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丑満
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うしみつ
ふりがな文庫
“
丑満
(
うしみつ
)” の例文
旧字:
丑滿
勝気な寅二郎は、そういって笑ったが、雨が間もなく降り出し、保土ヶ谷の宿へ
丑満
(
うしみつ
)
の頃帰ったときは、二人の下帯まで
濡
(
ぬ
)
れていた。
船医の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「
丑満
(
うしみつ
)
過ぐる夜の夢。見よや因果のめぐり来る。火車に
業
(
ごう
)
を積む
数
(
かず
)
。
苦
(
く
)
るしめて眼の前の。地獄もまことなり。げに恐ろしの姿や」
涙香・ポー・それから
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
星の空は吹き
研
(
と
)
がれて、明るいばかりだったが、土塀にかこまれたこの家の一劃は、屋の棟も下がるという
丑満
(
うしみつ
)
の闇に沈んでいた。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もうおッつけ
丑満
(
うしみつ
)
だろうに、門内に、お客かごがあって、
供待
(
ともまち
)
に、灯がついているので見ると、例の手で夜明しの客というわけか。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
丑満
(
うしみつ
)
も既に過ぎ去った。おりから
戸外
(
そと
)
の夜嵐が、ハタとばかりに途絶えたが、池の
畔
(
ほとり
)
で物を洗う、
幽
(
かす
)
かの水音が聞こえて来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
夜泣きの刀のいわれは、脇差坤竜丸と所をべつにすれば……かならず
丑満
(
うしみつ
)
のころあいに迷雲、地中の竜を慕ってすすり
哭
(
な
)
くとの
伝奇
(
でんき
)
である。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
学円 ある! 何か、明六つ、暮六つ……
丑満
(
うしみつ
)
、と一昼夜に三度鳴らす。その他は一切音をさせない
定
(
さだめ
)
じゃと聞いたが。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
下旬といってもずっと押しつまった二十八日のことでしたが、それも夜半をすぎた
丑満
(
うしみつ
)
どきに近い刻限のことです。
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それは昔から良く云う草木も眠る
丑満
(
うしみつ
)
時で、午前の二時頃の事であったが、衛兵勤務に服していると、兵営から三四町離れた根本の
辺
(
あたり
)
に、突然ドッ、ドッ
戦死者の凱旋
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
時間の正確な点も、玄関の柱時計が二時を打ち昔なら
丑満
(
うしみつ
)
頃ってんですね、と云った、迎いの男の言葉に、丑満つ頃なんて、やに時代がかった事をいうじゃないか。
雪
(新字新仮名)
/
楠田匡介
(著)
丁度、その夜の
丑満
(
うしみつ
)
頃である。やみをつんざいてけたたましいときの声が聞えた。ハテナと思ふ瞬間に、階上階下の
廊側
(
らうがは
)
に右往左往するおびただしい足音も聞えて来た。
大利根八十里を溯る
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
時刻は午前二時三十分正に
丑満
(
うしみつ
)
すぎとはなった。あたりはいよいよシーンと
更
(
ふ
)
け渡って——イヤ只今、天井を
鼠
(
ねずみ
)
がゴトゴト走りだした。シーンと更け渡っての文句は取消しである。
軍用鼠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
いってみるとその女房は問題の男と寝間の中で、お互いに
擽
(
くす
)
ぐったりつねったりして、きゃあきゃあ遊戯に
耽
(
ふけ
)
っていた。定刻の
丑満
(
うしみつ
)
になり、ようやく男のほうは疲労のうえ鎮静した。
ゆうれい貸屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「えてものが店を張るのは、
丑満
(
うしみつ
)
と決ってるじゃないか。まだ少し早えよ」
銭形平次捕物控:026 綾吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
丑満
(
うしみつ
)
ごろになると、三百
余
(
よ
)
騎
(
き
)
は
城門
(
じょうもん
)
を開き、
明軍
(
みんぐん
)
の中に
突撃
(
とつげき
)
した。
三両清兵衛と名馬朝月
(新字新仮名)
/
安藤盛
(著)
「秋の夜は
長
(
な
)
げえ。化け物の来るのは
丑満
(
うしみつ
)
と決まっていらあ」
半七捕物帳:46 十五夜御用心
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
祭礼
(
まつり
)
のさざめきもおさまって、もう、かれこれ
丑満
(
うしみつ
)
。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
夜は
丑満
(
うしみつ
)
頃
(
ごろ
)
で、薄寒くもあり、腹も
減
(
へ
)
った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
丑満
(
うしみつ
)
の
夜
(
よ
)
の
館
(
やかた
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そして即刻にと、直義へ北国落ちの勇をすすめた。深夜の
丑満
(
うしみつ
)
(午前二時)、直義はついに大原路から京都の外へ落ちて行った。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丑満
(
うしみつ
)
の刻を
喋
(
しめ
)
し合わせた二人は、まず清二郎が庭先へ忍んで撰十を置場へ
誘
(
おび
)
き入れ、そこで改めて仙太郎を徳松に仕立てて
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
丁度
丑満
(
うしみつ
)
時という時刻なので、信長勢は大いに驚いて防いだが、松平勢は既に一ノ木戸を押し破って入り、火を放ったと思うとさっと引上げた。
桶狭間合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
晃 むむ、
夜
(
よ
)
ごとに見れば星でも
了
(
わか
)
る……ちょうど
丑満
(
うしみつ
)
……そうだろう。(と
昂然
(
こうぜん
)
として鐘を凝視し)山沢、僕はこの鐘を
搗
(
つ
)
くまいと思う。どうだ。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ボーンとその時
丑満
(
うしみつ
)
の鐘が手近の寺から聞こえてきたが尾を曳いてその音の消えた後も初夏の風がザワザワと吹く。
善悪両面鼠小僧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
丑満
(
うしみつ
)
に見まわったときはなんの異状もなかったのに、明けがた回ってみると、十九人がひとり欠けているのじゃ。
右門捕物帖:35 左刺しの匕首
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
丑満
(
うしみつ
)
すぎには
屹度
(
きっと
)
出て来るというこの寺をさ——ここの
須弥壇
(
しゅみだん
)
の下の隠し穴は、女たちを絞め殺して、生き埋にほうり込んだあととかで、そりゃあ、陰気で
鬱陶
(
うっとう
)
しい所だが
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
丑満
(
うしみつ
)
の
夜
(
よ
)
の
館
(
やかた
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
丑満
(
うしみつ
)
すぎると何処もかしこも白々と霜がむすび、
万象
(
ばんしょう
)
寂
(
せき
)
として声もない。ただ星のまたたきだけが、一個の黒い怪しい物の行動を見せていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
晃、晃と
呆
(
あき
)
れた
奴
(
やつ
)
めが。これ、
潮
(
うしお
)
の
満干
(
みちひ
)
、月の数……今日の今夜の
丑満
(
うしみつ
)
は過されぬ。立ちましょう、立ちましょう。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
丑満
(
うしみつ
)
近え
子
(
ね
)
の刻に、相好のわからなくなるほどの煮え湯を何だってまた沸かしておきゃがったもんだろう。」
釘抜藤吉捕物覚書:01 のの字の刀痕
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
丑満
(
うしみつ
)
時であったから、将軍お膝元の大江戸もひっそりとして物寂しく、二十日余りの晩い月が雪催いの空に懸かっているばかり往来には犬さえ歩いていない。
紅白縮緬組
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
たどりついたのは
丑満
(
うしみつ
)
少し手前でした。しかし、いかな真夜中とはいえ、ひとたびご宝物ご通行、宿止めの声がかかったからには、色めきたたぬという道理はない。
右門捕物帖:31 毒を抱く女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
丑満
(
うしみつ
)
の
誓請文
(
きしやうもん
)
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「このところ、夜々、月の出は
亥
(
い
)
の
刻
(
こく
)
(午後十時)過ぎ、従って、潮の
干
(
ひ
)
ざかりは、四
更
(
こう
)
の
丑満
(
うしみつ
)
さがりとなりましょうか」
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
離ればなれの乾雲丸と坤竜丸が、家の
檐
(
のき
)
も三寸下がるという
丑満
(
うしみつ
)
のころになると、
啾々
(
しゅうしゅう
)
としてむせび泣く。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ただその
上下
(
うえした
)
を
装束
(
そうぞ
)
くにも、支度の夜は
丑満
(
うしみつ
)
頃より、
女紅場
(
じょこうば
)
に顔を揃えて一人々々
沐浴
(
ゆあみ
)
をするが、雪の
膚
(
はだえ
)
も、
白脛
(
しろはぎ
)
も、その湯は一人ずつ
紅
(
べに
)
を流し、
白粉
(
おしろい
)
を
汲替
(
くみか
)
える。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
更
(
ふ
)
けまさっても
賑
(
にぎ
)
やかであると、いいつたえられている春の夜ではあったが、しかし
丑満
(
うしみつ
)
を過ごした今は、大路にも小路にも人影がまばらで、足の音さえもまれまれである。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
断ずるごとくに、こよいの
丑満
(
うしみつ
)
どきに死ぬだろうということを言いきったというのです。
右門捕物帖:06 なぞの八卦見
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
まるで
戦
(
いくさ
)
のような人数に警固され、この
白金
(
しろがね
)
の中屋敷へ、内蔵助以下十七名が送りこまれたのは、すでに
丑満
(
うしみつ
)
だった。
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
離ればなれの乾雲丸と坤竜丸とが、家の
檐
(
のき
)
も三寸さがるという
丑満
(
うしみつ
)
のころになると、
啾啾
(
しゅうしゅう
)
とむせび泣く。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
膝摩
(
ひざさす
)
り」というのは、
丑満
(
うしみつ
)
頃、人が四人で、床の間なしの八畳座敷の
四隅
(
よすみ
)
から、
各
(
おのおの
)
一人ずつ同時に
中央
(
まんなか
)
へ出て来て、
中央
(
まんなか
)
で四人出会ったところで、
皆
(
みんな
)
がひったり座る
一寸怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丑満
(
うしみつ
)
には風さえ止むものであった。鼠も鼬も眠ったらしい。塵の音さえ聞こえそうであった。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
半刻がすぎ、一刻がたつ、いつのまにか屋の
棟
(
むね
)
の下がる
丑満
(
うしみつ
)
もすぎて、やがてしらじらと夜が明けかかったというのに、いかにも不思議でした。足音はおろか、伝六の姿も影もないのです。
右門捕物帖:34 首つり五人男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
なおまだ、火事場の
余燼
(
よじん
)
が空には赤く
映
(
は
)
え、町は夜も
丑満
(
うしみつ
)
を何処ともなく騒々しい。しかし、ふたりを乗せた駒音は、愉しむごとく、トボトボ行く。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
竜神のほうは大丈夫わたしが仲に立って
纏
(
まと
)
めてみせるからそれではこうこう、こうして待っていて下さい。時刻は
丑満
(
うしみつ
)
、わたしが竜神を御案内します——話は早い。
早耳三次捕物聞書:04 海へ帰る女
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
紅梅の咲く頃なれば、かくまでの雪の
状
(
さま
)
も、
旭
(
あさひ
)
とともに霜より
果敢
(
はか
)
なく消えるのであろうけれど、
丑満
(
うしみつ
)
頃おいは
都
(
みやこ
)
のしかも
如月
(
きさらぎ
)
の末にあるべき現象とも覚えぬまでなり。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
外はもうやがて
丑満
(
うしみつ
)
にも近い刻限だというのに、一歩大門を
廓
(
なか
)
へはいると、さすがは東国第一の
妖化
(
ようか
)
咲き競う色町だけがものはあって、
艶語
(
えんご
)
、弦歌、ゆらめくあかり、脂粉の香に織り交ざりながら
右門捕物帖:15 京人形大尽
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「
丑満
(
うしみつ
)
を知らせる拍子木が先ほど廊下を廻わりましてござる」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その晩、
丑満
(
うしみつ
)
ごろに木賃宿を出て、五
更
(
こう
)
の前から以前住んでいた袋路次の
角
(
かど
)
にひそんで期すものを待ちかまえていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
振向いて、にこりと笑った。村の方では、遠吠の犬がびょうびょうと鳴くし、
丑満
(
うしみつ
)
の鐘。……
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丑
漢検準1級
部首:⼀
4画
満
常用漢字
小4
部首:⽔
12画
“丑満”で始まる語句
丑満時
丑満刻
丑満下
丑満近