
殺害したるに違ひなしと思ひしうち家の造作家内の身形みなりも立派になり皆々不思議ふしぎに存じたる所博奕に廿兩勝た三十兩勝たと吹聽ふいちやう致せども是は盜賊の名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「どうせあつしは甘口あまくちですよ。チエツ、面白くもねえ、目黒くんだりまで來て、馬鹿を吹聽ふいちやうされりや世話アねえ」
「女に突き飛ばされたのを吹聽ふいちやうしたつて手柄になるかい。井戸端へ行つて水でもかぶつて來な、馬鹿野郎」
「新しいのは越後屋のおこので、與三郎の野郎、此間から自慢らしく吹聽ふいちやうして歩いて居ましたよ」
「へツ、少しばかり寄り道をしたんで。斯う吹聽ふいちやうして置くと、姐さんは思ひやりがあるから」
いかにも華奢きやしやな男ですが、八五郎が吹聽ふいちやうしたやうに、それはなか/\の男前です。
もつとも、お前なら、出來ないうちから吹聽ふいちやうして歩く」