横合よこあい)” の例文
ひとのものを横合よこあいからとるようなことが多い。実にふんがいにたえない。まだ世界は野蛮やばんからぬけない。けしからん。くそっ。ちょっ。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「山西じゃないか」と、横合よこあいから声をかけた者があった。わかい男は耳なれた声を聞いて足を止めた。鳥打帽とりうちぼうた小柄な男が立っていた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と争って居る横合よこあいから、龜藏が真鍮巻の木刀を持って、いきなり孝助の持っている提灯を叩き落す、提灯は地に落ちて燃え上る。
一羽の雉子きじを見つけて鉄砲のねらいを定め、まさに打ち放そうとするときに、不意に横合よこあいから近よってこの男の右腕を柔かに叩く者があった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すると横合よこあいから、へびのような眼を持ったカンカン寅がヒョックリ顔を出す。とたんに仙太の顔がキューッと苦悶くもんゆがむ。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これは一番野猪と蕨を題して句でも作れという事だろうと言うと、妻が横合よこあいからちょっとその電信を読みおわり、これはそんなむつかしい事でない。
それも旦那の生前に頼まれていたとでもいうのならいざ知らず、横合よこあいから飛出して来たおせっかいである。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
源兵衛が横合よこあいから叫んだ。留五郎は、その様子を冷ややかに見たが、急に眼を光らせたのは伝七だった。
四、五間向うに、数羽のひなとともにたわむれている雷鳥、横合よこあいから不意に案内者が石を投じて、追躡ついじょうしたが、命冥加いのちみょうがの彼らは、遂にあちこちの岩蔭にまぎれてしまう。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
変だなと思って、自分の席の方へ行こうとすると、突然横合よこあいから、昂奮こうふんした声で呼びかけられた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
また横合よこあいから飛び出して行つて、どちらかの影を踏まうとするのもある。かうして三人五人、多いときには十人以上もりみだれて、地に落つる各自めいめいの影を追ふのである。
こう俊助が横合よこあいから、冗談じょうだんのように異議を申し立てると、新田は冷かな眼をこちらへ向けて
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
頭髪かみのけが沢山で、重々しそうに鍋でもかぶっているように見える、目尻の垂れ下った、なまずの目附に似ている神経質じみた脊の低い、紺ぽい木綿衣物きものを着た女が、横合よこあいから出て来た。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
其時はピンもさながらデカに義理を立てるかの如く、横合よこあいからワン/\えて走って行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おうとすると横合よこあいから、小文治の馬腹ばふくをついた菊池半助きくちはんすけが、槍をしごいてさまたげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と考えが道草みちくさの蝶にさそわれて、ふわふわとたまが菜の花ぞいに伸びたところを、風もないのに、さっとばかり、横合よこあいから雪のかいなえりで、つと爪尖つまさきを反らして足を踏伸ふみのばした姿が、真黒まっくろな馬に乗って
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目科は横合よこあいより細君に声を掛け
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
すると、林が再び横合よこあいから
誰が何故彼を殺したか (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
いきなり横合よこあいから、機関の停っているこのボルク号が、音もなく潜水艦のうえにのりあげた——と、考えているのです。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
側に居ります同心は一応あらためて罪人に渡しまするがおきてでございますから、横合よこあいから手を出して取ろうと致しますると、亥太郎が承知いたしませぬ。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
侯爵の詰問に、相手の男が答える前に、突然横合よこあいから口を出したのは、執事の三好老人だ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お葉の火の手が折角しずまりかかった処へ、又もやんな狂気婆きちがいばばあ飛込とびこんで来て、横合よこあいから余計なわらべる。重ね重ねの面倒に小悶こじれの来た市郎は、再び大きい声で呶鳴どなり付けた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
七つのとしであったが、筋向すじむかいの家に湯に招かれて、秋の夜の八時過ぎ、母より一足さきにその家の戸口を出ると、不意に頬冠ほおかむりをした屈強な男が、横合よこあいから出てきて私を引抱ひっかかえ、とっとっと走る。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かみさんが横合よこあいから口をはさんだ。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「そんなにのぼっていって、それでいいのかね。横合よこあいから人造人間がわーっと飛びだしたらどうするのかね」
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
はっと思って二人ににん退さがる途端に身をかわしてくうを打たせ、素早く掻潜かいくゞって一人いちにんの利腕を捩上げ、一人ひとりが、「小癪なことをやがる」と横合よこあいより打込み来る其の
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
捜査課長がびっくりしたような表情で、横合よこあいから口を出した。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、博士がかえるのようにとびついてゆくのをワーニャが横合よこあいからとんできて、博士の身体をつきとばした。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また山之助の突掛つきかける所を引外ひっぱずして釣瓶形つるべがたの煙草盆を投付け、続いて湯呑茶碗を打付ぶッつけ小さい土瓶を取って投げる所を、横合よこあいからお繼が、親の敵覚悟をしろと突掛けるのを身をかわして利腕きゝうでを打つと
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふと気がついた様に紋三が横合よこあいから口を出した。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「オヤオヤ」突然横合よこあいから叫んだのは天津飛行士だった。「これはおどろいた。奇蹟中の奇蹟! 六角隊長と私とをこの土地に残して、空に飛びだした第一の宇宙艇だ」
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時に横合よこあいより亥太郎「恐れながら申上げます」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「弦ちゃん、お前は、こんなことで毎日帰りが遅かったのかい」黄一郎きいちろうが、横合よこあいから口を出した。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
風浪ふうろうともみ合ったり、横合よこあいから入って来た危難を切りぬけるのに、ほねをおったぐらいのことで、こっちから仕かける壮途らしいことは、ただの一回もやったことがないのだ。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やがて時刻とみえて、ビルの横合よこあいの出口から、若い男や女が、ぞろぞろと出てきた。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私はわざと先頭せんとうになって駈けだした。刑事も横合よこあいから泳ぐように力走した。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ハルクが、たくましい腕をのばして、横合よこあいから麻紐をぐっと引いた。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それア相当なもんですなア」と副園長が横合よこあいから云った。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき帆村は横合よこあいから声をかけた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、帆村が横合よこあいから口を出した。
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
横合よこあいから、疳高かんだかい声が聞えた。
もくねじ (新字新仮名) / 海野十三(著)
と帆村が横合よこあいから口を出した。
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)