祕藏ひざう)” の例文
新字:秘蔵
出して渡せばしかと懷中して則ち頭にさせくしを出し是はお前樣も知る通り我が爲に千金にもかへがたき母の紀念かたみにして片時もはなさず祕藏ひざうの品此櫛このくし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むしせざるをあやしむのみと。令史れいしおどろいてふやう、うまはじめよりうまやいださず祕藏ひざうせり。またいへるべきものなし。なん千里せんりくとふや。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雲飛うんぴおどろいて『んだことを言はるゝ、これは拙者せつしや永年ながねん祕藏ひざうして居るので、生命いのちにかけて大事だいじにして居るのです』
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
義兄が祕藏ひざうの赤酒は、こんな時でもなければ口に入りさうもありません。
よもやとおもへどまさしくならばなんとせん實否じつぴくはしくきたしとおもへどとがむるこゝろことばつまりて應答こたへなにやらうろうろになりぬおたかさまゆるりなされいまあにもどりまするまづそれよりはおけたきもの往日いつぞやはなまをせしあに祕藏ひざう畫帖ぐわでうイエおまへさまに御覽ごらんるゝにめられこそすれなにとして小言こごとくことでは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かねちから權威けんゐもつて、見事みごともの祕藏ひざうすべし、ふたゝこれ阿母おふくろ胎内たいないもどすことこそかなはずとも、などかすべのなからんや、いで立處たちどころしるしせう。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すると一日あるひ一人ひとり老叟らうそう何所どこからともなくたづねて來て祕藏ひざうの石を見せてれろといふ、イヤその石は最早もう他人たにんられてしまつてひさしい以前から無いと謝絶ことわつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ほとん當惑たうわくなすと雖も詮方せんかたなく年來祕藏ひざうせし差替の大小僅かの金にて他人手ひとでに渡んこと如何にも殘念ざんねんに存じ貴殿は豫々かね/″\御懇望ごこんまうもありし品ゆゑ御買取を願はんと持參なしたりと申に彼方も大橋の困窮こんきう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其後石は安然あんぜんに雲飛の内室ないしつ祕藏ひざうされて其清秀せいしうたいかへず、靈妙れいめううしなはずして幾年いくねんすぎた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
拂底ふつてい蝋燭らふそくの、それもほそくて、あなおほきく、しんくらし、かずでもあればだけれども、祕藏ひざうはこから……しておぼえはないけれど、寶石はうせきでも取出とりだすやうな大切たいせつな、その蝋燭らふそく
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)