一散いつさん)” の例文
稻妻いなづま! おまへ何處どこつたの、さあ、これから競走かけつくらだよ。』と、わたくしひざからをどつて、いぬ首輪くびわをかけて、一散いつさんいそなみかたはしした。
博士はかせしきりゆびさしをしてたが、くちけないらしかつた、で、一散いつさんけて、だまつて小屋こやまへとほらうとする。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
勘次かんじおもつた草刈籠くさかりかご背負せおつて今度こんどらのみち一散いつさん自分じぶんうちかへつた。つぎあさ勘次かんじ軒端のきばたよこたけわたして、ゆつさりとするしばつてちがひにけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いだくるま一散いつさん、さりながらつもゆき車輪しやりんにねばりてか車上しやじやう動搖どうえうするわりあはせてみちのはかはかず萬世橋よろづよばしころには鐵道馬車てつだうばしや喇叭らつぱこゑはやくえて京屋きやうや時計とけい十時じふじはうずるひゞきそらたか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
顔を見られるのがいやさに、一散いつさんとほりのはうへととほざかつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ありや、と威勢ゐせいよく頭突づつきかゞんで、鼻息はないきをふツとき、一散いつさんくろつてがら/\と月夜つきよ駈出かけだす。……
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
吾等われらそのいへちかづいたとき日出雄少年ひでをせうねんかたにした武村兵曹たけむらへいそう一散いつさんはしつてつて、快活くわいくわつこえさけんだ。
左舷さげん當番たうばん水夫すゐふおにじやか、つてらぬかほそのこゝろわからぬが、いま瞬間しゆんかん躊躇ちうちよすべき塲合ばあいでないとかんがへたので、わたくし一散いつさんはしつて、船橋せんけう下部したなる船長室せんちやうしつドーアたゝいた。
それから一溜ひとたまりもなく裏崩うらくづれして、真昼間まつぴるまやま野原のばらを、一散いつさんに、や、くもかすみ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)