おさ)” の例文
六十×年八月八日 最小限生活に追いこまれあり、食慾ことのほか興奮して、おさめるのに困難を感ず、非常時ゆえ、仕方なけれど……。
「人格者だ。十年も動かない校長は滅多にない。よくおさまっているんだ。そんな筈じゃないんだが、奴その後修養したのかも知れない」
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「このくにはわたしのおさめている土地とちで、あなたにしてげる場所ばしょといって、ほかにありません。ではうみの中をしましょう。」
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
争議起これば、今日こんにちはこれをおさむるために相応そうおうの法定機関がある。これによりて是非曲直ぜひきょくちょくを判断すべく、みだりに腕力を用うることを許さぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かさねて申しあぐるが、仰せらるる将来の大計、いわゆる天下の事は何とせられても、中国をおさめて後、初めて成るものではございますまいか。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家庭の生涯しょうがいはむしろ女房の生涯である。道也は夫の生涯と心得ているらしい。それだからおさまらない。世間の夫は皆道也のようなものかしらん。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よしんばその地に家はあっても留守るす番だけを置いて自分達はラサ府に居る。そうかと思うと政府から命令を受けてある郡をおさめに行く者もある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
じぶんのおさめる王国のこと、いつかはじぶんが上に立つはずの人民じんみんたちのことをおもって、えんりょしたのです。
御辺の行跡何とも無分別むふんべつに候、行末何になるべき覚悟に……弓馬は男の業也わざなり器用も不器用も不入候可いらずそうろうべく稽古事也、国をおさむ文武二道なくては更にかなうべからず候
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
先生がさんおさむる事をやめられてから、一家の主人役に立たれたあなたが、児孫じそんの為に利益を計り権利を主張し、切々せっせと生活の資を積む可く努められたのも
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして、集会しゅうかい時刻じこく太陽たいようのまわりぐあいできめましたために、みんなは、またむかしのように一して、いつとなく、むら平和へいわおさまったということであります。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それ大君は、上古伊弉冊尊いざなみのみこと、天日を請受こいうけ、天照大神あまてらすおおみかみを生み給い、この国の君とし給いしより、天地海山よくおさまりて、民の衣食住不足なく、人の人たる道も明らかになれり。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
信玄公は、智略において第一、惜しいことに人情に乏しい、民をおさめることは上手であったにかかわらず、その徳が二代に及ばず、その術が甲斐信濃以上に出づることができなかった。
山「姉さんおさまったかえ」
砂塵は、いつまでたっても、おさまる模様がないので、彼は再び舗道へのぼり、気球隊の通りすぎた後を、ぼつぼつと歩きだした。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
社会が一定の秩序ちつじょもとおさめられ、腕力のみをもって優劣を定めることをめて以来、理屈の最も分かるものが社会で勝利を得ることになった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しょせん、都の朝令や、古い国司の制などで、よくおさめうるものではなく、それは、明け暮れの騒乱や訴訟にみても、よくおわかりかと存じまするが
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがてふたりは、王女のじぶんのうちでもあるし、また王女としておさめてもいる国へやって来ました。
だからわたし達が一番いと思ふのを、だまつてもらへば、夫で何所どこ彼所かしこも丸くおさまつちまふから、——だから、御父おとうさんが、殊によると、今度こんどは、貴方あなたに一から十迄相談して
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
人間にんげんというものは、だれにでもしんせつにするものだ。みんなが、そうこころがつきさえすれば、なかはいつもまるおさまるのだ。」というようなことをみちすがら、おじいさんは
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして魔神宗介様は多数の眷族けんぞくを従えられ、いよいよ益〻ますます人間に向かって惨害をお下しなされるうち、世はややおさまって信長のぶなが時代となりさらに豊臣とよとみ時代となりとうとう徳川時代となった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
老人らが懇々こんこん吾人ごじんに身のおさめ方について説いてくれるときでも、この老いぼれめが維新前いしんぜんの話をしているわいと、馬耳東風ばじとうふうに聞き流すことが多い。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「お上のみこころをやわらげて、仰っしゃるような、公武一和にまろくおさめてゆきたいとのお考えがじつならば」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのせまらない顔色をはたで見ていたせいか、わくわくした宗助の胸もようやくおさまった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いけなかおさめるためにいっしょうけんめいであったのであります。
太陽とかわず (新字新仮名) / 小川未明(著)
いま養父勝家と筑前守との間さえ和せば、織田遺臣もまるおさまってゆき、ふたたび天下に大乱を見ることもあるまい。かみ御軫念ごしんねんを安んじ奉り、下万民のためだ。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歯痛しつうおのずからおさまったので、秋におそわれるような寒い気分は、少し軽くなったけれども、やがて御米が隠袋ポッケットから取り出して来た粉薬を、ぬるま湯にいてもらって、しきりに含嗽うがいを始めた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
英時は、探題十余年の在職中、おさめ難いこの九州諸豪のうえにって、よくその平和を維持していたばかりでなく、庶民の評判もよく、その人柄はわけて皆から親しまれていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遅かれ早かれ鎌倉の府は、今にきっと、兵馬のちまたにならずにいません。あのままでおさまろうはずはありません。足利さまの御兄弟も、ひそかに、やがてを待っているのではありますまいか
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相互がこのせまい土地にひしめき合うていては紛糾沙汰ふんきゅうざたを増すばかりゆえ、義貞は上洛いたす……と。そしてあとは若御料わかごりょうがよしなにここをおさめ給えと、恩にきせて、申し告げてやったわけだ
「天下をおさむるの兵法をもって」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——これは、おさまる」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)