不時ふじ)” の例文
いま珈琲カツヒーはこんで小間使こまづかひかほにもそのいそがしさがへるので、しや、今日けふ不時ふじ混雜中こんざつちうではあるまいかと氣付きづいたから、わたくしきふかほ
階段の下は錠口になっていて、不時ふじの攘夷派の襲撃にそなえるために、車びきの重い、土扉つちどが閉まり、出入のたびに、いちいち鍵で開閉することになっている。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
星月夜ほしづきよの光に映る物凄ものすごい影から判断すると古松こしょうらしいその木と、突然一方に聞こえ出した奔湍ほんたんの音とが、久しく都会の中を出なかった津田の心に不時ふじの一転化を与えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかも自分の不時ふじな招きをうけて、この雪中を物ともせず、早速にやって来た以上、それくらいな洞察力どうさつりょくもない者と観るのは、こちらの見方が甘すぎていたかもしれない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるとしなつはじめやかたもり蝉時雨せみしぐれ早瀬はやせはしみずのように、かまびずしくきこえている、あつ真昼過まひるすぎのことであったともうします——やかた内部うちっていたような不時ふじ来客らいきゃく
大臣だいじんっていた列車れっしゃが、途中とちゅう不時ふじ停車ていしゃをしたというので、また問題もんだいになりました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
見たる其時より懇意こんいの者へ頼んで置たが何分にも急場の事故かし呉人くれて一寸ちよつとなく殊に此程は何や斯や不時ふじの物入續きがちにて夫にかねての心願にて人のいやがる貧家ひんかの病人療治れうぢ勿論もちろん施藥せやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先ず息子の品性を養わないで金儲をしろしろと教えるからそんな事になる。国民もその通り富を消化吸収する力がなくって不時ふじに富を得たらばその国民はかえって益々堕落するばかりだ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そのほかに、ろうそくを不時ふじ用意よういとして、いつも持ってはいたが。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
不時ふじ大騷動だいさうどうに、おどろ目醒めさめたる春枝夫人はるえふじんは、かゝる焦眉せうびきふにもその省愼たしなみわすれず、寢衣しんい常服じやうふく着更きかへてつために、いまやうや此處こゝまでたのである。るよりわたくし
「——何とぞ不時ふじ賜謁しえつの儀をおはからい願いたく」とちょうへ手続きをとらせたのだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あづか渡世とせい寸暇すんかなければ中々田舍ゐなかへ尋ね行事などは思ひもよらず心にかゝる計りにて今迄疎遠そゑん打過うちすごしたり夫に付ても此間の手紙に細々こま/″\と言越たるには追々おひ/\不時ふじの災難や水難旱損かんそんの打續きて思はぬ入費ものいりの有しゆゑ親のゆづりの身上も都合つがふしくなりし由じつに當時の世の中は田舍も江戸もつまがちしか呉々くれ/″\返事へんじ言遣いひつかはしたる通り親は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
不時ふじ天變てんぺんが無ければ、いまより二年にねん月目げつめすなはこれから三度目さんどめ記元節きげんせつむかふるころには、試運轉式しうんてんしき擧行きよかうし、引續ひきつゞいて本島ほんとう出發しゆつぱつして、なつかしき芙蓉ふえうみねのぞこと出來できませう。