角力すもう)” の例文
この理由は簡単で角力すもうをみても、野球の試合をみても、段ちがいの勝負よりも実力の伯仲した場合のほうが面白いのと同じである。
私の要求する探偵小説 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
勝川のおばさんという名と一所に出るのは佐兵衛さんと、も一人お角力すもうという人だった。いま思えば三角関係だったのでもあろう。
いえそとにはゆきが二、三じゃくもっていました。そして子供こどもらは、学校がっこうからかえるとそと雪投ゆきなげをしてあそんだり、角力すもうったりした。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
野球も角力すもうも映画も舞踊も芝居も、常設館から各家庭へ個別に進出することとなる。これは興行というものにとって、革命を意味する。
明日は天気になれ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
きのうきょうこの社会へ入ってきた他の前座とはてんで芸というものの肚へ入れようが本場所角力すもうと田舎角力くらいちがっていた。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
その時、わたしが、何をしているんですかとたずねると、半風子しらみ角力すもうをとらせているんだと答えた汚い坊さんがあったじゃありませんか
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
角力すもうだの撃剣だの、喧嘩だの勝負事だのと、荒っぽいろくでもない事を教えるからでございましょう。私はそれが心配でなりません
楽しそうに吹く生徒の口笛が彼方此方あちこちに起る。テニスのコートを城門の方へ移してからは、桜の葉蔭で角力すもうを取るものも多い。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……そのまえは“大纏おおまとい”。……“大纏”という角力すもうとりがやっていたわけです。……いまの“尾張屋”になったのはずッとあとのことです。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
そういう村の角力すもうに飛入りしては、負けてもうっかり文句などは付けられない。それほど彼らはまた気の強い人たちであった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
賭けたがること、相場が好き、ボロ株が好き、おまけに、角力すもうが好きで光風てるかぜ贔屓ひいきであった。しかし、それも考えれば理由のないこともない。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
国技館の角力すもうを見物して、まじめくさり、「何事も、芸の極致は同じであります。」などという感慨をもらす馬鹿な作家。
弱者の糧 (新字新仮名) / 太宰治(著)
三郎は、両手で膝頭ひざがしらをつかんで、角力すもうをするときのように、しやがもうとしたが、膝頭が、いやに重いような感じだった。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
も一つの部屋のブルジョア息子達の部屋のお客こそ大したものだ。朝から晩まで誰かしら外部のものが詰めかけ、ハモニカ、合唱、角力すもう哄笑こうしょう
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そうしたらその角力すもう取りは、そのあくる日に沢山の縮緬ちりめんとか緞子どんすとかを台に載せて、自分で抱えて人力車に乗ってお母様の処へお礼に来ましたので
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
角力すもうとり、スポーツ選手、大学生、そういうものは、なで切りにしているような、おぞましいおかたでございました。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さっきから大学生の上原をみる眼が少し変ってるなと思っていたら、大学生はやにわに、上半身、真裸まっぱだかになって、上原に角力すもうをいどみかけるのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「また昼間っからやってるよ。どったんばったん角力すもうばかりやってンですよ。——なあにね、酔っぱらって、おかみさんをいじめるのが癖なンで……」
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ことに壮士坊主などは歌を謡うやら角力すもうを取るやら、何が何やら寺の中一切いっさいが乱暴世界になったとしか見えない。近来ますます甚しくなったようです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
手の休まった兵士たちは、血の流れた草の上で角力すもうをとった。神庫ほくらの裏の篠屋しのやでは、狩猟を終った饗宴きょうえんの準備のために、速成の鹿の漬物つけものが作られていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「さあ、タヌ君、えらいことになった。これではとても角力すもうにはなるまい。なにしろ、灯台と破屋あばらやほども違う」
若いにしては強い、此の間は三段目の角力すもうを投げたなどゝめられましたから、自分も一層相撲に成ろうと、其の頃の源氏山げんじやまという年寄の弟子となったが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それからというもの、この陶人と前山翁の角力すもうは勝負ありともまたなしともつかず、両人相対していろいろ複雑な辛抱の日が相互今につづいているあり様だ。
かめと亀とが角力すもうをとって負けたほうが仰向けに引っくり返される。引っくり返されたが最後もう永久に起き上がる事ができないので乾干ひぼしになるそうである。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
裸の書物や、机から落ちたインキ壺や、裏むきになった灰皿や、ゲートルと角力すもうを取っている屑フィルムや、フタのないヤカンが、その位置で根を張りだした。
泥葬 (新字新仮名) / 竹内浩三(著)
かく芸を離れて当人になってくるのは角力すもうか役者に多い。作物になるとさほどでもないようにも見える。
おはなし (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
角力すもうを取りて障子ふすまを破りたる時、或る器物または食物を得んとてねだりたる時、これらの場合に父母はこれを叱るのみならず、甚だしきはこれを打ち、これを縛し
病牀譫語 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかしながら諸君、彼らの現状はどうでありましょう、やはりピープルとして存在しているではありませんか。あいかわらず、熊と角力すもうを取っているではありませんか。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
一番目の小百合殺しは一向問題にならなかったが、二番目の角力すもうとびの者の喧嘩は座方の宣伝が頗る効を奏して、どこでもその噂で持ち切っているという有様であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして翌日は朝から蝋小屋の中で、従兄弟達と角力すもうをとったり、隠れんぼをしたりして遊んだ。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
まるで勝負にならぬ角力すもうで、たばになってかかった敵をば一突きで突き飛ばし給うたのです。
うたいうたうとか、角力すもうを見るとか、芝居を見に行くというくらいに、政治の趣味がないといかぬ。今度の内閣はうまいことをやるとかなんとか始終批評をする。正直に批評をする。
政治趣味の涵養 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
昔、朝廷ちょうていでは毎年七月に相撲すもう節会せちえもよおされた。日本全国から、代表的な力士をされた。昔の角力すもうは、打つる投げるといったように、ほとんど格闘かくとうに近い乱暴なものであった。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
外の生徒は二人が盛砂の中で角力すもうを取るのを見て、まるで狗児ちんころのようだと云って冷かしていた。やあ、黒と白が喧嘩けんかをしている、白、負けるななどと声を掛けて通るものもあった。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
また時には狸の子供が五、六匹、穴の入口で角力すもうなどとって戯れているのを見たことがある。晩秋になると、雑木林の方から枯草ぼうぼうたる私の広い屋敷へ、狸が毎夜遊びにきた。
たぬき汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
この考えはたしかに病的びょうてきだが、一つのなぐさめでもあった。足弱の子供をあやなすため、焼け残りの古本屋で、角力すもうの古雑誌を買ってあてがう。顧みて支那の戦国せんごく時の流亡人りゅうぼうじんを連想した。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
彼等あちらはお前様、昨夜は夜祭おたびを見ね行くし、明日は角力すもうに行かんならんさかい。」
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
然し金菱にかゝったら、いくら専務がジタバタしようが、けたから云ったって角力すもうにならない。これからは「金融資本家」と結びついていない「産業資本家」はドシ/\没落してゆくんだ。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
真中の母屋おもやには神尾主膳が住み、そこへ出入りするのは、旗本のくずれであったり、御家人のやくざ者であったり、どうかすると、角力すもうや芸人上りのようなものであったりするけれども
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
現在年二回以上の観劇と一回の角力すもう見物をそれぞれ一等席で招待し、また会食は一流料理店を選び、洋食の食べ方、食卓の作法など、少年店員たちもこの機会に自然に会得するよう心がけ
斜めに突きさされた真新しい奥様の卒塔婆そとばの前には、この寒空に派手な浴衣地の寝衣を着て、長い髪の毛を頭の上でチョコンと結んだ、一人の異様な角力すもう取りが、我れと己れの舌をみ切って
幽霊妻 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
それは隣村の者で明治初年ごろ、田舎角力すもうで名を売ったそれがしと云う老人であった、その老人は体重が三十貫近くもあって、生れて以来薬と云う物を口にしたことがないと云うくらい頑健な男であった。
位牌田 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
芝居や角力すもうの番附、板材や、たるこも等に記された文字、見過ごされるこれらのものにも驚くべき美しさがあるのだ。よき字型を得ること、これは個人にとっては至難の至難なことだと云ってよい。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
もっと身近な角力すもうの呼び出しや物売りの唄にも民族の旋法が宿る。
歌詞とその曲 (新字新仮名) / 信時潔(著)
角力すもうより帰った未醒氏、余程残念だったと見え
時折は角力すもうもかかった。天一の手品もあった。
四谷、赤坂 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
「お角力すもう煎餅せんべい」お手上がりだ
昔の言葉と悪口 (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
角力すもうか。」
決闘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
特に講談(そのころは小説のほかに必ず講談が載っていた。私は小説は読まなかった。面白くなかったのだ)を読み、角力すもうの記事を読む。
石の思い (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そのあいだに、好きな角力すもうを見たり、山陽、山陰その他の戦場から戻って、折々、伺候しこうする部将をねぎらっては、大いに酒宴も張り、例の
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)