仲人なかうど)” の例文
若しかしたら、こんな蜜蜂飼風情があなた方にむかつて、まるで自分の仲人なかうどか教父にでも話しかけるやうな、不躾けな物の言ひ方をするのを
そして仲人なかうどには先方の父親にもわたしにも等しく恩人である、市ヶ谷の先生御夫婦が立つて下さるといふのである。わたしは名誉に感じた。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
俺が成人するまでといふ約束だつた、——證人はうんとある、現に此處に居る仲人なかうどの寳屋もその證人の一人になつて宜い筈だ。
尤も細君としては、これが当然なことで、誰よりも先に、さういふことは仲人なかうどの耳に入れんけれやならん。当事者同士で解決がつかんとあればね。
五月晴れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
引連ひきつれ訴訟そしようするぞ急度きつと間違へなと申先是にて概略あらましきまりしなりいざ皆々歸るべしと後藤は立上るに三人もともに出立しが仲人なかうど佐兵衞へ別れを告げ馬喰町ばくろちやうさして歸りける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
縁附えんづきてよりすで半年はんとしとなるに、なに一つわがかたみつがぬは不都合ふつがふなりと初手しよて云々うん/\の約束にもあらぬものを仲人なかうどなだむれどきかずたつて娘を引戻ひきもどしたる母親有之候これありそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
檀家だんかなかにも世話好せわずきのある坂本さかもと油屋あぶらや隱居ゐんきよさま仲人なかうどといふもものなれどすすめたてゝ表向おもてむきのものにしける、信如しんによ此人このひとはらよりうまれて男女なんによ二人ふたり同胞きやうだい
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「さうですとも。間違っては大へんです。よくおちついて。」と仲人なかうどのかへるもうしろで云ひました。
蛙のゴム靴 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
咲子嫂さまは相變らず一萬圓くれとか、でなかつたら裁判沙汰にするとか息卷いて、たちの惡い仲人なかうどとぐるになつてお父さまをくるしめてゐます。何んといつてもお兄さまが不可いけないのです。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ツからきつねでなければさうにもないやつぢやが、其処そこはおらがくちぢや、うまく仲人なかうどして、二つきや三つきはお嬢様ぢやうさま御不自由ごふんじよのねえやうに、翌日あすはものにして沢山うん此処こゝかつんます。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仲人なかうど寳屋祐左衞門夫婦に護られ、駕籠の垂を深々とおろして、多賀屋へ乘込んで行つたのは、秋の宵——酉刻半むつはんそこ/\といふ早い時刻でした。
うつたへなば第一貴樣きさま始め我々われ/\まで其一件に身體からだしばられて仕廻しまうによりまづ離縁状りえんじやうとり此一件を片付て後に大橋樣の一件にかゝらんと相談さうだんを極めかく明日仲人なかうど佐兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
檀家の中にも世話好きの名ある坂本の油屋が隠居さま仲人なかうどといふも異な物なれど進めたてて表向きのものにしける、信如もこの人の腹より生れて男女なんによ二人の同胞きようだい
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
椽側の暗がりから口を容れたのは、中年輩の夫婦者、それは當夜の仲人なかうどの、かはら町の荒物屋笹屋佐兵衞と後でわかりました。
改めて言ふまでは無けれど私には親もなし兄弟もなし、差配の伯父さんを仲人なかうどなり里なりに立てて来た者なれば、離縁されての行き処とてはありませぬ、どうぞ堪忍して置いて下され
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
同道して參りしなり御苦勞ながら御出下されよと云に仲人なかうど佐兵衞は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あれで飛んで色つぽいところがあるから面白いでせう、仲人なかうどを立てる迄もなくあの樣子なら小當りに當つて——」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
あらためてふまではけれどわたしにはおやもなし兄弟きようだいもなし、差配さはい伯父おぢさんを仲人なかうどなりさとなりにてゝものなれば、離縁りゑんされてのどころとてはありませぬ、うぞ堪忍かんにんしていてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
早桶を中に、仲人なかうど寳屋たからや祐左衞門夫婦、多賀屋の主人勘兵衞、親類五六人、老番頭宅松が左右に居並びました。
小町こまちいろらふ島田髷しまだまげ寫眞鏡しやしんきやう式部しきぶさいにほこる英文和譯ゑいぶんわやく、つんで机上きじようにうづたかけれども此男このおとこなんののぞりてからずか、仲人なかうどもヽさへづりきヽながしにしてれなりけりとは不審いぶかしからずや
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「默つて居ろ、手前てめえだつて滿更まんざらぢやあるめえ。——なア、お染坊——こんな野郎だが、これで八五郎は飛んだ親切者さ、——仲人なかうどは俺がするよ、嬉しからう」
馬に積んで番頭と仲人なかうど夫婦が附添ひ品川大黒屋まで持つて行つて、江島屋の番頭太兵衞や、仲人の佐野屋佐吉夫妻が立ち會ひの上、三つの千兩箱を開けて見ると
世間の噂をはゞかつて、祝言は極く/\内輪に、三々九度の盃事も形ばかり、『高砂や』をうたひ納めて、お開きになつたのは宵のうち、花嫁のお樂が、仲人なかうどみちびかれて
「番頭さん、品川の大黒屋には、怪しいのは一人もねえ、——仲人なかうどの佐野屋夫婦は、馬の先に立つて歩いてゐるし、千兩箱には手も掛けないから、これは疑ひやうはねえ」
「もう澤山、お仲人なかうどに來たわけぢやないからそんなに褒めたつて御利益はないよ、——それよりあの娘に妙な所なんかないのか。女だつて鼬小僧に化けられないことはあるまい」
「家主の五郎兵衞殿でございました。若い二人が隣り合せにさうして居るのは、決して良いことではない。氣心も知つた仲であり、嫌ひでなかつたら、私が仲人なかうどにならう——と」
私は仲人なかうどを立てて、三々九度をした覺えはないから知らないけれど、昔々大昔藝者だつた頃、一本になつて突き出された時のことを思ひ出すと、ツイ、お人形のやうに着飾つて
「待つてくれ。そいつは田原屋へお喜美を嫁入りさせた仲人なかうどの源六の伜ぢやないか」
「山下の越後屋の息子を養子にすることは、何方から望んだことで、お仲人なかうどは?」
せずに濟んだのに、仲人なかうどのない嫁入りをしたばかりに、こんな目に逢つて——と
駕籠の戸を押しあけた仲人なかうどの伊賀屋源六は、まさに完全に尻餅をつきました。
仲人なかうどの佐野屋さん御夫婦と番頭の太兵衞が附いて、馬で送つた三千兩が品川の大黒屋に着いて、奧へ持つて行つて開くと、砂利になつて居たさうで——狐にばかされたのなら木の葉になります。
相惚れの仲人なかうど實は廻し者——つてね、それから俺が乘出して口をきくのさ
「中田屋ですよ。仲人なかうどが入つて、結納まで取交したといふことですが、十九の厄だから今年はいけないとかで、延々のび/″\になつて居るんで——尤も、あのろくろ姫の噂で、長崎屋の方で嫌氣がさして居るとも言ひますがね」
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)