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臆病者
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おくびょうもの
ふりがな文庫
“
臆病者
(
おくびょうもの
)” の例文
僕はかわいい顔はしていたかも知れないが
体
(
からだ
)
も心も弱い子でした。その上
臆病者
(
おくびょうもの
)
で、言いたいことも言わずにすますような
質
(
たち
)
でした。
一房の葡萄
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
また
夜
(
よる
)
はなるべく
外
(
そと
)
に
出
(
で
)
ずに、
白
(
しろ
)
い
影
(
かげ
)
を
見
(
み
)
ないものと、
早
(
はや
)
くから
戸
(
と
)
を
閉
(
し
)
めてしまうような
臆病者
(
おくびょうもの
)
も
少
(
すく
)
なくはなかったのであります。
白い影
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「ハハハハハハ、
片腹
(
かたはら
)
いたい
臆病者
(
おくびょうもの
)
のたわ
言
(
ごと
)
こそ、あわれあわれ、もう
汝
(
なんじ
)
の天命は、ここにつきているのだ、男らしく観念してしまえ」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さて、広庭のざわめきが一瞬静まって一同が己の方を振向いたと知ると、今度は群集に向って
煽動
(
せんどう
)
を始めた。太子は音に聞えた
臆病者
(
おくびょうもの
)
だぞ。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
のらくらの、
臆病者
(
おくびょうもの
)
の、そうして過度の感覚の
氾濫
(
はんらん
)
だけだ。こんな子は、これから一体、どうして生きて行ったらいいのだ。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
「決して、御前さま。幻やなんかではございません。わたくし、いくら何でも、そんな
臆病者
(
おくびょうもの
)
ではございませんわ」
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
臆病者
(
おくびょうもの
)
、
卑怯者
(
ひきょうもの
)
はみんなそれだ、自分で悪いことをしておきながら、その責任を人に背負わせようとする、なにより恥知らずな、きたならしい卑劣な根性だ
霜柱
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
何
(
なん
)
となれば、
無智
(
むち
)
には
幾分
(
いくぶん
)
か、
意識
(
いしき
)
と
意旨
(
いし
)
とがある。が、
作用
(
さよう
)
には
何
(
なに
)
もない。
死
(
し
)
に
対
(
たい
)
して
恐怖
(
きょうふ
)
を
抱
(
いだ
)
く
臆病者
(
おくびょうもの
)
は、
左
(
さ
)
のことを
以
(
もっ
)
て
自分
(
じぶん
)
を
慰
(
なぐさ
)
めることが
出来
(
でき
)
る。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
瑠璃さん! あわれんでお
呉
(
く
)
れ! お父さんは死に損ってしまったのだ! 死ぬことさえ出来ないような
臆病者
(
おくびょうもの
)
になってしまったのだ! お前の声を聞くと
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
持ち出せば、きみまでやっつけられると思っているのかね? きみは案外
臆病者
(
おくびょうもの
)
だね。安心したまえ、いくらなんでもきみまでやられるようなことはあるまいから
仮装観桜会
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
思切
(
おもいき
)
って坂道を取って
懸
(
かか
)
った、
侠気
(
おとこぎ
)
があったのではござらぬ、血気に
逸
(
はや
)
ったではもとよりない、今申したようではずっともう
悟
(
さと
)
ったようじゃが、いやなかなかの
臆病者
(
おくびょうもの
)
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は考えたのだろう。先週の晩庭で聞いたと思ったあの足音のようなものだろう。暖炉の煙筒の影のようなものだろう。私は今ばかげた
臆病者
(
おくびょうもの
)
になりかけたのだろうか。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
もう壁にぶっつかったようにペンを
鷲
(
わし
)
づかみにして、原稿紙をピリピリさせながら——この
臆病者
(
おくびょうもの
)
、
卑怯者
(
ひきょうもの
)
、子供にも親にもひかれるこの
偽者
(
にせもの
)
め——などと殴り書きした。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
管仲
(
かんちゅう
)
が戦場で
遁
(
に
)
げたからとてただちにこれを
卑怯
(
ひきょう
)
と批評し
臆病者
(
おくびょうもの
)
と判断し、しかして
勇敢
(
ゆうかん
)
なれと忠告した者があったならば、おそらく彼は腹の底で笑うのみであったろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
この夢を見た夜は寝しなに
続日本紀
(
しょくにほんぎ
)
を読んだ。そうして
橘奈良麻呂
(
たちばなのならまろ
)
らの事件にひどく神経を刺激された、そのせいもいくらかあったかもしれない。
臆病者
(
おくびょうもの
)
はよくこんな夢を見る。
Liber Studiorum
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
もっとも今のうちは母がいるからかまいませんが、もう少しして、母が国へ帰ると、あとは下女だけになるものですからね。
臆病者
(
おくびょうもの
)
の二人ではとうていしんぼうしきれないのでしょう。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
されば彼は同年らに
臆病者
(
おくびょうもの
)
と呼ばれ、少女情人らの噂にも働きなしとの評はあれど、父老らは彼を
褒
(
ほ
)
め、彼を模範にその子を意見するほどなりき、しかして彼また決して臆病者にあらず
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
自動車の意志は、さながら余に乗り
移
(
うつ
)
って、
臆病者
(
おくびょうもの
)
も一種の
恍惚
(
エクスタシー
)
に入った。余は次第に
大胆
(
だいたん
)
になった。自動車が余を載せて駈けるではなく、余自身が自動車を駆って
斯
(
か
)
く
駛
(
は
)
せて居るのだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
並木通
(
なみきどお
)
りを片っぱしから乗り
尽
(
つく
)
して、
処女
(
おとめ
)
が
原
(
はら
)
もしばらく乗り回し、
垣根
(
かきね
)
も
幾
(
いく
)
つか
跳
(
と
)
び
越
(
こ
)
して(初めは跳び越すのが
怖
(
こわ
)
かったけれど、父が
臆病者
(
おくびょうもの
)
を
軽蔑
(
けいべつ
)
するので、やがてわたしも怖がらなくなった)
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
そんなことをいえば、
臆病者
(
おくびょうもの
)
と笑われるような気がしたからです。
草
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
由来最大の
臆病者
(
おくびょうもの
)
ほど最大の勇者に見えるものはない。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「しょうのない
臆病者
(
おくびょうもの
)
だね」
街の少年
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「きみは
臆病者
(
おくびょうもの
)
だぞ」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そして、いつしか、だれいうとなく、りこう
者
(
もの
)
の
与助
(
よすけ
)
は、「
臆病者
(
おくびょうもの
)
の
与助
(
よすけ
)
」と、みんなからあだ
名
(
な
)
されるようになってしまったのであります。
おおかみと人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
勇一君は、
臆病者
(
おくびょうもの
)
と言われるのは、いやですから、思いきって、舞台にあがってみようと考えました。
虎の牙
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それにも
拘
(
かか
)
わらず千坂対馬がみずからそれを買って出たことで、あきらかに一種の軽侮を感じた。しかし、それは対馬が合戦に出ることを嫌った
臆病者
(
おくびょうもの
)
という意味ではない。
城を守る者
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もし、忠盛が、
臆病者
(
おくびょうもの
)
であったら、かならず過って、罪もない坊主を斬り殺していたにちがいない。
剛胆
(
ごうたん
)
、
沈着
(
ちんちゃく
)
、武者たる者は、よろしくかれの如きであれ——と、いうのである。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
臆病者
(
おくびょうもの
)
の常として自分もしばしば高い所から飛びおりることを想像してみることがある。
乾坤一擲
(
けんこんいってき
)
という言葉はこんな場合に使ってはいけないだろうが、自分にはそういう言葉が適切に思い出される。
Liber Studiorum
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「どうだ?
臆病者
(
おくびょうもの
)
……」
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
ほかの
子供
(
こども
)
らは、みな
犬
(
いぬ
)
といっしょになって
遊
(
あそ
)
んでいましたのに、その
子供
(
こども
)
だけは、どういうものか
臆病者
(
おくびょうもの
)
で、
犬
(
いぬ
)
を
見
(
み
)
ると
怖
(
こわ
)
がっていたのです。
少年の日の悲哀
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
併し、悪人でありながら非常な
臆病者
(
おくびょうもの
)
の私は、そこに少しの危険でも予想されたなら、決してそんな決心をしなかったのでしょうが、私の考えた計画には全く危険がなかったのです。
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話――
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いや五人のおどろいたこと、あの時はてっきり
臆病者
(
おくびょうもの
)
と思ったればこそ、満座の中ではずかしめたのであるが、戦場の働きをみると臆病どころか、こんどの戦いずい一の功名をあげた勇士であった。
だんまり伝九
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「なんだ
猿
(
さる
)
じゃないか、
臆病者
(
おくびょうもの
)
め」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「黄金仮面」の噂を
精々
(
せいぜい
)
物凄く話し合うことよろしくあって、彼等が引込むと、この芝居の副主人公とも云うべき、非常な
臆病者
(
おくびょうもの
)
が登場し、暫く
独白
(
どくはく
)
をやっている所へ、うしろの木立を分けて
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「あいつは
臆病者
(
おくびょうもの
)
の腰ぬけだ」
だんまり伝九
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
臆
常用漢字
中学
部首:⾁
17画
病
常用漢字
小3
部首:⽧
10画
者
常用漢字
小3
部首:⽼
8画
“臆病”で始まる語句
臆病
臆病風
臆病心
臆病口
臆病神
臆病窓
臆病蟲
臆病気
臆病犬
臆病癖