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一散
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いつさん
『
稻妻! お
前何處へ
行つたの、さあ、
之から
競走だよ。』と、
私の
膝から
跳つて、
犬の
首輪に
手をかけて、
一散に
磯打つ
浪の
方へ
走り
出した。
博士は
頻に
指しをして
居たが、
口が
利けないらしかつた、で、
一散に
駆けて、
来て
黙つて
小屋の
前を
通らうとする。
勘次は
重く
成つた
草刈籠を
背負つて
今度は
野らの
道を
一散に
自分の
家へ
歸つた。
次の
朝勘次は
軒端へ
横に
竹を
渡して、ゆつさりとする
其の
穗を
縛つて
打つ
違ひに
掛けた。
馳せ
出す
車一散、さりながら
降り
積る
雪車輪にねばりてか
車上の
動搖する
割に
合せて
道のはかは
行かず
萬世橋に
來し
頃には
鐵道馬車の
喇叭の
聲はやく
絶えて
京屋が
時計の
十時を
報ずる
響空に
高し
顔を見られるのが
厭さに、
一散に
通りの
方へと
遠かつた。
ありや、と
威勢よく
頭突に
屈んで、
鼻息をふツと
吹き、
一散に
黒く
成つてがら/\と
月夜を
駈出す。……
左舷の
當番水夫は
鬼か
蛇か、
知つて
知らぬ
顏の
其心は
分らぬが、
今は
瞬間も
躊躇すべき
塲合でないと
考へたので、
私は
一散に
走つて、
船橋の
下部なる
船長室の
扉を
叩いた。
それから
一溜りもなく
裏崩れして、
真昼間の
山の
野原を、
一散に、や、
雲を
霞。