すけ)” の例文
……すけどの、この儀もしかと尊氏どのへお伝えあるがよろしかろう。決して使者のおへんが至らぬゆえの破談でないことの証明あかしにもなる
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もなくいんさまは三浦みうらすけ千葉ちばすけ二人ふたり武士ぶしにおいいつけになって、なんさむらい那須野なすのはらててわたしをさせました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
加賀国富樫とがしと言う所も近くなり、富樫のすけと申すは当国の大名なり、鎌倉殿どのよりおおせこうむらねども、内々用心して判官殿ほうがんどの待奉まちたてまつるとぞ聞えける。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
武芝は旧家であつて、累代の恩威を積んでゐたから、当時中〻勢力のあつたものであらう、そこへあらた権守ごんのかみになつた興世王と新にすけになつた経基とが来た。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
田口益人たぐちのますひとが和銅元年上野国司かみつけぬのくにのつかさとなって赴任ふにんの途上駿河するが浄見きよみ埼を通って来た時の歌である。国司はかみすけじょうさかんともに通じていうが、ここは国守である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
優善は不行跡ふぎょうせきのために、二年ぜんに表医者から小普請医者にへんせられ、一年ぜんに表医者すけに復し、父を喪う年の二月にわずかもとの表医者に復することが出来たのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかも、これらの貴族豪族は、多くは前国司の位置にあつたかみとか、すけとかじようなどで、その任国に土着したもので、人望も厚く、各地に強力なる武士団を形成したのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
地方庁のすけの名だけをいただいている人の家でございました。主人は田舎いなかへ行っているそうで、若い風流好きな細君がいて、女房勤めをしているその姉妹たちがよく出入りすると申します。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
女みな流星よりもはかなげにわがすけの目を過ぎにけん
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
常陸ひたちすけいね
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
で、勅の告文は、秋田あきたじょうすけが代って拝受し、一行は、ひとまず定められた宿所に入った。しかし、執権ノ亭では、その間に
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関を打破つて通りこそせざれ、間道〻〻を通つて、いやしくも何のすけといふ者が、官司の禁遏きんあつを省みず武力で争はうといふのである。良正は喜んで迎へた。貞盛も参会した。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
この年さき貶黜へんちつせられた抽斎の次男矢島優善やすよしは、わずか表医者おもていしゃすけを命ぜられて、なかばその位地を回復した。優善の友塩田良三りょうさん安積艮斎あさかごんさいの塾に入れられていたが、或日師の金百両をふところにして長崎にはしった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「父の伊予守——伊予は太守の国で、官名はすけになっているが事実上の長官である——の家のほうにこのごろさわりがありまして、家族たちが私の家へ移って来ているのです。もとから狭い家なんですから失礼がないかと心配です」
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
宗業むねなり様、よい所へ来てくださいました。……今、十八公麿が見えぬというて、すけ乳母うばも、出て行ったところでございます」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸国のすけかみじようやは、騒乱を鎮める為に戮力りくりよくせねばならぬのであるが、元来が私闘で、其の情実を考へれば、あながち将門を片手落に対治すべき理があるやうにも思へぬから
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たえず車副くるまぞいのかたちで、帝のお近くにいた佐々木道誉は、すぐ馬をかえして、同役の千葉ちばすけ貞胤さだたね、小山秀朝らにはかり、それの配置を作った。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「和子様、お風邪かぜを召されまするな。何ぞ、車のうちで、かずいておいでなさいませ」供は、すけが一人だった。牛曳きが一人。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと、そんな思いにも吹かれたか、すけは独りで首を振った。そしてあらたな勇を持ち直したように、身をおこすやいな、急にまた足を早めだした。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ひどく、お顔いろがわるいが? ……。それに、すけも見えず、裏の木戸も、開け放しになっているではありませんか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに相槌打つかのごとく、近くに居流れていた佐介さすけ五郎、淡河兵庫おごうひょうご斎藤宮内さいとうくないじょうすけ師時もろときなども、酒気にまかせて
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御密使のすけと薬師丸から委細を聞くやいな、よろこんで、いや身命をして、このお仲立ちに当った次第でございまする
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国司こくしでも、郡司ぐんじでも、おれのまねは、よも出来まい。——その下の、かみでも、すけでも、じょうでも、さかんでも、みんなおれにお世辞をいってくるではないか
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、そのとき、彼は語気つよくすけへ言い放った。猪口才ちょこざいなと、腹のそこから怒ッたとすら聞えるほどな語気だった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すけ。これならば僧侶が持ってもふしぎはない。また他人が見ても解読げどくはできぬ。あわせて、これを道誉へ渡せ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、すけはもう、その物やわらかな相手のあばき方にたいして、さかろう気にも言い逃げる心にもなれなかった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長崎円喜えんき、金沢ノ大夫たゆう宗顕そうけん佐介さかい前司ぜんじ宗直むねなお、小町の中務なかつかさ秋田あきたじょうすけ、越後守有時ありとき右馬うまかみ茂時しげとき相模さがみ高基たかもと刈田式部かったしきぶ、武蔵の左近将監さこんしょうげんなど、ひと目に余る。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
能登のとすけ清秋きよあきは、その日、おいの判官清高に会うため、隠岐の島前どうぜんから島後どうごへ、舟で渡っていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すけたんじた。そして身をひるがえすやいな、湊川の川尻のほうへ逸散いっさんに駈け去った。——同時に、彼の姿が、或る一合図を、足利勢のすべてへ告げていたことでもあったか。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
経基は、秋ごろ、都からこの武蔵へ赴任して来たばかりの、新任の「すけ」であった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、深大寺まで迎え出て来た武蔵権守むさしのごんのかみ興世王おきよおうすけ経基つねもとへ、そういった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幼年からの愛臣すけのことなので多くは口に出さないが「よくぞ。よくやった!」と見ている眼が、介へもうつってかっと彼の心を熱くさせた。無言のままで二人はつい涙ぐんでしまっていたものだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すけ……。そちならではだ。まいちど、河内へ行ってくれい」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「秋田の延明えんみょうじょうすけ延明はいるか」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なに。すけが訪うて来たと」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すけ。どうした?」