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高山
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かうざん
越後の西北は
大洋に
対して
高山なし。東南は
連山巍々として越中上信奥羽の五か国に
跨り、
重岳高嶺肩を
並べて
数十里をなすゆゑ大小の
獣甚多し。
「
黒く
凄い
中に、
紫色が
見えましやう。
高山は
何処もこの
景色です。
光線の
工合です。
夕立雲ではありません。」
われ
高山に昇りて、その過ぐるを眺む……
越後の地勢は、西北は大海に
対して陽気也。東南は
高山連りて陰気也。ゆゑに西北の
郡村は雪
浅く、東南の
諸邑は雪
深し。是
阴阳の
前後したるに
似たり。
遂に
件の
甕に
騎りて、もこ/\と
天上す。
令史敢て
動かず、
昇ること
漂々として
愈々高く、やがて、
高山の
頂一の
蔚然たる
林の
間に
至る。こゝに
翠帳あり。
此高山は、
風景極めて
美はしく、
吾等の
達したる
頂は、
三方巖石が
削立して、
自然に
殿堂の
形をなし、かゝる
紀念塔を
建つるには
恰好の
地形だから、
遂に
此處に
鐵車を
停めた。
天気
朦朧たる事
数日にして
遠近の
高山に
白を
点じて雪を
観せしむ。これを
里言に
嶽廻といふ。又
海ある所は
海鳴り、山ふかき処は山なる、遠雷の如し。これを里言に
胴鳴りといふ。
傷き
斃れたのも
少くない
樣子で、
此日も
既に十二三
里許進みて、
海岸なる
櫻木大佐の
住家からは、
確かに三十
里以上距つたと
思はるゝ
一高山の
絶頂に
達した
時には、
其數も
餘程減じて