雷鳴かみなり)” の例文
「ヘエ、じゃないよ。かじり付いたら、雷鳴かみなりが鳴っても離さないのが岡っ引のたしなみだ。見ればガン首も手足も無事じゃないか」
不思議なのは、雷狩をした年の夏は、屹度きつと雷鳴かみなりが少いといふ事だ。この雷狩は山や野原でするばかりでなく、またうみぱたでもやる。
と、籠をかかえて女童は近くのうまやひさしへ逃げこんだ。白い雨が、一瞬けて行った。どこかに雷鳴かみなりの落ちたような大きな音が近くでした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のどを痛めるぞ、ばかな古狸ふるだぬきめが。気の毒だが、大声を出したってだめだ。まったく、雷鳴かみなりとは聞こえないや、せきくらいにしか思われない。」
清「此家ここ主人あるじで、挨拶さっせえ、是は江戸の者だが雨が降って雷鳴かみなりに驚き泊めてくれと云うが、おれうちでねえからと話して居る処だ、是が主人だ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
海の方からして、真黒な雲が出て来たと思うと、早手はやての風が吹起って、川浪も立てば、穂波も立ち、見る見る昼も夜の如く暗くなって、大夕立、大雷鳴かみなり
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
その大夕立のあとがまたさっぱり涼しくならず、いたずらに烈しい雷鳴かみなりがしつこくしつこく鳴りつづけた。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
いよいよ綱が残り少なくなりますと、不思議や今まで雲一ツ見えなかった空が、にわかに墨を流したようにくもって来まして、たちま轟々ごうごう雷鳴かみなりが鳴り初め、風が吹き、雨が降りしきりまして
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
地気は冷際れいさいかぎりとして熱際ねつさいいたらず、冷温れいをんの二だんは地をる事甚だとほからず。富士山は温際をんさいこえ冷際れいさいにちかきゆゑ、絶頂ぜつてう温気あたゝかなるきつうぜざるゆゑ艸木くさきしやうぜず。夏もさむ雷鳴かみなり暴雨ゆふだち温際をんさいの下に見る。
これ、フェチニヤ、羽根蒲団と枕と敷布を持っておいで、ほんとに、何という悪い天気になったものでございましょうね、ひどい雷鳴かみなりさまで——わたしは一晩じゅう聖像みぞうにお燈明とうみょうをあげていたんですよ。
翌日になって村の人は不思議な雷鳴かみなりについて語りあった。
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
雷鳴かみなりのような一言が己をはね飛ばした。
雷鳴かみなりのように音高く聞いていたが
「へエ、ぢや無いよ。かじり付いたら、雷鳴かみなりが鳴つても離さないのが岡つ引のたしなみだ。見ればガン首も手足も無事ぢやないか」
それほど、何事かに恐れたのなら、逃げればよいのに、そうはしないで、すくんだまま雷鳴かみなりにでもしびれたように、そそけ立って震えていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ヘイ、わたくしは江戸の者でございますが、御当地へ参りまして、此の大雨に雷鳴かみなりで、誠に道も分りませんで難儀を
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
貴方あんたはん、また雷鳴かみなりどつせ。どないしまほ、わてあれ聞くと頭痛がしまつさ。」
「おや、今の夕立で船が沈んだか。それとも雷鳴かみなりが落ちて、微塵みじんになったか」
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「この間の雷鳴かみなりと云い、不思議なことじゃ」
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
雷鳴かみなり
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「こんな筈ではなかったが——」といった、予想外な気持と、いつ一と雷鳴かみなり来るかも知れない不思議な予感に脅えたのです。
みだれる雲——疾風はやての叫び——宵闇よいやみほど暗かった。時々、青白くひらめく稲妻がひとみを射、耳には、おどろおどろ、遠い雷鳴かみなりがきこえてきた。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新「成程そうでしょうねえ、雷鳴かみなりには実に驚きまして、此地こっち筑波つくばぢかいので雷鳴はひどうございますね」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
雷鳴かみなりのあとに、夕立の来るのはおまりさ。」
同時に、ピカリ、と凄まじい稲光り、灰色に沈んだ町の家並やなみが、カッと明るくなると、乾ききった雷鳴かみなりが、ガラガラガラッと頭の上を渡ります。
夕立のあがり頃から、田楽狭間でんがくはざま阿鼻叫喚あびきょうかんも、雷鳴かみなりの行方と一緒に、遠く消えて、その後を、実に何のこともなかったように、せみひぐらしが啼いている。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
市「なに関宿までめえりやして、野田へ廻ったり何かして、蒸汽で川俣まで参りまして雨に降られやしたが、でけえ雷鳴かみなりで驚きやした、今朝は腕車くるまで此処まで参りました」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
同時に、ピカリ、と凄まじい稻光り、灰色に沈んだ町の家並やなみが、クワツと明るくなると、乾ききつた雷鳴かみなりが、ガラガラガラツと頭の上を渡ります。
べったり、敵へりついたまま、雷鳴かみなりが落ちても離れそうもないぞ。敵にとっては、さぞうるさい膏薬こうやくであろうな
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤城の方から雷鳴かみなりがゴロ/\雷光いなびかりがピカ/\その降る中へ手拭でスットコかむりをした奧木茂之助は、裏と表の目釘を湿しめして、のぼせ上って人を殺そうと思うので眼もくらんでる。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
非常に雷鳴かみなりの多いところで、甲州盆地や、上州の平野で育てられた雲の峰が、気流の関係で大部分は江戸の真上に流れ、此処で空中放電の大乱舞となって
それからまた梅花うめの月ヶ瀬が近くにあるので、鶯のは雪の解けない頃から、雷鳴かみなりの多い季節まで絶えることはなく、その音色はまた、この山の水よりも清い。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茂之助が軽躁かるはずみな事をはしないかと案じて来たから、どうか其様そんな事のないようにと存じて頼まれても、一存で挨拶も出来ませんから、夫を福井町へ呼びにきますると、大雨に雷鳴かみなり
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
平次がいきなり大喝だいかつすると、權八は雷鳴かみなりに打たれたやうに、がばと身を起して居ずまひを直しました。
『拙者も、きょうは大丈夫と、釜無川かまなしがわの瀬へ、はやを釣りに出かけて居ったところ——あの雷鳴かみなりだ』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「二階に寢ると雷鳴かみなりが怖いし、階下したに寢ると地震が怖く、入口が近いと泥棒が怖いと言ふので、巴屋でも中二階の行燈あんどん部屋の片隅に、鼠のやうに息を殺して寢て居る」
きょうまで、どんなに苦労をしたろう、探したろう、そして、寝る間も——というような事を、女は、雨も雷鳴かみなりも——れる冷たさも、うつつに、昂奮こうふんしてしゃべった。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「二階に寝ると雷鳴かみなりが怖いし、階下したに寝ると地震が怖く、入口が近いと泥棒が怖いと言うので、巴屋でも中二階の行燈あんどん部屋の片隅に、鼠のように息を殺して寝ている」
家の中を、雷鳴かみなりがあるいているように、何か、凄まじい物音をさせながら、武蔵は、歩いていた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次がいきなり大喝たいかつすると、権八は雷鳴かみなりに打たれたように、がばと身を起して居住いを直しました。
「ひどい雷鳴かみなりでした……」とか、「お一人でございますか」とか、今に向うの瓦小屋から、弦之丞が話しかけてくれはしまいかと、きまり悪さの物騒ぎを押さえている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あツ、待ちなよ。そのなりで家の中へ入られちやたまらない——大丈夫、びんの毛もあごの先も別條はねえ。雷鳴かみなりだつて見境があらアな、お前なんかに落ちてやるものか」
いちど、西廂にしびさしから釣殿つりどのまでを雷鳴かみなりのように暴れ廻っていた高時は、やがてまた、とって返して
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
困つたことに、人の氣も知らない彌次馬が、近くから遠くから、ヌケヌケとした顏で、或は素知らぬ顏で、燃え付くやうな好奇の眼を光らせて、雷鳴かみなりが鳴つても動きさうもありません。
また突然、山を裂くような雷鳴かみなりだった。一瞬、天地は一色になり、豪雨に白く煙った。雨が去ると、沢の底地や崖には、滝津瀬たきつせとばかり流れる水と、濁流につかっている足もととを見出した。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すっぽんは喰いつくと雷鳴かみなりがなるまで離れないというぜ。気をつけるがいい」
(ごろごろと、ひと雷鳴かみなりやって来れば、梅雨もここらでがる頃だが)
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すつぽんは喰ひつくと雷鳴かみなりがなる迄離れないといふぜ。氣をつけるが宜い」
「ああ驚きました。生来、雷鳴かみなりが大嫌いなものですから」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父親に声を掛けられると、お由利は雷鳴かみなりに打たれたような驚きでした。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)