メートル)” の例文
私達の寝転んでいる場所から二メートルあまりの地点に、葉のあまりない桜の木があったが、その下に女学生が二人ごろりと横わっていた。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
円筒というのは、ブリキ製のつつで、その中の二メートルを落下するに要する時間を測った。その測定器の概略は第33図に示す如くである。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
そしてミマツ曲馬団大爆破のとき、二、三百メートル先の工場の中へとびこんでいたのをこのスミ枝が取りかえしてきてくれたのであった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今では四百メートルの走者は最初から百米のスピードでゆく、また四百米の走者が千五百米をやらなきゃ駄目だということになって来た。
スポーツ・文学・政治 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
山腹は頗る傾斜が急で、おまけに巨巌はわだかまり、大樹が茂って、時には数百メートルも下って工事の基礎地点を発見しなければならない。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
やがて衝立岩ついたていわの真下辺りで、二ノ沢の落込む少し上で、雪渓はくびれたようになって幅一メートル半ほどの裂罅れっかが雪渓を上下に切り裂いている。
一ノ倉沢正面の登攀 (新字新仮名) / 小川登喜男(著)
次は二千十四メートルの小金沢山を主峰とした一群である。其北には狼平の鞍部があり、真白に雪の積った茅処かやとの尾根が天狗棚山に続いている。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
四郎五郎しろごろうさんのやぶよこまでかけてると、まだ三百メートルほどはしったばかりなのに、あつくなってたので、上衣うわぎをぬいでしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
紙を刻んで丁重に靴型をとると、それを衣嚢におさめ、巻尺を取出して上着の裾までの距離を測ると手帳を取出して、〇メートル八六と記した。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
次は熊城で——朔郎が失ったと云うもう一本の鏨が発見され、その個所が、久八が蹲んでいたと云う場所の直前五メートルの池中だったと云う事。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ひとは、その生涯に於いて、まことの幸福を味い得る時間は、これは、百メートル十秒一どころか、もっと短いようである。声あり。
七百メートル内外の二つの山の間にあって羽前との境山に近く、旧藩時代に番所を置かれたこと(仙台封内風土記)などを考え合わすべきである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この地は海抜高一・六〇〇メートル位で、気温も最高二五度、最低六度位で、高原地帯のせゐか、非常に住みいゝところであつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
四人は犯人の足跡を乱さぬ為に、それと並行に二三間も離れた所を歩いて、五十メートル程も行くと、往復二本の靴跡はそこでパッタリ途絶とだえていた。
私達は汗もかかずに三十町をのぼって、海抜一千八十メートル(三五六五尺)の仁田峠へ来た。空気はそれほどひやひやしており朝日はまだ山を出ない。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
「東北風が十メートル位あるから……飛行場が右に見えたら飛下りる……恰度飛行場に流れて行くだろう……も少しだ……いいか、オーイ、用意……」
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
が、二十メートルも歩いたと思う頃、立止って振返ると、給水タンクの下であれこれと指図しているらしい司法主任の方を顎で指しながら、私へ言った。
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
標高千メートル近い諏訪地方では、桜はおろか梅も咲かない。諏訪湖の氷はとけて再び氷る事もないが、まだ雪解の水量に湖面が上る様子はないのである。
釣十二ヶ月 (新字旧仮名) / 正木不如丘(著)
少くとも千メートル以上の山地に入つて行かなければならなかつた。しかしそれは日本の女にはちよつと出来かねた。
女の温泉 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
いずれも四千メートルに近い山岳の直下に、雪の中から口を開いているベルクシュルントはさすがに恐しく思われた。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
母、祖父、姉妹の顔を順ぐりに思いうかべようと努力したが、高さ二十メートルほどの「虫くい」の松の幹が目にうかぶようにしか、それらは私の前にあらわれない。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
水辺まで駈け付けてみると百メートルばかり漕ぎ去ったかの男は、四辺あたりを包む夕暗ゆうやみの中で、帽子を振っておる。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
胸のところから長さ十メートルばかりの切れがずうと続いて、それに勲章をぞろっとつけて、その帯のようなものを、三十人の部下の人たちがぞろぞろ持って行くのでした。
私はその後を三十メートルもつけてあるきましたが、ふと横筋にそれるとそこの袋小路で長い間ただつったっておりました。信二郎は一体どんな気持でいるのでしょうか。
落ちてゆく世界 (新字新仮名) / 久坂葉子(著)
メートルほど距てて、隣の天幕の歩哨も見ているのだ。が、趙の、この、平生に似ない真率しんそつ慟哭どうこくが私を動かした。私は彼をたすけ起そうとした。彼は仲々起きなかった。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そして停留場から二十メートルぐらいの地点で、その若い男の肩をがっしとつかまえたのです。僕らが追っかける跫音あしおとを聞いても、若者は逃げ出そうとはしなかったですな。
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
轟然たる爆音とともに、黒煙は二百メートルも空へ舞い上った。張作霖の骨も、この空に舞い上ったかと思えたが、この凄まじい黒煙と爆音には我ながら驚き、ヒヤヒヤした。
私が張作霖を殺した (新字新仮名) / 河本大作(著)
其処そこには、怪鳥が二メートル余もある翼をひろげ、恐ろしい叫び声をあげながら北村に襲いかかろうとしている。博士は思わずあっと立竦んだが、直ぐに右手の拳銃ピストルをあげて
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
恐しい敵機は、四千メートルの高さで迫ってきた。黒雲につつまれて、見えたりかくれたりしている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
エスクィリーノの四つの山の谷間に横たわる長さ六百メートルにも足りない細長い面積ではあるけれども、其処には紀元前六世紀頃からの各時代各種の建物の遺物が堆積していて
パラティーノ (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
五百メートルばかり隔たった中央の大天幕の中に居る衛生隊司令官のワルデルゼイ軍医大佐の処へ挨拶に行って巨大な原油ストーブの傍に立ちながらもこのブルブルが続いていた。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その前景のなかへ、右手からも杉山が傾きかかる。この山に沿って街道がゆく。行手は如何いかんともすることのできない闇である。この闇へ達するまでの距離は百メートルあまりもあろうか。
闇の絵巻 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
両機は一千メートルの高度を保ちながら雁行がんこうしていたが、箱根の上空にさしかかったところで、密雲のために視界をさえぎられたうえに、エアーポケットに入って機体がはげしい勢いで落下した。
空中に消えた兵曹 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
プンカハリュウ——木の繁ったせまい陸地が橋のように七キロメートルもつづいて、対岸プンカサルミへ達している。代表的なフィンランドの湖水風景だ。私たちのほかは誰も下船しない。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「これでも未だ僕は小さい方だよ、中には西洋人なぞ、二メートルもある奴がいるよ。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
轟と凄まじい音と共に機体がスイと空に吸い上げられて、今迄太い細い線模様を描いていた地面が、忽ち野や山や人家が箱庭のように、小さくはっきり見える迄に収縮して了う。もう五百メートルの高空なのだ。
旅客機事件 (新字新仮名) / 大庭武年(著)
「はい、だいぶ登りました。もう六、七百メートルは」と同君がいう。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人の曲者くせものは窓から五・六メートルのところまで忍び寄りました。
身代りの花嫁 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
メートルの雪が
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
メートルぐらゐ離れたところで盛にフットワークよろしく左右のストレートをくりだし、時にスウ※ングやアッパーカットを閃かしてゐる。
酒のあとさき (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
非常な濃雪で二十メートル先も見えないという位の雪の時には、この種の結晶が多いのである。この型は大別して三種に分けることが出来る。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
それから、艇を水面下十メートルの位置に置き、静かに潜望鏡ペリスコープを出して、四囲の形勢をうかがった。しかし、海上は波高く、展望はきかなかった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
とうさんが奈良ならかねというのは、直径ちょっけいが二メートルぐらいあったそうだから、そんなのにくらべれば、ごんごろがねかねあかぼうにすぎない。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
拡声機の声「女子青年団の行進は終りました、次は女子職員の百メートル徒歩競争であります、出場の先生はすぐ御用意下さい」
四つの都 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
其処にタンクの横ッ腹から突出している径一センチ長さ〇・六メートル程の鉄棒を指差しながら、下を振向いて助役へ言った。
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
胴のまわり一メートル三、厚さ十センチというでかい蟒の胴を輪切りにした燻製が、常例じょうれいビフテキに使っていた特大皿から、はみ出しそうになっているのである。
八が岳は、ね、もっと信濃へはいってから、この反対側のほうに見えるのです。笑われますよ。これは、駒が岳。別名、甲斐駒かいこま。海抜二千九百六十六メートル
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
が、ふと彼の眼の四五メートル彼方かなたで、杉の木が小さく揺らいだかとおもうと、そのまま根元からパタリと倒れた。
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)
「モン・ブランを二十メートルだけ頼むよ」「へえ、よろしい」「グウテを十米だよ」「おっと合点」ってわけで、お客様のお望みの寸法だけ差し上げるんですヨ。
種子島の西南三二海里かいり、面積は五○○平方キロ、島形は、円くほとんど出入なき水平的肢節。島の中央には、九州地方第一の高山、宮の浦岳、一九三五メートルそびえる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)