透明とうめい)” の例文
灰色にしてややつめたく、透明とうめいなるところの気分である。さればまことに豚の心もちをわかるには、豚になって見るよりいたし方ない。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
人間だって血液けつえきの赤い色と毛髪もうはつの色などをとりのぞけば、からだじゅうが無色むしょく透明とうめいになってしまうんだ。ガラスとたいしてちがわないよ
わたした、くさにも、しつとりともやふやうでしたが、そでにはかゝらず、かたにもかず、なんぞは水晶すゐしやうとほしてるやうに透明とうめいで。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
透明とうめい大碗おおわんが、すっと上にあがった。その下へ僕がころがりこむのと、その透明な大碗が落ちて来てその中に僕をふせるのと、同時だった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さうして、透明とうめいこゑが、二人ふたり未來みらいを、うしてあゝ眞赤まつかに、けたかを不思議ふしぎおもつた。いまではあかいろむかしあざやかさをうしなつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれども、こんな海苔巻のようなものが夏になると、あの透明とうめいはねをしたになるのかと想像すると、なんだか可愛かわいらしい気もしないことはありません。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
極度の緊張に脳貧血を起していったん意識をうしない、再び恢復して来たときの復一の心身は、ただ一透明とうめいな観照体となって、何も思い出さず、何も考えず
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
たけは七八すんかたにはれい透明とうめい羽根はねをはやしてりましたが、しかしよくよくればかおは七十あまりの老人ろうじんかおで、そしてに一じょうつえをついてりました。
これもおのずから透明とうめいになり、鉄格子てつごうしの中にむらがった何匹かの猿を現して見せる。それからまた塀全体はあやつ人形にんぎょうの舞台に変ってしまう。舞台はとにかく西洋じみた室内。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
偶然ひよつとかれにはか透明とうめいつた空氣くうきなかからかけつて網膜まうまくそこにひつゝいたものゝやうにぽつちりと一つについたものがある。それはとほ上流じやうりうかゝつてちひさなふねであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ほのぐら宵闇よいやみのそこから、躑躅つつじさきほりの流れは、だんだん透明とうめいぎだされてきた。ひとみをこらしてのぞきこむと、にねむるうおのかげも、そこ砂地すなじへうつってみえるかと思う。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大いそぎで薬品やくひん調合ちょうごうにとりかかり、それができあがると、夕方ゆうがたから夜にかけて、ぼくはからだ透明とうめいにするそのくすりをのみつづけたんだ——
そのすきとおった音に私の興奮した心はもう一ぺん透明とうめいなニュウファウンドランドの九月というような気分にもどりました。みんなもそうらしかったのです。陳氏は
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いやにまがりくねった透明とうめいの糸みたいなものが走っていて、なんだかクラゲのような形をしていた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あおぐろい透明とうめいのなかにたれている手が、ギヤマンをすかしたような色に見えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらく、きみには想像そうぞうもつかないことだろう。透明とうめいでいるために服をきないでいると、食べ物を口に入れることができないんだ。
その拍手の中でデビス長老は祭司次長に連れられて壇を下り透明とうめいな電鈴が式場一杯に鳴りました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そういってカコ技師は、透明とうめいな液のはいっている小びんを出してみせた。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「覚者の善です。」その人のかげむらさきいろで透明とうめいに草にちていました。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
透明とうめい清澄せいちょうで黄金でまた青く幾億いくおくたがい交錯こうさくし光ってふるえて燃えました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)