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獅噛
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しが
ふりがな文庫
“
獅噛
(
しが
)” の例文
すると、
山善
(
やまぜん
)
という薬問屋の店に、一人の侍が、編笠をかぶったまま、買物をしていた。侍は、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
獅噛
(
しが
)
み火鉢に片手をかざして
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
端つこに立つて居た八五郎は、側に居た若い女に
獅噛
(
しが
)
みつかれて、一とたまりもなく船の外へ、横つ倒しに飛び出してしまつたのです。
銭形平次捕物控:222 乗合舟
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お品は矢のように起上ると防火扉の閂にかかった監督の腕に
獅噛
(
しが
)
みついた。激しい平手打が、お品の頬を灼けつくように
痺
(
しび
)
らした。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
それでまた屁ッぴり腰をして樽の上に
蹲
(
かが
)
み、そして車からふりおとされないために顔を真赤にして一生懸命荷物台に
獅噛
(
しが
)
みついた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
残雪が
獅噛
(
しが
)
みついてるのが、手にとるように見える、麓は樅の密林で、その山の裾と、高原にはさまれた、トゥーンの水はまだ見えない。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
▼ もっと見る
泥まみれの着物で
獅噛
(
しが
)
み着いて周囲の人々をびっくりさせたが、帰りには彼女が流れの先頭を切って、貞之助を
庇
(
かば
)
うようにしながら行った。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
JANYSKA と刻印した空色のマークの横に、黒と金色のダンダラになった細長い生物がシッカリと
獅噛
(
しが
)
み付いている。
けむりを吐かぬ煙突
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
(重兵衛は唄を聴いている。太吉は
顫
(
ふる
)
えながら父に
獅噛
(
しが
)
み付いている。やがて重兵衛は立って、
下
(
しも
)
のかたの窓から覗く。)
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しがと、止めたり——平は、馬の頸に、
獅噛
(
しが
)
みついて、滑り落ちるように、飛び降りると、びゅーんと弾丸の唸りを聞いた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
さういふ不具の手を慣して器物を扱つてゐるので、一応は何気なく見えるが、よく見ると手首は器物に
獅噛
(
しが
)
みついてゐた。まるで
餓鬼
(
がき
)
の執著ぢや。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「この頃は書きつづけですからね。何時間も
卓子
(
テーブル
)
に
獅噛
(
しが
)
みついた後では、こうして親しいお友達の前へ出ても、何だか頭がぼうっとしているようです」
ふみたば
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
年期はあけても食えなければ、いつ
迄
(
まで
)
も
噛
(
かじ
)
り付き、
獅噛
(
しが
)
みつき、死んでも離れない
積
(
つもり
)
でもあった。所へ突然朝日新聞から入社せぬかと云う相談を受けた。
入社の辞
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長庵とはおやじの幸兵衛が
交際
(
つきあ
)
っていて幸吉も
識
(
し
)
っているので、山城守に挨拶することも忘れて、いきなり、長庵に
獅噛
(
しが
)
みつくようにして言ったのだった。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ところが打たれた若者は、彼に腕を掴まれると、血迷った眼を
嗔
(
いか
)
らせながら、今度は彼へ
獅噛
(
しが
)
みついて来た。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
小さい叫び声と共に初子はよろよろと倒れかかり、管理人の腕に
獅噛
(
しが
)
みついた。人々の眼は彼女に集った。
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
どうして
何時迄
(
いつまで
)
も過去を夢見て——あった日の貧弱な全盛に
縋
(
す
)
がって、
獅噛
(
しが
)
みついてなんかいるのだろう?
奥さんの家出
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
わたしはわたしだ、どうしてもわたしだ。わたしのほかにわたしなんかありはしない。わたしはわたしに
獅噛
(
しが
)
みつこうとした。わたしは縮んで固くなっていた。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
三ツの声も聞かぬ内に警官は一斉に
撃放
(
うちはな
)
すや否や、オールに
獅噛
(
しが
)
み付いて、敵艇を突くまでに力漕した。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
……それを縄で
括
(
くく
)
って流すまいとするその大混雑……
其所
(
そこ
)
へ、河岸へ火が出て来て猛火に
煽
(
あお
)
られ、こげ附くようになりながら、浮き上がった荷物の上へ、
獅噛
(
しが
)
みつき
幕末維新懐古談:15 焼け跡の身惨なはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼女は一層深く彼の胸に顏を埋め、
獅噛
(
しが
)
みつくやうにして肩で息をし乍ら
猶
(
なほ
)
暫らく
歔欷
(
すゝりなき
)
をつゞけた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
と急いで帰らうとするのを二三人の奴がばらばらと追つかけてきて足をひつぱつてひきずり落さうとしたので私は頸つたまに
獅噛
(
しが
)
みついて火のつくやうに泣きだした。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
私達は双眼鏡に
獅噛
(
しが
)
みついて、三階の窓と、そこに張り出ているヴェランダを発見して狂喜した。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
われわれは、それを、彼がこれから必死な試みをしようとしているという意味にとった。彼は橋の突端に立ち上ると、ひと跳躍で向うの鞍部へ飛び、その岩に
獅噛
(
しが
)
みついた。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
千鈞
(
せんきん
)
の重さで、すくんだ
頸首
(
くび
)
へ
獅噛
(
しが
)
みついて離れようとしません、世間様へお附合ばかり少々櫛目を入れましたこの
素頭
(
すあたま
)
を
捻向
(
ねじむ
)
けて見ました処が、何と拍子ぬけにも何にも
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
転落を怖れる私をその
鬣
(
たてがみ
)
に
獅噛
(
しが
)
みつかせたりするというような怖ろしい状態になって来た。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
はずみを付けて右の足を引けば左の手だけは上の階段に懸けられそうに想える、
併
(
しか
)
し外れたら事だ。仕方がないから大の字になって岩に
獅噛
(
しが
)
み付いたなり「駄目だ」と怒鳴る。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
壮太は怪しい自動車の後ろに、
獅噛
(
しが
)
みついていた。自動車は闇の中をひた走りに走った。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
先ず助け起こし長椅子へ
息
(
やす
)
ませようと思い、其の手を取るとお浦は溺れる人の様に余の手に
獅噛
(
しが
)
み附き、身体の重みを余の腕に打ち掛けた、余は彼の書斎でお浦が紛失した少し前に
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ですから、一日中母の眼を避けて、父は
紡車
(
つむぎぐるま
)
に
獅噛
(
しが
)
みついていたのでしたわ。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
一生懸命
巌
(
いわ
)
に
獅噛
(
しが
)
み付いて、ようよう命を
陥
(
おと
)
さずに済んだそうである。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
お篠はいきなり浅田に
獅噛
(
しが
)
みついた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
鉄格子と金網の窓に
獅噛
(
しが
)
みつき
檻の中
(新字新仮名)
/
波立一
(著)
……その膝っ小僧の曲り目の処へ、小さなミットの形をした肉腫が、血の
気
(
け
)
を無くしたまま、シッカリと
獅噛
(
しが
)
み付いている。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
(おつやが「このお客様」と云った時、太吉はまた
悸
(
おび
)
えておつやに
獅噛
(
しが
)
み付く。おつやも気がついて、旅人をみかえる。)
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
岩の
透
(
す
)
きまに
獅噛
(
しが
)
みついた、サクシフラガ Saxifraga の、星のような花をまたいで、十五分も登ると、立派な小屋の裏手に出た。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
ともすると、鼻の先がびッしょり汗ばんで、
眩暈
(
めまい
)
がしそうになるのを、ジッと耐えて、
事務卓
(
デスク
)
に
獅噛
(
しが
)
みついていた。
花束の虫
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
あとはもう言葉も成さぬ様子で、血だらけの娘の死骸に
獅噛
(
しが
)
み付いたまま、ヒイ、ヒイ動物のような悲鳴をあげながら、ワナワナとふるえているのです。
銭形平次捕物控:086 縁結び
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
寛之助は、熱い額を、頬を、七瀬の肌へ押しつけて、
獅噛
(
しが
)
みついていた。寝かせようと、下へ置こうとすると、
咽喉
(
のど
)
の奥から叫んで、置かれまいとした。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
亀のようなもののお尻がすこし動いたが、幹にぴったりと
獅噛
(
しが
)
みついているのか、離れない。あまり向うが泰然としているので、武夫は癪にさわってきた。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自分は悦んでそれを肯んじながら、また危機の本能によって衝動的に抵抗もしている。また一面の鏡は、老女二人の生活に
獅噛
(
しが
)
み付かれている自分である。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
不安そうに苦い顔をしていた彼が、産婆から少し手を貸してくれといわれて産室へ入った時、彼女は骨に
応
(
こた
)
えるような恐ろしい力でいきなり健三の腕に
獅噛
(
しが
)
み付いた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と思うと、その煙の向うにけたたましく何か
爆
(
は
)
ぜる音がして、
金粉
(
きんぷん
)
のような
火粉
(
ひのこ
)
がばらばらと
疎
(
まば
)
らに空へ舞い上りました。私は気の違ったように妻へ
獅噛
(
しが
)
みつきました。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は古びたオーバーを着込んで、「寒い、寒い」と
顫
(
ふる
)
えながら、生木の
燻
(
くすぶ
)
る
火鉢
(
ひばち
)
に
獅噛
(
しが
)
みついていた。言葉も態度もひどく弱々しくなっていて、
滅
(
めっ
)
きり老い込んでいた。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
怒濤の
咆哮
(
ほうこう
)
。風の
号泣
(
ごうきゅう
)
。海鳥の叫声。火を噴く山。それから、岩に
獅噛
(
しが
)
みついたわずかばかりの羊歯と
腕足類
(
カマロフォリヤ
)
。そのほかに、何ひとつない、地底の海の、荒涼たる孤独の島。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼の歩いているその辺はどうやら富士も五合目らしく、その証拠には木という木がほとんど地面へ
獅噛
(
しが
)
み付いている。そうしてその木の種類といえば
石楠花
(
しゃくなげ
)
、
苔桃
(
こけもも
)
の類である。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
雷鳴は左程ひどくもなかったが、岩に
獅噛
(
しが
)
みついて崖の中途を蝸牛のように這い上っていた私は、叩きすくめられたように立ち留って、岩を伝う滝の如き雨水を頭上から浴びた。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
窓へ
獅噛
(
しが
)
みついてみたり壁を押してみたり、
畳
(
たたみ
)
へバリバリ爪を立ててみたり。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それで、あたしはもう夢中になつて、タイキ、待つてお呉れよ/\御免よ! なんていふ悲鳴(笑ひごとぢやなかつたわ!)を挙げて、夢中で意地悪なタイキの鬣に
獅噛
(
しが
)
みついてしまつたの。
〔婦人手紙範例文〕
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
とまた
差俯向
(
さしうつむ
)
く肩を越して、按摩の手が、それも物に震えながら、はたはたと
戦
(
おのの
)
きながら、背中に
獅噛
(
しが
)
んだ
面
(
つら
)
の
附着
(
くッつ
)
く……門附の
袷
(
あわせ
)
の
褪
(
あ
)
せた色は、
膚薄
(
はだうす
)
な胸を透かして、
動悸
(
どうき
)
が筋に映るよう、あわれ
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
婦人はこの時狂気のごとく、やにわに彼の両肩に
獅噛
(
しが
)
み
付
(
つ
)
いた。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
獅
漢検準1級
部首:⽝
13画
噛
漢検準1級
部首:⼝
15画
“獅噛”で始まる語句
獅噛火鉢
獅噛面
獅噛付
獅噛附