母様おっかさん)” の例文
旧字:母樣
としてはおおきなものよ、大方猪ン中の王様があんな三角なりの冠をて、まちへ出て来て、そして、私の母様おっかさんの橋の上を通るのであろう。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
でもおあいにくさまだが吾家うち母様おっかさんはおまえの心持を見通していらしって、いろいろな人にそう云っておおきになってあるから
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
じゃあ吾家うち母様おっかさんの世話にもなるまいというつもりかエ。まあ怖しい心持におなりだネエ、そんなにきつくならないでもよさそうなものを。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
母様おっかさん!」といって離れまいと思って、しっかり、しっかり、しっかり襟んとこへかじりついて仰向あおむいてお顔を見た時、フット気が着いた。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母様おっかさん病気きいきいが悪いから、大人おとなしくしろよ、くらいにしてあったんですが、何となく、人の出入ではいりうちの者の起居挙動たちいふるまい、大病というのは知れる。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吾家うち母様おっかさんもおまえのことには大層心配をしていらしって、も少しするとおまえのところの叔父さんにちゃんと談をなすって
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そうして、(あんな母様おっかさん不可いけないのう、ここへ来い)と旦那が手でも引こうもんなら、それこそ大変、わッといって泣出したの。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母様おっかさんに逢いに行くんだ。一体、私のせなかんぶをして、目をふさいで飛ぶところだ。構うもんか。さ、手をこう、すべるぞ。」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「その母様おっかさんと云うのは、四十余りの、あの、若造りで、ちょいとお化粧なんぞして、細面ほそおもての、鼻筋の通った、何だか権式の高い、違って?」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はその時分は何にも知らないでいたけれども、母様おっかさんと二人ぐらしは、この橋銭で立って行ったので、一人ひとり前いくらかずつ取って渡しました。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人の悪い奴で御覧なさい、対手あいてが貴女の母様おっかさんで、そのお手紙が一通ありゃ、貞造は一生涯朝から刺身で飲めるんですぜ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「めのさんや。お前さんちょいと、お二階に来ていらっしゃるのはその河野さんの母様おっかさんじゃないか、気をお着けな。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴女あなたは仮にも母様おっかさん、恨みがましいことを申して済みませんでした。でももう神様も、仏様も、わたしを助けて下さらないから、母様どうぞ助けて下さい。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おいら父様おとっさんはなし、母様おっかさんくなったし、一人ぼッちで心細かったっけが、こんな時にゃあさっぱりだ、なさけなくも何ともねえが、てめえは可哀そうだな。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ものの懸念さに、母様おっかさんをはじめ、重吉じゅうきちも、嘉蔵かぞう呼立よびたてる声も揚げられず、呼吸いきさへ高くしてはならない気がした。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夢にも逢いたい母様おっかさんと、取詰めて手も足も震う身を、その婆さんと別仕立の乗合腕車のりあいぐるま。小石川さしちょうの貧乏長屋へ駈着かけつけて、我にもあらず縋りついた。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一体、母様おっかさんに懸合うはずなんだけれど、御病人だからお前さんだ、見なすったろう、嘉吉さんとこのなんざ、あのさわぎ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折から奥で衰えた声して呼んだのは、病の床にしているという母様おっかさん。この声を聞くと、愛吉は胸を折って、肩の中へうなじすくめて、口をむぐむぐと遣る。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寝る時、着換きかへて、とつて、むすめ浴衣ゆかたと、あか扱帯しごきをくれたけれども、角兵衛獅子かくべえじし母衣ほろではなし、母様おっかさんのいひつけ通り、帯をめたまゝで横になつた。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
狂言なの、お能なの、謡をうたうの、母様おっかさんに連れられて、お乳をあがっていらっしゃる方よりほか、こんな罪のない小児衆こどもしゅうのお客様がもウ一人ござんすか。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母様おっかさん、峰(幼名)か、と嬉しさのあまり、呼吸いきの下で声も出た。母親はその日絶えなむとする玉の緒を蝶吉の手につなぎ留められて、一たびは目を開いたが。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
火にやかれず、水に溺れずといったような好運があるようだ。すきなことが何でも出来るッて、母様おっかさんが折紙をつけて下すった体だよ、私が見ても違いはないね。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
内へ帰ると早速、夕餉ゆうげすまし、一寸ちょいと着換きかへ、糸、犬、いかり、などを書いた、読本どくほんを一冊、草紙そうしのやうに引提ひっさげて、母様おっかさんに、帯の結目むすびめトンたたかれると、すぐ戸外おもてへ。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夜になってとやへ入るのは何もかわったことはないけれど、何だかさみしそうで可哀相だねえ、母様おっかさんと二人ばかしになったって、お前、私が居れば可いじゃあないか。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしその机は、昔からここにある見覚えのある、庚申堂はじまりからの附道具つきどうぐで、何もあなたの母様おっかさんの使っておいでなすったのを、堂へ納めたというんじゃない。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やあ、めた、と云うと、父親おやじが遠慮なしに、おきぬさん——あなた、母様おっかさんの名は知っているかい。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それはね、坊ちゃん、あの何ですッて。あなたのね、母様おっかさんがおなくなり遊ばしたのを、御近所に居ながら鳴物なりものもいかがな訳だって、お嬢様が御遠慮を遊ばすんでございますよ。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、物理書をみんな読むとね、母様おっかさんのいるところが分るって、先生がそう言ったよ。だから、早く欲しかったの、台所にいるんだもの、もう買わなくともい。……おいでよ、父上おとっさん。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
織坊おりぼう母様おっかさん記念かたみだ。お祖母ばあさんと一緒に行って、今度はお前が、背負しょって来い。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃあね、おそくなりましたから今夜はお帰んなさいな。母様おっかさんがお案じだろうから。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母様おっかさんによくた顔を、ここで見るのは申訳がないといって、がっくり俯向いて男泣おとこなき
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は私の父親おとっさんは、中年から少し気が違ったようになって、とうとうそれでおなくなりなすったがね、親のことをいうようだけれど、母様おっかさんは少し了簡違りょうけんちがいをして、父親おとっさんが病気のあいだに
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私だって何も彼家あすこへは御譜代というわけじゃあなしさ、早い話が、お前さんの母様おっかさんとも私あ知合だったし、そりゃ内の旦那より、お前さんの方が私ゃまったくの所、可愛いよ。可いかね。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御道理ごもっともでございますねえ。そして母様おっかさんはそののちくおなりなさいましたの。」
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はまだ九歳ここのつ時分のことだから、どんなだか、くわしい訳は知らないけれど、母様おっかさんは、お前、何か心配なことがあって、それで世の中が嫌におなりで、くよくよしていらっしゃったんだが
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
死亡おなくなり遊ばした母様おっかさんに、よく顔がておいでだから、平常いつも姉様ねえさんと二人して、可愛がってあげたのに、今こんな身になっているのを、見ていながら、助けてくれないのは情ないねえ、怨めしいよ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「私の顔をのぞき込んじゃあ、(母様おっかさん)ッて、(母様)ッて呼んでよ。」
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さあ、母様おっかさんのことも大抵いい出しはなさらないし、ほかに、別に、こうといって、お心懸こころがかりもおあんなさらないようですがね、ただね、始終心配していらっしゃるのは、新さん、あなたの事ですよ。」
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お前は知らないでもね、母様おっかさんの方は知ってるかも知れないよ、」
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お前さんの母様おっかさんなくなんなすった時も、お前にゃあ何でもしたいことが出来るからってとお言いだったと聞いちゃあいたがね、まあ、随分思切ったこったね。何かい、ここで寝ることがあるのかい。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母様おっかさん御大病ごたいびょう、一刻も早くと、すぐに、美女ヶ原をあとにしました
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それで三人の母様おっかさん? 十二、三のがかしらですかい。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やっぱり母様おっかさんの夢ばかり見てるのか。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「台所に母様おっかさんが。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)