上海シャンハイ)” の例文
『旗風』の最期を聞いて、上海シャンハイにいるわが第三艦隊司令長官木村中将は決心した。旗艦『出雲いずも』のマストには戦闘旗がかかげられた。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
ここにおいて楊博士の復讐ふくしゅうは、ようやく成ったようであるが、その後、この広い上海シャンハイのなかに博士の姿を見た者は只の一人もなかった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昨今の上海シャンハイ投機の気まぐれで、銀塊ぎんかい相場を有史以来の崩壊に導いた、その余波のためにこの輸出綿花事務所は不況のどん底にいた。
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
一つ上海シャンハイへ渡って、チャンチャンと毛唐の料理を習って一旗上げてやろうてんで、日清戦争のチョット前ぐらいで御座いましたか。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
三伝の変死当時は上海シャンハイにいて、しかも多情、その三伝の死も、暗に糸を引いてお勢が三人を踊らせたのではないかと云われている。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
一例として、交易が上海シャンハイ香港ホンコン及びサンフランシスコ、ロンドン、ボンベイ等に対し、いろいろな貨幣並に度量衡を以てなされる。
部屋へやの隅に据えた姿見すがたみには、西洋風に壁を塗った、しかも日本風の畳がある、——上海シャンハイ特有の旅館の二階が、一部分はっきりうつっている。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いつも、印度インドを通って支那しなへやってくる爺さんの船は、上海シャンハイで用をすますと、そこから故郷のフランスの方へ帰っていってしまうのです。
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
事を行うまえに、たのむ、僕にちょっと耳打ちしてれ。一緒に旅に出よう。上海シャンハイでも、南洋でも、君の好きなところへ行こう。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
上海シャンハイで落ち着き次第、呼び寄せることになっているらしいんですけれど、あの子たちは食べものもろくに食べさせられなかったんですの。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
カタリナに云わせると、自分は露西亜に生れたのだが、国を追われて、上海シャンハイに来て、英吉利人の恩恵を受けて成人したのである。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
水戸の武士早川弥五郎が、清国上海シャンハイへ漂流し、十数年間上海に居り、故郷の友人吉田惣蔵へ、数回長い消息をした。その消息を
鴉片を喫む美少年 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私がはじめて蝦蟇を食ったのは上海シャンハイであった。ある料理屋に入ってみると、蛙の料理が特別に大きく書いて貼り出してあった。
蝦蟇を食べた話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
直接上海シャンハイから黴菌が運ばれて来るので、ある防疫官は、夫人が産気づいて居る時に出張命令を受けて、生れる子を見届けないで走り出した。
死の接吻 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ところが一八六三年にとある果敢な荷主が出て、上海シャンハイからロンドンまで一千二百五十トンの新茶を蒸汽船ロバート・ロウエ号に運送させた。
黒船前後 (新字新仮名) / 服部之総(著)
同じサーカスで奇術に出ていた優男やさおとこなんですが、今上海シャンハイで興業しているんです。伯爵は無論そんな男のあることは知らないし。
鉄の処女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
この書はたしか明治三十一年の初めに、當時上海シャンハイに居られた文學士藤田豐八君から、先生及び吾輩宛に送られたものである。
那珂先生を憶う (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
上海シャンハイへ売飛ばしたとだけでは分らないじゃないか。一旦立派に白状しようと決心した以上、手数をかけないで云って終え」
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
橋を渡りながら、重吉は上海シャンハイ事変の号外よりも、お千代が初めて銀座通で頭の禿げた杉村のそでを引いた時のことを想像した。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
支那の上海シャンハイなどへ旅行する人達が、たくさん集っていて、ガヤガヤと、海の向こうの珍しい町の話などをしているのです。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この人もそれがため二度と留学することが出来ず、上海シャンハイに帰って来て、後には租界監獄の中で死んだが、君はもうとうに忘れてしまったろうな。
頭髪の故事 (新字新仮名) / 魯迅(著)
この曖昧あいまいな男の事を僕はなおくわしく聞いて見て、彼が今上海シャンハイにいる事を確かめた。上海にいるけれどもいつ帰るか分らないという事も確かめた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上海シャンハイ方面に、従軍記者諸君や写真班諸君の活動は実にめざましいもので、毎日の新聞を見るたびに、他人事ひとごととは思われないように胸を打たれます。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かの女はむす子の慰めになるかも知れないと、上海シャンハイの船つきで買い入れたカナリヤの鳥籠をもむす子に残していった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
上海シャンハイ寄留の外国人らがその平和を欲するのあまりに、ともに醵金きょきんしてもって二国の争闘を調停せんとしたるがごとき
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
節子のことを義雄兄に頼んで行くつもりの手紙が神戸で書けず上海シャンハイでも書けず香港ホンコンまで行く途中にようやく書いて置いて行ったような心の経験の記憶が
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は香港ホンコン上海シャンハイとの間の船上で私の家の全焼した電報を受取り、苦悩のうちに上海の歌会に出席して人々の楽しそうな歌を閲して批評などを加えつつ
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
今夜はガルシア・モレノに「上海シャンハイ」——深夜埠頭ふとうの散歩者を暴力で船へ担ぎ上げて出帆と同時に下級労役に酷使すること——があるにきまってるから
古座谷はかつて最高学府に学び、上海シャンハイにも遊び、筆硯ひっけんを以って生活をしたこともある人物で、当時は土佐堀の某所でささやかな印刷業を営んでいた……。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
このとき、門司もじ市全体を、暗黒の戦慄におとし入れた「上海シャンハイコレラ」の猖獗しょうけつは、浜尾組のみならず、すでに、市内の各所に、その兆候をあらわしていた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
同志がわざわざ上海シャンハイまで潜行して、苦心して入手したレンコン(ピストル)は、いざとなると役に立たなかった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
上海シャンハイではこの話が今年の立春の二、三日前から、大問題になり、今年の立春の機を逸せずこの実験をしてみようと、われもわれもと卵を買い集めたために
立春の卵 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
現在の堺筋さかいすじほとん上海シャンハイの如くであるがその島之内に私の生れる以前からぶら下っている足袋たびの看板が一つ、そしてその家は昔のままの姿で一軒残っている。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
西洋文化をせて——偽装した平和の侵略艦隊が、東洋をぎ歩いて、もう香港ホンコン上海シャンハイまで襲せて来たのだ。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上海シャンハイにゐました。その前は永く米国にゐたんです。手品はそこで修業しました。私のは手品といつても他人ひとのと異つてますんで、入神術と云つてるんです。」
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
上海シャンハイされた! 通行人を暴力で船へさらって来て出帆後、陸上との交通が完全に絶たれるのを待って、出帆後過激な労役に酷使することを「上海シャンハイする」と言って
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ようやく、上海シャンハイまで辿たどりつくと、すぐ大東亜戦争がはじまって、上海から先へ行くことが出来なくなった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
殊に函入はこいりの『源氏物語』や上海シャンハイ版の函入の石印せきいん本などが馬鹿に光って無知な書生ッぽの私を驚かした。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
例えば「上海シャンハイ」の「海」はhai、「漢口ハンカオ」の漢はhanで、大体日本の現代のハの音と同じです。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
初めは北京にいたが、近頃ではずっと上海シャンハイにいた。その他広東カントンにもいたし、武昌ブショウにも永くいたね。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
クラブントの「光緒皇帝」はもちろんA氏の「支那の暗黒面」B氏の「上海シャンハイにて」C氏の「青竜刀と弁髪について」その他D氏、E氏、F氏、G氏と……みな再読したが
「僕は上海シャンハイだって何べんも知ってるよ。」みんなが丘へのぼったとき又三郎がいきなりマントをぎらっとさせてそこらの草へだいだいや青の光を落しながら出て来てそれから指を
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
が、何の、これでは済まさない、一つ風並かざなみが直りさえすれば、大連だいれんか、上海シャンハイか、香港ホンコン新嘉坡シンガポールあたりへ大船で一艘いっぱい、積出すつもりだ、と五十を越したろう、間淵が言います。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
支那の上海シャンハイあたりにいたこともかなり長かったとやらで、支那語もちょいちょい入ります。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まき氏は近頃上海シャンハイから復員して帰って来たのですが、帰ってみると、家も妻子も無くなっていました。で、廿日市町の妹のところへ身を寄せ、時々、広島へ出掛けて行くのでした。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
上海シャンハイ通いの急行船「郵船」の上海丸で神戸を立ったのが、七月二十二日の午前十一時。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
伊東が二度目にヨーロッパの旅に行った帰途、上海シャンハイの河岸の公園を伊東と宝沢は肩を並べて歩いていた。伊東の紺サージの洋服にはミッドランドの若葉のにおいが寂しく染み込んでいた。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
上海シャンハイに上陸したので、同地在留の外国人に対し国際聯盟に関する講話を試み、世界の大国中でいまだ加盟せぬのは米、独、露である、露国は公使のようなものを送って聯盟を研究させており
その不景気の中で東北や北海道の飢饉ききんを知り、ひとり一せんずつの寄付金きふきんを学校へもっていった。そうした中で満州事変まんしゅうじへん上海シャンハイ事変はつづいておこり、幾人いくにんかの兵隊が岬からもおくり出された。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
上海シャンハイ、南京、漢口から三十一の大学と専門学校の生徒が、出来るだけ多くの本と機械や器具をかつぎ出してここまで来たんだ……伍長! お前は怒るかも知れないが雲南は支那のシベリヤだぞ。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)