トップ
>
反撥
>
はんぱつ
ふりがな文庫
“
反撥
(
はんぱつ
)” の例文
勘次
(
かんじ
)
は
極
(
きは
)
めて
狹
(
せま
)
い
周圍
(
しうゐ
)
を
有
(
いう
)
して
居
(
ゐ
)
る。
然
(
しか
)
し
彼
(
かれ
)
の
痩
(
や
)
せた
小
(
ちひ
)
さな
體躯
(
からだ
)
は、
其
(
そ
)
の
狹
(
せま
)
い
周圍
(
しうゐ
)
と
反撥
(
はんぱつ
)
して
居
(
ゐ
)
るやうな
關係
(
くわんけい
)
が
自然
(
しぜん
)
に
成立
(
なりた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それでも、
泥湖
(
どろうみ
)
の中の
浮城
(
うきしろ
)
は、寄手が近づけば、わっと
反撥
(
はんぱつ
)
する。死にもの狂いになって戦う。物を食っている兵よりも強いのだ。
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然し、中にはそれに書いてある文句に、かえって
反撥
(
はんぱつ
)
を感じて、こんな恐ろしいことなんか「日本人」に出来るか、というものがいた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
あの利己に基く商業主義と、無我より出ずる美とが
反撥
(
はんぱつ
)
するものであるのを誰も気附くでしょう。正しい美は正しい社会の反映なのです。
民芸とは何か
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
私はもう、大チャンへのなんの悪意も
反撥
(
はんぱつ
)
ももたなかった。私は、いままでの私の嘘も、ぜんぶ黙っていてやろうと思っていた。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
▼ もっと見る
個人としての親しげな態度にはぴんと
刎
(
は
)
ねかえすものがあった。身分から来るなじめないものの
反撥
(
はんぱつ
)
であった。けれども堀は語りつづけた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
これに対して
反撥
(
はんぱつ
)
するのは非常に面白いと思う。ところが草庵集風を最も推重したのは関白太政大臣二条良基だったのである。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
その気取りに私は
反撥
(
はんぱつ
)
を感じていた。気取りに比べて内容の低さを私は蔑んでいたのである。思いあがっていた。そのくせ常に苛々していた。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
これを
撥
(
は
)
ね
除
(
の
)
け
攪
(
か
)
き壊すには極端な
反撥
(
はんぱつ
)
が要った。それ故、一般に東京のモダンより、上方のモダンの方が調子外れで薬が強いとされていた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
諸君が勝手にぶち毀そうとしてもそれはなかなかぶち毀れるものではない。諸君がぶち毀そうとするハンマーはかえって諸君に
反撥
(
はんぱつ
)
して来る。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
反撥
(
はんぱつ
)
するだけの関心すらなかったことは、この重要な作家についてのまともな言及が、彼の手紙の中にほとんど見当らないところからも知られる。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
私にはもっと適した相手があったであろうし、彼にもそうであったろうと思う。私と彼とは、性的
嗜好
(
しこう
)
が
反撥
(
はんぱつ
)
し合っている点が、あまりにも多い。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その感情が
互
(
たがい
)
に
反撥
(
はんぱつ
)
して、加速度に高まりつつあったことも事実である。そして、折につけ、つまらない外の議論が、二人を異常に興奮せしめた。
灰神楽
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そんな風なので、お灸の時、あたしは滝にうたれたように、全身の
膏汗
(
あぶらあせ
)
にヘトヘトになってしまっているが、おまっちゃんは
何処
(
どこ
)
までも
反撥
(
はんぱつ
)
した。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そしてこの正義感の情操は、愛のそれと反対であり、男性的で
反撥
(
はんぱつ
)
の力に強く、意志を強調し、どこか心を高く、上に高翔させるような思いがある。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
真佐子は真佐子で、ゆき子に対して、杉夫のさうした心づかひが不思議で、
反撥
(
はんぱつ
)
するものを持つてゐる様子だつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
船長はストキや船員を
反撥
(
はんぱつ
)
して、登別へ引きつけられた。そこでは彼は自然の冷酷さからしばらく
逃
(
のが
)
れうるのだ!
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「しかし僕は逢つた方がいゝと思ふのです」鷹雄もそろ/\文学者流の焦立ちを表はしながら
反撥
(
はんぱつ
)
して来た。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
圏外の競争は一方において
反撥
(
はんぱつ
)
を意味している。けれどもその反撥の裏面には同化の芽を含んでいる。反撥すると云う事がすでに対者を知らねばできない事になる。
文壇の趨勢
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
もしあれがもう少し高等な相手だつたら、己はこの不快を
反撥
(
はんぱつ
)
する丈の、反抗心を起してゐたのに相違ない。何にしても、あの眇が相手では、いくら己でも閉口する筈だ。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
神を念じて
穀断
(
ごくだち
)
塩断
(
しほだち
)
してゐたやうな父は、すぐさまスペクトラの実験の
腑
(
ふ
)
におちよう
筈
(
はず
)
はないのである。腑に落ちるなどと
謂
(
い
)
ふより
反撥
(
はんぱつ
)
したといつた方がいいかも知れない。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
日本の道徳に、とてもとても、こだわっているので、かえって
反撥
(
はんぱつ
)
して、へんにどぎつくなっている作品が多かったような気がする。愛情の深すぎる人に有りがちな偽悪趣味。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
不当に取扱われているという
反撥
(
はんぱつ
)
が、寝覚めのなまなましい気持を荒々しくゆすっていた。私はひとりで腹を立てていた。誰に、ということはなかった。掌暗号長にではない。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
何もいわずにいるときは、今でもどうかすると肉体的に
惹
(
ひ
)
かれる磯五であったが、そうやって愚にもつかないことをいい立てている女性的な彼には、多分の
反撥
(
はんぱつ
)
と
軽蔑
(
けいべつ
)
を感ずるのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
曠野
(
こうや
)
にて悪魔より誘惑の声を聞き給うたイエスは、神の肯定をば信仰をもって素直に受け入れ、悪魔の否定をば知恵をもって強く
反撥
(
はんぱつ
)
し、積極消極両方面から神の子たる自覚を確かめ
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
どうしたことだろう? 自分に対していささかの
反撥
(
はんぱつ
)
も、いささかの嫌悪も見られないし、彼女の手にいささかのおののきも感じられない! これは何か一種無限の自己卑下に相違ない。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
彼の望みは、どうかして周囲に反抗しようとする彼女の苦い
反撥
(
はんぱつ
)
の感情を捨てさせたいと思っていたからで。それを脱け去る時が、ほんとうに彼女の延びて行かれる時と思っていたからで。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
不思議なほど調子のなつかしい人ですよ。母であった人はあまりに
反撥
(
はんぱつ
)
性を
源氏物語:24 胡蝶
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
私は古寺を巡りながら、そういう研究書を参考にしながらも
反撥
(
はんぱつ
)
を感じたのであった。仏像を語るということは、古来わが国にはなかった現象である。仏像は語るべきものでなく、拝むものだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
でも、それはこういうことなんだけれど、あの人たちがわたしに
反撥
(
はんぱつ
)
を感じさせるのでなくて、わたしがあの人たちを恥かしいと思うんです。いつでもあの人たちのほうを見ないではいられないのよ。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
この男の醜さと
膿
(
うみ
)
の
臭
(
くさ
)
さとが悟浄に生理的な
反撥
(
はんぱつ
)
を与えた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
武石は
反撥
(
はんぱつ
)
した。彼は、ガンガン硝子戸を叩いた。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
マリユスは言うべからざる
反撥
(
はんぱつ
)
の情を覚えた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
完全に
反撥
(
はんぱつ
)
するように
留意
(
りゅうい
)
せられたり
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ひとしく彼の才識を認めているが、秀吉の
揶揄
(
やゆ
)
に腹が立たなくても、光秀の
寸言
(
すんげん
)
は、何かするどく神経をついてくる。
反撥
(
はんぱつ
)
してみたくなる。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は娘に対して底ではかなり動いて来た共感の気持ちも、老父の押しつけがましい意力に
反撥
(
はんぱつ
)
させられて、何か嫌あな思いが胸に
湧
(
わ
)
いた。しかし
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あくまで組織的であろうとすると直ちに
反撥
(
はんぱつ
)
を感じ易く、いわば今日の神経はそれ自らが解決のない無限の錯雑と共にあがきまわっているようなもので
文章の一形式
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
兩者
(
りやうしや
)
の
間
(
あひだ
)
には
何等
(
なんら
)
其
(
そ
)
の
性質
(
せいしつ
)
を
變化
(
へんくわ
)
せしむべき
作用
(
さよう
)
の
起
(
おこ
)
るでもなく、
其
(
そ
)
れは
水
(
みづ
)
が
油
(
あぶら
)
を
疎外
(
そぐわい
)
するのか、
油
(
あぶら
)
が
水
(
みづ
)
を
反撥
(
はんぱつ
)
するのか
遂
(
つひ
)
に
溶
(
と
)
け
合
(
あ
)
ふ
機會
(
きくわい
)
が
無
(
な
)
いのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼がトルストイの『クロイツェル・ソナータ』に
反撥
(
はんぱつ
)
したり、ツルゲーネフでは『父と子』など一、二篇をしか認めず、ブールジェの『弟子』を排斥したりしたのは
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
工藝美と個性美とが相
反撥
(
はんぱつ
)
することを語るであろう。(あの用途を旨とし奉仕を心とする工藝が、個性を言い張る時、よき
器
(
うつわ
)
たり得ないことについて私はすでに記した)
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ゆき子はらんらんと光つた眼で、富岡の意地の悪さに
反撥
(
はんぱつ
)
してみせた。そのくせ胸の奥では、仏印で別れたまゝの加野へ対して、逢ひたさ、なつかしさが燃え上つて来た。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
が、一方ではまたその当然すぎる事が、多少の
反撥
(
はんぱつ
)
を心に与えたので、私は子爵の
言
(
ことば
)
が終ると共に、話題を当時から引離して、一般的な浮世絵の発達へ運ぼうと思っていた。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いままでの孤独は、
謂
(
い
)
わば相対孤独とでもいうようなもので、相手を意識し過ぎて、その
反撥
(
はんぱつ
)
のあまりにポーズせざるを得なくなったような孤独だったが、きょうの思いは違うのだ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
古人が詠まなかったといって珍しがって見苦しいことを詠むなどは、「道の口伝なきが致す所」であろうといった。これにすべて為兼の言説や『玉葉集』の歌やに対する
反撥
(
はんぱつ
)
である。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
即ち「愛」をモチーフとする道徳感と、「義」をモチーフとする道徳感で、前者は女性的に涙もろく、後者は男性的に
反撥
(
はんぱつ
)
することを特色し、しかも両者は一つの倫理線で相対している。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その理論の当嵌まらぬあるものに、その理論を押付けようとすると、
反撥
(
はんぱつ
)
する。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
いくら夫に
嗾
(
けしか
)
けられてもそういう道に
外
(
はず
)
れたことができるものかと、
反撥
(
はんぱつ
)
を感じていたのであったが、「キワドケレバキワドイホドヨイ」と云われるに及んで、私の心に急回転が起った。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
博士は明智の言葉に
反撥
(
はんぱつ
)
を感じたのか、やや切口上になって云った。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
衝
(
つ
)
いては引き、また越えては
退
(
さが
)
り、彼の
反撥
(
はんぱつ
)
を
小当
(
こあた
)
りにあたってみるような
小競
(
こぜ
)
り合いを繰り返していたものである。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それらの人を分けて堂島を探す加奈江と明子は
反撥
(
はんぱつ
)
のようなものを心身に受けて余計に疲れを感じた。
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“反撥”の解説
『反撥』(はんぱつ、Repulsion)は、1965年のイギリスのサイコホラー映画。第15回ベルリン国際映画祭において銀熊賞の審査員グランプリを受賞した。
(出典:Wikipedia)
反
常用漢字
小3
部首:⼜
4画
撥
漢検1級
部首:⼿
15画
“反撥”で始まる語句
反撥心
反撥力
反撥的
反撥性
反撥砲