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瞥見
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べっけん
ふりがな文庫
“
瞥見
(
べっけん
)” の例文
自分はああいう巨石運搬についての詳しい事情は知らないが、専門家の研究を
瞥見
(
べっけん
)
したところによると、結局は多衆の力によるらしい。
城
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「君が見ないさきに僕が拝見するのは失礼だと思ったから、ほんのちらと
瞥見
(
べっけん
)
したばかりだが、でも、桜の花のような印象を受けた。」
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
とにかく吾輩は寝室の障子をあけて敷居の上にぬっと現われた泥棒陰士を
瞥見
(
べっけん
)
した時、以上の感想が自然と胸中に
湧
(
わ
)
き出でたのである。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
恐らく鳴尾君の讃美歌は天上のエホバの
御座
(
みくら
)
にまでとどいたことであろう。私は時に鳴尾君の
祈祷
(
きとう
)
の姿を
瞥見
(
べっけん
)
することがあった。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
瞥見
(
べっけん
)
の美である。目を撃つ美で、観照すべき美ではない。ぬれ羽色の髪に、つげの
櫛
(
くし
)
の美しさは見れば見る程味の出る美である。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
▼ もっと見る
その重々しさは四条派の絵などには到底見られないところで、却って無名の古い画家の縁起絵巻物などに
瞥見
(
べっけん
)
するところである。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
光子は涙浮びたる眼を開きて、わずかに老婦人を
瞥見
(
べっけん
)
せるのみ、
打戦
(
うちおのの
)
きて手足を
竦
(
すく
)
め、前髪こぼれて地に敷くまで、
首
(
こうべ
)
を垂れて
俯向
(
うつむ
)
きぬ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ブーラトリュエルというのは、あのモンフェルメイュの道路工夫で、本書の暗黒なる場面において読者が既に
瞥見
(
べっけん
)
した男である。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ようやく近ごろ酔眼
朦朧
(
もうろう
)
として始めて
這個
(
しゃこ
)
の消息を
瞥見
(
べっけん
)
し得たるに似るがゆえに、すなわちこの物語に筆を執りいささか所懐の一端を伸ぶ。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
恐ろしい真実を
瞥見
(
べっけん
)
したようにも思われ、芝居と思わない芝居を見せられたようでもあり——佃に、この懐疑の責任はあった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
とろりと白い
脂
(
あぶら
)
を流したような
朝凪
(
あさなぎ
)
の海の彼方、水平線上に一本の線が横たわる。これがヤルート
環礁
(
かんしょう
)
の最初の
瞥見
(
べっけん
)
である。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その霧の中に、チラ/\と時折、
瞥見
(
べっけん
)
するものは、半面紫色になった青年の死顔と、
艶然
(
えんぜん
)
たる微笑を含んだ夫人の
皎玉
(
こうぎょく
)
の
如
(
ごと
)
き美観とであった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ガルシンの生涯と芸術が、「異常にとぎすまされた道徳的敏感さ」によって貫かれていたことは、以上の
瞥見
(
べっけん
)
からも容易に導きうる結論である。
「あかい花 他四篇」あとがき
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
ワルトンの言葉に薄笑いを浮べて居たジョーンは、しゃくるような
瞥見
(
べっけん
)
をワルトンに送った後、小声でアイリスに言った。
決闘場
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その結果、次第に意識的に、霊界通信を行い得るようにもなり、又
或
(
あ
)
る程度の霊視能力を恵まれて、折ふし他界の状況を
瞥見
(
べっけん
)
することにもなる。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
あらゆる
旋律
(
メロディー
)
の句調に和合し得て、さらに流動自由な歌のようである声——それをクリストフは味わって以来、新芸術の美を
瞥見
(
べっけん
)
したのであった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それらの宝蔵を
瞥見
(
べっけん
)
しただけでも、多少のありがた味を感じないわけにはいかなかったが、それも今の私の気分とはだいぶ距離のあるものであった。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この美しい熔岩流が今まで外部からのみ
瞥見
(
べっけん
)
され、
誰
(
たれ
)
にも開かれずに秘められていたことを思うと、この処女谷を発見し得た私の
幸
(
さいわい
)
と喜びは大きい。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
尤
(
もっとも
)
高橋君のは昔発表せられた時
瞥見
(
べっけん
)
して、舞台に上すには適していぬと云うことだけは知っていた。そう云うわけで、私は両君の影響を受けてはいない。
不苦心談
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
梶子はその間に
瞥見
(
べっけん
)
しただけではあったが、ともかくも一度親しく見たところの、瀬戸内海の黄金島の地図——それについて、その存在所を確かめにかかった。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
否
(
いな
)
、一月に一度ぐらいは引き出されて
瞥見
(
べっけん
)
された事もあったろう、しかし要するに瞥見たるに過ぎない
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そのウガチを主な目的として居るところの著作数種を
瞥見
(
べっけん
)
しますれば、左母二郎のような人間がしばしば描かれて居るのを発見するに難くないのでありますから
馬琴の小説とその当時の実社会
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あの高麗丸から海岸の西瓜の山を
瞥見
(
べっけん
)
してそれこそ子供のように小躍りした鮮新さや、青や白や鼠色ランチの馳せちがう、やや煙で黒っぽい油絵風の画趣からも
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
従って私はただ、その量及び価値を左右する一般的諸法則のあるものを
瞥見
(
べっけん
)
するに止めるであろう。
経済学及び課税の諸原理
(新字新仮名)
/
デイヴィッド・リカード
(著)
先夜
瞥見
(
べっけん
)
した
鼬
(
いたち
)
といい、雲雀といい、そんな風な動物が今はこの街に親しんできたのであろうか。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
彼は
永劫
(
えいごう
)
を
瞥見
(
べっけん
)
するけれども、目には舌なく、言葉をもってその喜びを声に表わすことはできない。彼の精神は、物質の束縛を脱して、物のリズムによって動いている。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
往きに一昼二夜、復えりに一昼夜、
皮相
(
ひそう
)
を
瞥見
(
べっけん
)
した札幌は、七年前に見た札幌とさして相違を見出す事が出来なかった。
耶蘇教
(
やそきょう
)
信者が八万の
都府
(
とふ
)
に八百からあると云う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
或日商人某が柳原の通をゆくと一人の
乞丐
(
こじき
)
が
薦
(
こも
)
の中に隠れて煙草を喫んでいるのを
瞥見
(
べっけん
)
して、この禁煙令はいまに破れると
見越
(
みこし
)
をつけて煙管を買占めたという実話がある。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
前岸に出没するの人影は後岸に立つ人の眼中には容易にこれを
瞥見
(
べっけん
)
しうるがごとしといえども
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼は
此等
(
これら
)
の光景が見えなくなろうとする前、今一度振向いて最後の
瞥見
(
べっけん
)
をなした。
操人形
(
あやつりにんぎょう
)
の様な紳士は降り立っても同じ事を繰返して居た。刑事と車掌は何か云って
居
(
お
)
った。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
ワグナーの伝記を
瞥見
(
べっけん
)
するといたいけな少年時代から、天下を敵として
闘
(
たた
)
かった中年期、功成り名
遂
(
と
)
げた晩年に至るまでそれは一篇
血紅
(
けっこう
)
の奮闘史であり、
獅子
(
しし
)
の魂のあがきであり
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
皆はこの時只黒い
棒杭
(
ぼうぐい
)
のような
浮游物
(
ふゆうぶつ
)
を
瞥見
(
べっけん
)
した。やがてこんな時に迷信を持ちたがる久野が「今日は勝った」と言い出したが、それが何だか妙な不安を与えたことも争われなかった。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
この目的のためにしばしばこの女の
住居
(
すまい
)
の近所を
徘徊
(
はいかい
)
して
容子
(
ようす
)
を
瞥見
(
べっけん
)
し、或る晩は
軒下
(
のきした
)
に忍んで障子に映る姿を見たり、戸外に
洩
(
も
)
れる声を
窃
(
ぬす
)
み
聴
(
き
)
いたりして、この女の態度から
起居振舞
(
たちいふるまい
)
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
半蔀几帳
(
はじとみきちょう
)
の屋内より出でて、忽ち
築地
(
ついじ
)
、
透垣
(
すいがい
)
の外を
瞥見
(
べっけん
)
する心地する。
『新訳源氏物語』初版の序
(新字新仮名)
/
上田敏
(著)
吾々はまず肯定的批判を
瞥見
(
べっけん
)
して後、否定的批判を見よう。
人口論:00 訳序/凡例/解説/序言/前書
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
ヘルモン山頂の変貌はその
瞥見
(
べっけん
)
でありました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
このスウプを
瞥見
(
べっけん
)
するや否や
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
垣間
(
かいま
)
見ることができ、
瞥見
(
べっけん
)
することができるならば、彼女らはすべてを捨てて顧みず、すべてを冒し、すべてを試みたであろう。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかし自分が最近に中央線の鉄道を通過した機会に
信州
(
しんしゅう
)
や
甲州
(
こうしゅう
)
の沿線における暴風被害を
瞥見
(
べっけん
)
した結果気のついた一事は
天災と国防
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この機をはずすととうてい目的は達せられぬと、ちらつく両眼を無理に
据
(
す
)
えて、ここぞと思うあたりを
瞥見
(
べっけん
)
すると女が四人でテニスをしていた。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は彼を公判延で
瞥見
(
べっけん
)
した時に、彼を倒さないまでも、セメて恨みの一撃を与えなかったことを今更痛切に後悔します。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
倦
(
う
)
んじ疲れて、
懈怠
(
けだい
)
の心が起ろうとする時、頭をもたげて燈光の中に先生の黒い
痩
(
や
)
せたお顔を
瞥見
(
べっけん
)
すると、いまにも
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
オリヴィエの心の中に
瞥見
(
べっけん
)
したものから、彼女がことに
狼狽
(
ろうばい
)
させられた訳は、ちょうどそのころ彼女は、ある男子連の追求を苦しんでいたからである。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
チラリと新聞で「ナップ」解散の報道を
瞥見
(
べっけん
)
したばかりの時であったし、誰かからもっとはっきり状況についての説明を聞くということも不可能な環境であったから
鈍・根・録
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「私は
瞥見
(
べっけん
)
しただけで正確のところは云われませんが同一のものらしく見えました」
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
高麗丸船上から、この朝、私たちが
瞥見
(
べっけん
)
した、あの
濛々
(
もうもう
)
たる黒煙を吐いていた五、六本の大煙突の立つ真岡工業会社の内部に、私たちは今まさに、
兢々
(
きょうきょう
)
然たる胎内
潜
(
くぐ
)
りをやっているのだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
この詩を
瞥見
(
べっけん
)
すれば、抽斎はその貧に安んじて、
自家
(
じか
)
の
材能
(
さいのう
)
を父祖伝来の医業の上に施していたかとも思われよう。しかし私は抽斎の不平が二十八字の底に隠されてあるのを見ずにはいられない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
かつ全部の作曲家を
網羅
(
もうら
)
することは、本書の
企
(
くわだ
)
てにおいては無意味に属するので、それらの大部分は歌劇作曲家並びに現存作曲家の全部と共に、ことごとく本記に
割愛
(
かつあい
)
し、ここに音楽史的に
瞥見
(
べっけん
)
して
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
……さうした一切がほんの一瞬間の
瞥見
(
べっけん
)
であつた。
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
彼は不思議な境地を
瞥見
(
べっけん
)
した。そして適当な視点に置いてそれらを見なかったので、何だか
渾沌界
(
こんとんかい
)
を見るような心地だった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
“瞥見”の意味
《名詞》
瞥 見(べっけん)
ちらりと見ること。短時間で目を通すこと。
(出典:Wiktionary)
瞥
漢検準1級
部首:⽬
17画
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
“瞥見”で始まる語句
瞥見致候