“漠:ばく” の例文
“漠:ばく”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治13
永井荷風2
江戸川乱歩2
堀辰雄2
夏目漱石2
“漠:ばく”を含む作品のジャンル比率
哲学 > 倫理学・道徳 > 人生訓・教訓12.5%
文学 > 文学 > 叢書 全集 選集9.5%
文学 > フランス文学 > 詩3.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
ただ遠くの方にある一種の不安が、僕の身体からだを動かしに来たというばくたる感じが胸にしたばかりであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
漫然国民性を描けといふ、しかも其の意義其の根拠をたづね来たれば頗るばくたるものあり。れを解して、
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
世間だの世評だのということは、はなはだばくとしたことで、ために一身を処するとか、あるいは思想を変えるとかする価値なきものと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これが都合よく参りませんものですから、私の立身を堅く信じながらも、ただそれはばくとしたことで、実は内々ひどく心痛したものと見えます。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかるにこの観念かんねんははなはだばくとしているゆえ、前述のごとく自己の認識にのぼらぬのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それも加藤とか、池田とか、浅野、福島などといえば、武蔵にも、二十二歳の青年なみの観察は持っているが、伊達などというと、もうばくとして、
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悪人か善人か、頼朝には判断もつかなかった。彼はただばくとして、身の運命を、鵜匠の男に託していた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
職務的にきまじめな謹直さと、さらにばく然とした、さらに激しい衝動との婚姻が、ひとりの芸術家を、しかもこの特殊な芸術家を生み出したのであった。
ばくとして山も樹木も見えない、ただ西の方に夕照ゆうでりの光だけがボッと虹色を立てている。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂の中途に立ち止まって、汗ばむ胸へ手拭を入れた。そこからはるかに見渡すと、ばくとした雲の海に加賀の白山はくさん群巒ぐんらんをぬいて望まれる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、ばくと、感動し、漠として、百姓以外の天地と生存を考え、青梨村の家へ、帰るまでに、
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
医者に云わせると、色々肉体上の徴候もある様ですが、それとても実にばくとしたもので、発作が伴って初めて決せられる程度のものだというではありませんか。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それであればこそ、画竜点睛がりゅうてんせいとも云うべき肝心かんじん刹那せつなの表情が、どう想像してもばくとして眼の前に描き出せないのだろう。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんなばくとしたご不安からではなかった。ぎすました理知のもとに、今明日が、ここの運命を一転する妙機かと、ひそかに、息をつめておられたのである。
それから、よろいですが、これはばくとしてほとんど拠所よりどころがありません。
平気で人間を殺すものだというようなばくとした観念が幼少からみついているので
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は来訪者のうえにばくとした視線を置いたが、注意がそこにあるとは見えないのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
戦報も次第にばくとして来ている。半蔵が西から受け取る最近の聞書ききがきには、戦地の方の正確な消息も一向に知らせて来ない。それがひどく半蔵を不安にしている。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
予は少しも隠そうとはしなかった、その悪徳と美徳とを、その重苦しい悲哀を、そのばくとした高慢を、その勇壮な努力を、また超人間的事業の重圧の下にあるその憂苦を。
してまたばくたるなでさすりで、わたしを存分ぞんぶんいておくれ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
勿論この推定はばくたるもので、何等確実なる証拠がないが、常識からいって
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
それは妻の出生にまでさかのぼって、失われた時間を、心のなかに、もう一度とりかえしたいような、ばくとした気持からだったが、その妻の生れた土地ももう間近にあった。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)
そんな風に、私がちょっとでも彼女からはなれている間に、私なしに、彼女がこの村で一人きりで知り出しているすべてのものが、私にばくとして不安をあたえるのだった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
五郎もばくたる平蕪へいぶや並んでいる模型じみた飛行機が想像出来た。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
しかし、沢庵は、相変らずばくとした顔つきを焚火たきびにいぶして、
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばくとした言葉のままいえば、力や天佑以上のものである。小次郎が信じていたものは、技や力の剣であり、武蔵の信じていたものは精神の剣であった。それだけの差でしかなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ばくとした希望に、さまざまな妄想を描きながら行くのだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とらえどころのないばくとした凄気せいきを身に受けた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そして私はいつもおばあさんが木蔭こかげなどにしゃがんだまま、物静かに、何かばくとした思い出にふけっているそばで、おとなしく鴎の飛ぶのを見たり、石の牛を撫でたりしていた。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
よるのやうなばくとした憂愁の影に包まれて、色と音と薫香くんかうとの感激をもて一糸を乱さず織りなされた錦襴きんらんとばりの粛然として垂れたるが如くなれと心に念じた。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
こう判断していた兵がまだ大部分であったろう。ばくとして、
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そういう折、なぜおぬしは、その人間の底の底まで、じっと考えてみないのか。ばくと聞いて、漠とのみこんでしまう。そして自分の墓穴でも掘る勇気をふるい出す。怖いのう。おぬしの勇気は」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敦賀津つるがづの港でもありません、三国港でもありません、甚だばくとしていますが、確かにあの辺の海浜です、煙草色の帆を張った南蛮ぶねは、お蝶をのせて白い海波の果てに消えたのです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不注意な一瞥いちべつはそのばくたる陰影を侵害する。
訊ねると、番頭の答えはまた、甚だばくとしたもので、
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だがね、理想といふものは、あまりばくとしてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
二 であるからこの頃の歴史には面白い事が少しも無い。面白いのはもうばくたる太古の霧に包まれ、よく分からぬほど以前の蛮族時代、人と人とが武器を以て戦争し、命の遣り取りをした頃の記事のみだ。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
けれど無数の書名は、じっさいには、ほんとの太平記の内容とは、何のかかわりもなく、ただその“太平”ということばの持つ広さやばくとした思わせぶりに仮托かたくしたものが大部分であるといってよい。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暗い色はばくとしているだけだ。
抜髪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ばくとしたおとこ——)
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ばくとして考えた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、これが屡々しばしばはなはだ屡々、この世に起っていることは、少し物の分る人には否定出来ない所である。死と生とを分つ境界は、たかがばくとした影である。どこで生が終り、どこで死が始まるのだか、誰が定めることが出来よう。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さて坂を下りつくすと両側に居並ぶ駄菓子屋荒物屋煙草屋たばこや八百屋やおや薪屋まきやなぞいずれも見すぼらしい小売店こうりみせの間に米屋と醤油屋だけは、柱の太い昔風の家構いえがまえが何となく憎々しく見え、ばくとした反抗心を起させます——といってそれは社会主義なぞいう近代的の感想ではない。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)