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猿轡
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さるぐつわ
ふりがな文庫
“
猿轡
(
さるぐつわ
)” の例文
こちとらの大家
様
(
さん
)
が高い家賃を取上げて
適
(
たまさか
)
に一杯飲ます、こりゃ何も
仁
(
なさけ
)
じゃねえ、いわば
口塞
(
くちふさぎ
)
の
賄賂
(
まいない
)
さ、
怨
(
うらみ
)
を聞くまいための
猿轡
(
さるぐつわ
)
だ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
教授に逢って二三世間話をし、その間に貴様が教授の
声色
(
こわいろ
)
や癖を研究する。それから突然二人で教授を縛り上げて
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかませる。
稀有の犯罪
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
と驚く
隙
(
すき
)
もありません。
漸
(
やうや
)
く解いてもらつた繩をもう一度掛け直したばかりでなく、今度は念入りに
猿轡
(
さるぐつわ
)
まで噛ませて引摺り上げます。
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
川手氏は長椅子に横たわったまま、身体中をグルグル巻きにされて、固く長椅子に
縛
(
しば
)
りつけられていた。その上、口には厳重な
猿轡
(
さるぐつわ
)
だ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
クラネクとベルセネフの二人は、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかまし両手を縛った女を林の中へ運んで往った。女はベルセネフの肩にかつがれていた。
警察署長
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
私は
先刻
(
さっき
)
、被告人に有利に疑を挿んだ時申す事を落しましたが、道子が
猿轡
(
さるぐつわ
)
ようのものをはめられて居た形跡はまったくなかったのです。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
早く云うと、帆村君は、紅子を
昏睡
(
こんすい
)
状態に陥し入れ、その側へ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をした鬼川を連れて来、紅子を通じて、鬼川の秘密を探らせたのです
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
範覚のやった
所業
(
しわざ
)
なのであろう、両手両膝をしばられて、
猿轡
(
さるぐつわ
)
までかまされた浮藻の姿が、痛々しくその奥に
横仆
(
よこた
)
わっていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうして、その肉体は明らかに「強制的の結婚」によって
蹂躙
(
じゅうりん
)
されていることが、その唇を隈取っている
猿轡
(
さるぐつわ
)
の
瘢痕
(
あと
)
でも察しられるのでした。
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
辰馬久は目隠しをされ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめられ、両手を縛られていた。シークな彼が、この時位物哀れに見えたことはなかった。
黒猫十三
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
まさか、父親の圭一郎を投げ倒して
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかませ、眼球が飛び出すほど
喉吭
(
のどぶえ
)
を締めつけるやうなことはしもしないだらうが。彼は氣が銷沈した。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
金庫のそばには、五十四五位に見える、痩形の、
顔面骨
(
がんめんこつ
)
の尖った、前頭部の禿あがった男が、両手をしばられ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめられて倒れていました。
祭の夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「あの女が、おれのことばに、なんというかあわからないが、もしジタバタするようだったら、
猿轡
(
さるぐつわ
)
にかごという支度よりほか仕方があるまいな」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と云う者がある、——見ると、後手に
縛
(
いまし
)
められたまま、
猿轡
(
さるぐつわ
)
を外して、髪を振乱した女……思いもかけぬ町であった。
松林蝙也
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と、小門の入口のところで二人の巡査が目隠しをされ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
を嵌められて、細縄で縛られているのを見つけた。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
そこへ善兵衛も上がって来まして、泣き声が近所へきこえては悪いというので、お定に
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはませて、押入れのなかへ監禁してしまったのでございます。
蜘蛛の夢
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
つと侍が身をどかすと、狭い一間の行燈のそばに、閑山と飯たき久七、二人ともぎりぎりにしばり上げられて、おまけに
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかまされてころがっている。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
猿轡
(
さるぐつわ
)
と申して口の中へ何か小さい
片布
(
きれ
)
を押込み、其の上を手拭にて堅く
結
(
しば
)
り、島田髷はガックリと横に曲り、涙が伝わって襦袢の半襟が濡れて居りまする。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
息子は、信じなかったけれ共、あんまりせめられ様がひどいので、取りのぼせて、自分で
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめて、姑の床のすぐ目の前で、夜中に喉をついて仕舞った。
栄蔵の死
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
まず、醜言症を聴かせぬためマヌエラには
猿轡
(
さるぐつわ
)
をし、ドドを連れて、そっと一同が小屋を忍びでたのである。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
手足こそ縛られているけれども、いっこう
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
箝
(
は
)
められた模様もないのに、口を利かないのはなぜだろう。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
遠くにあって、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめられ、手足を縛られ、
痲痺
(
まひ
)
してるようだった。その力が何を望んでいるのか、やがて何になろうとするのか、彼には想像もつかなかった。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「どれ、俺は出掛けるとしよう。俺が帰って来るまで昼寝でもしているが可い」といいながら、手早くビアトレスに
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめて、部屋に続いた奥の寝室へ引立てた。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
すっぼり頭からくるんどかないと、今日びの物々しい戒厳では、一寸、仕事がむずかしいからな。あのカーキ服の歩哨に
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめた女が見つかった日にゃ最後だよ。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
うさんな
奴
(
やつ
)
らに取り巻かれた時にゃあ、少しは騒ぎ立てるのがあたりまえだ。お前さんが声を立てたにしろ、それでどうしようっていうんじゃねえ。
猿轡
(
さるぐつわ
)
さえもはめはしねえ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そうして彼が大声をあげないさきに
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめて、寝台の下にしばりつけてしまった。医者はデッキへ通じるドアを鍵をかけないでおいたので、私たちはそこを通って躍り出した。
グロリア・スコット号
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
見るに身は
細引
(
ほそびき
)
にて縛られ口には猿轡を
箝
(
はめ
)
てあり友次郎は見も悼ましく
先
(
まづ
)
縛
(
しば
)
りし繩を
解捨
(
ときすて
)
猿轡
(
さるぐつわ
)
をも
取
(
と
)
り
除
(
のく
)
るに
解
(
とく
)
手遲しとお花は友次郎に
抱付
(
いだきつき
)
流石
(
さすが
)
に餘處を兼しか聲をも立ず泣けるを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
迷亭の駄弁もこれで一段落を告げたから、もうやめるかと思いのほか、先生は
猿轡
(
さるぐつわ
)
でも
嵌
(
は
)
められないうちはとうてい黙っている事が出来ぬ
性
(
たち
)
と見えて、また次のような事をしゃべり出した。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お望みとあらば太洋に
猿轡
(
さるぐつわ
)
かませ
給
(
たま
)
ふも
儘
(
まま
)
なのを気が付かないで。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
たつ奴も立つ奴も中止——中止——口に
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかませるのだ
死ぬる迄土地を守るのだ
(新字新仮名)
/
今村恒夫
(著)
「栄ちゃん、此奴の帯を解いて
猿轡
(
さるぐつわ
)
を篏めておやり」
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これが私を殺すのです——と云って、
置処
(
おきどころ
)
のなさそうな顔を
背
(
そむ
)
ける。
猿轡
(
さるぐつわ
)
とか云うものより見ても
可哀
(
あわれ
)
なその
面縛
(
めんばく
)
した罪のありさまに
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
男がやゝ氣を取直したときは、自分の帶でメチヤ/\に縛られ、丁寧に
猿轡
(
さるぐつわ
)
まで噛まされて、林の中の薪小屋に抛り込まれて居りました。
銭形平次捕物控:283 からくり屋敷
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
当夜
(
とうや
)
例のとおり、研究室内に泊っていた筈だが、どうしていたかと云うと、赤外線男のために、もろくも
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめられ両手を
後
(
うしろ
)
に
縛
(
しば
)
られて
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
おお、そこに
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかけられて、
縛
(
いまし
)
められている女の影は、まさしく、あの夜から行方の知れなくなったお延である。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うしろ手に縛りあげ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
噛
(
か
)
ませた渡辺蔵人を
伴
(
つ
)
れ、万三郎はかよを抱いていた。伝次や秀と交代しながら、ずっとそうして抱いて来たのであった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夕方叔父の屋敷から出て、隅田の流れを見ていると、突然背後から
猿轡
(
さるぐつわ
)
を噛まされ、おりから走って来た駕籠に乗せられ、誘拐されたということである。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
全身をぐるぐる捲きに縛られた上に、顔全体を隠す様な、
巾
(
はば
)
の広い布の目隠しをされ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
さえはめられている。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
銀次の背中には、細引でグルグル巻にして、黒い覆面で
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめた小女を
担
(
かつ
)
いでいたが、そのまま月の沈んだ薄あかりの道をスタスタと町の方へ急いだ。
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は子供をしっかと
上衣
(
うわぎ
)
に
包
(
くる
)
んで、ひしと抱きしめながら、
絹半巾
(
きぬハンケチ
)
を丸めて早速の
猿轡
(
さるぐつわ
)
とし三階へ駈け上った。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
裏口の戸を叩いたのは浅井の仲間か手下で、なに心なく出て行ったお角さんに
猿轡
(
さるぐつわ
)
でも嵌めて担ぎ出したのでしょう。お豊さんの方は運よく助かったわけです。
怪談一夜草紙
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
小田刑事は、思わず「あッ」と叫んで、二人のそばにかけより、二人の縄を解き、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはずしました。
深夜の電話
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
其の次の間に、年齢十六七の娘が縛られ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかけられて声も出す事が出来ませんで、唯涙をはら/\
零
(
こぼ
)
して、島田髷を振りみだし、殊に
憫
(
あわ
)
れな姿でおります。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめられて、引転がされているところに、
頬冠
(
ほおかむ
)
りした二人の兇漢が、長いのを畳へつきさして、
胡坐
(
あぐら
)
を組んで脅迫の
体
(
てい
)
は、物の本などで見る通りの
狼藉
(
ろうぜき
)
です。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
島田家の物置から、ほんものの甲刑事が後ろ手にしばられて、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめられて発見されたという報告が、溝川署へついたのは、それから五分もたたぬうちでありました。
祭の夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
手足を縛られ
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめられて
溺
(
おぼ
)
らせられてるかのようで、身をもがいてはまた底のほうへ沈んでいった。——ついに夜明けとなった。雨の日の遅々とした灰色の
曙
(
あけぼの
)
だった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「やかましい」と怒鳴りつけて、それから
皆
(
みんな
)
に、「さあ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめさっしゃい」
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
哀れな奴等の
猿轡
(
さるぐつわ
)
だ
歩哨戦
(新字新仮名)
/
今村恒夫
(著)
「内君、いろいろなことを言ってきのどくだけれど、私の出たあとで声を立てるといけないから、少しの間だ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
箝
(
は
)
めてておくれ」
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
土蔵のツイ側、ガラクタを入れた物置の
梁
(
はり
)
に、両腕を縛った上、
猿轡
(
さるぐつわ
)
まで噛まされた十五六の娘が、高々と吊されているのです。
銭形平次捕物控:009 人肌地蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“猿轡”の解説
猿轡(さるぐつわ、英: gag)とは、声をたてさせないために布などを口に押し込んだり、かませたりするもの。
(出典:Wikipedia)
猿
常用漢字
中学
部首:⽝
13画
轡
漢検準1級
部首:⾞
22画
“猿”で始まる語句
猿
猿臂
猿股
猿若町
猿楽
猿猴
猿蓑
猿公
猿廻
猿楽町