うぢ)” の例文
せい元來ぐわんらい身分みぶん分類ぶんるゐで、たとへばおみむらじ宿禰すくね朝臣あそんなどのるゐであり、うぢ家系かけい分類ぶんるゐで、たとへば藤原ふじはらみなもとたひら菅原すがはらなどのるゐである。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
秀吉ひでよしこころざしおほいなるも、一四七はじめより天地あめつちに満つるにもあらず。一四八柴田と丹羽にはが富貴をうらやみて、羽柴と云ふうぢを設けしにてしるべし。
「聞く人のかがみにせむを、あたらしき清きその名ぞ、おほろかに心思ひて、虚言むなことおやの名つな、大伴のうぢと名にへる、健男ますらをとも
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
志斐ノ姥が藤氏とうし語部かたりべの一人であるやうに、此も亦、この当麻たぎまの村の旧族、当麻ノ真人まひとうぢ語部かたりべだつたのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「この二筋の矢は、川の中に立つて半ばは浮いてゐたやうだ。伊豆屋の嫁と、本田うぢのお娘御を射たものだらう」
興世王や玄明を相手に大酒を飲んで、酔払つてくださへ巻かなかつたらば、うぢは異ふが鎮西ちんぜい八郎為朝ためとものやうな人と後の者から愛慕されただらうと思はれる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
幕府の蒔繪師に新銀町しんしろかねちやうと皆川町との鈴木がある。此兩家とうぢを同じうしてゐるのは、或は故あることかと思ふが、今にはかに尋ねることは出來ない。次で師岡は兄に此技を學んだ。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
幾度いくたびかかへりみておもへば、さてもはしたきことなり、うぢらず素性すじやうらず、心情こゝろだてなにれぬひとふとは、れながらあさましきことなり、さだめなきさだめなきひとたの
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして、うぢ中最も正系に属する人を氏上うぢのかみと称して尊信し、他を氏人うぢびとと言つたのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
聞畢きゝをはに女はうぢなくて玉の輿こしうんあれおもひの外の事もあるものと心の内に思ふ色を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
工場の苦力クリイ名札なふだ王と云ふうぢの多きを見ることも支那
ほまれのうぢを厭ひて
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
其にふるまひのおほどかなこと、若くからうぢかみで、数十家の一族や、日本国中数千の氏人から立てられて来た家持やかもちも、静かな威に圧せられるやうな気がして来る。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
むかし苗字めうじ武士階級ぶしかいきふ以上いじやうかぎられたが、維新いしん以來いらいしやう町人ちやうにんすべ苗字めうじゆるされたので、種々雜多しゆ/″\ざつた苗字めうじ出現しゆつげんし、苗字めうじうぢともせいともことになつて今日こんにちにいたつたのである。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
どんな立派なうぢ育ちの奧方も及ばないやうな、それは/\見事なものでした。
容貌きりやうが能く音羽小町と綽名あだなにさるゝ程にてあればうぢなくて玉の輿に乘る果報くわはう愛度めでたく其日消光くらしの賣卜者の娘が大家のよめに成なら親父殿まで浮び上り左團扇ひだりうちはに成で有らうと然ぬだに口やかましきは棟割長屋むねわりながや習慣ならひとて老婆もかゝも小娘もみな路次口に立集たちつどかしましと讀むじだらくの口唇くちびるかへ餞舌おちやつぴいねぐらもとむる小雀の群立騷むらだちさわぐ如くなり斯くとは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
南家で持つて居た藤原のうぢかみ職が、兄の家から弟仲麻呂の方へ移らうとしてゐる。来年か、再来年の枚岡ひらをか祭りに、参向する氏人の長者は、自然紫微内相のほか人がなくなつて居る。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
うぢも素姓もわかりませんが、近所の評判もよく、店舖みせも確かで、何んの仔細しさいもなく過してゐるうち、今から丁度一ヶ月前、ある夜曲者が忍び込んで、入口の六疊に休んでゐる市太郎老人を斬り殺し