トップ
>
槙
>
まき
ふりがな文庫
“
槙
(
まき
)” の例文
旧字:
槇
橋本さんで
朝御飯
(
あさごはん
)
のごちそうになって、太陽が
茂木
(
もぎ
)
の
別荘
(
べっそう
)
の大きな
槙
(
まき
)
の木の上に上ったころ、ぼくたちはおじさんに連れられて家に帰った。
火事とポチ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
宇治方面では楠木正成の五千騎が、宇治橋を
断
(
き
)
り、
槙
(
まき
)
ノ島、平等院のあたりに黒煙をあげ、ここの守備は一ばいものものしく
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
へえ、これは、その、
或
(
あ
)
る
家
(
いえ
)
の
前
(
まえ
)
を
通
(
とお
)
りますと、
槙
(
まき
)
の
木
(
き
)
の
生
(
い
)
け
垣
(
がき
)
にこれがかけて
干
(
ほ
)
してありました。
見
(
み
)
るとこの、
尻
(
しり
)
に
穴
(
あな
)
があいていたのです。
花のき村と盗人たち
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
翁の家の門は
槙
(
まき
)
の生垣の間に在る、小さな土壁の屋形門であった。只圓翁の筆跡で書いた古い表札が一枚打って在った。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
民家の垣根に
槙
(
まき
)
を植えたのが多く、東京辺なら椎を植える処に楠かと思われる樹が見られたりした。茶畑というものも独特な「感覚」のあるものである。
静岡地震被害見学記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
その墓地はMという細い
街
(
まち
)
に面しておりますが、そこには別に門というものがなく、
槙
(
まき
)
の
木
(
き
)
がまばらに植えてあるだけで、自由自在に人の出入りができます。
墓地の殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
庭には
槙
(
まき
)
や
榧
(
かや
)
の
間
(
あいだ
)
に、
木蘭
(
もくれん
)
が花を開いている。木蘭はなぜか日の当る南へ
折角
(
せっかく
)
の花を向けないらしい。が、
辛夷
(
こぶし
)
は似ている癖に、きっと南へ花を向けている。
保吉の手帳から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
街
(
まち
)
の中にはまだはいって来ぬ秋であったが、音羽山が近くなったころから風の音も冷ややかに吹くようになり、
槙
(
まき
)
の尾山の木の葉も少し色づいたのに気がついた。
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
何処
(
どこ
)
の
珈琲店
(
カフェー
)
にもある
焦茶
(
こげちゃ
)
の薄絹を張った、細い
煤竹
(
すすだけ
)
の骨の、
帳
(
とばり
)
と
対立
(
ついたて
)
とを折衷したものが、外の出入りの目かくしになって、四鉢ばかりの
檜葉
(
ひば
)
や
槙
(
まき
)
の鉢植えが
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
上等別嬪というのは藤兵衛の妾、お
槙
(
まき
)
のこと。こんな記事を読んだところで、犯人の見当をつける手掛りにならないばかりか、とんだ嘘を教えこまれるばかりである。
明治開化 安吾捕物:03 その二 密室大犯罪
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
片側は人の歩むだけの
小径
(
こみち
)
を残して、農家の生垣が
柾木
(
まさき
)
や
槙
(
まき
)
、また
木槿
(
むくげ
)
や
南天燭
(
なんてん
)
の茂りをつらねている。夏冬ともに人の声よりも小鳥の
囀
(
さえず
)
る声が耳立つかと思われる。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
四方一帯、春昼の
埃臭
(
ほこりくさ
)
さのなかに、季節に後れた
沈丁花
(
じんちょうげ
)
がどんよりと
槙
(
まき
)
の樹の根に咲き匂っている。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
朝どうかして早く目をさますと少林寺の
槙
(
まき
)
の木に巣をくつてる烏の声がきこえるのを伯母さんは
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
庭木のうちでは
槙
(
まき
)
がいちばん大木であり、
丈
(
たけ
)
も高い。朝日が今その
梢
(
こずえ
)
を照し出している。
楓
(
かえで
)
はうっとうしいくらい繁って来たが、それでもけさは青葉の色が
滴
(
したた
)
るように見える。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
しかしながら自分には殆ど嫌いじゃという菓物はない。バナナも旨い。パインアップルも旨い。桑の実も旨い。
槙
(
まき
)
の実も旨い。くうた事のないのは杉の実と
万年青
(
おもと
)
の実位である。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「あれ、あんなことをいうよ、のうお
槙
(
まき
)
。」と母親は
傍
(
かたわら
)
なる女房に言葉を渡したらしい。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
槙
(
まき
)
の湯船の香が、プンとにおう。この風呂桶は、毎日あたらしいのと換えたもので……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
が、何と言っても
槙
(
まき
)
の果ほど子供たちに喜ばれたものはなかった。
喬木
(
きょうぼく
)
の槙の木は、栗や椎の木のような下枝がなかったので、木登りの上手な子供でなければ登ることができない。
甘い野辺
(新字新仮名)
/
浜本浩
(著)
雪はゆうべのうちによほど降り積もったらしく、軒さきに出ている
槙
(
まき
)
の梢もたわむほどに重い綿をかぶっていて、正面にみえる坂路の方からは煙りのような粉雪が渦をまいて吹きおろして来た。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
氏郷と仲の好かった細川忠興は、茶庭の路次の植込に
槙
(
まき
)
の樹などは面白いが、まだ立派すぎる、と云ったという程に
侘
(
わび
)
の趣味に徹した人だが、氏郷も幽閑清寂の茶旨には十分に徹した人であった。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
先
(
まず
)
一番始まりが紀州の那智、次に二番が同国紀三井寺、三番が同じく
粉川寺
(
こがわでら
)
、四番が和泉の
槙
(
まき
)
の
尾
(
お
)
寺、五番が河内の藤井寺、六番が大和の壺坂、七番が岡寺、八番が長谷寺、九番が奈良の
南円堂
(
なんえんどう
)
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
槙
(
まき
)
もやや光る葉がひを
秀
(
ほ
)
に
佇
(
た
)
ちて青鷺の群のなにかけうとさ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
明智方の川上久左衛門は、
槙
(
まき
)
の木の蔭から半弓を引きしぼっていた。矢は信長の
臂
(
ひじ
)
に刺さった。信長はよろめいて、うしろの
蔀
(
しとみ
)
に背を支えられた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
杉、
柾木
(
まさき
)
、
槙
(
まき
)
などを植えつらねた生垣つづきの小道を、夏の朝早く
鰯
(
いわし
)
を売りあるく男の頓狂な声。さてはまた長雨の晴れた昼すぎにきく
竿竹売
(
さおだけうり
)
や、
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
つくろい直しの声。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
公園の
御桜山
(
おさくらやま
)
に大きな
槙
(
まき
)
の樹があってその実を拾いに行ったこともあった。緑色の楕円形をした食えない部分があってその頭にこれと同じくらいの大きさで美しい紅色をした甘い団塊が附着している。
郷土的味覚
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
文六ちゃんの屋敷の外囲いになっている
槙
(
まき
)
の
生垣
(
いけがき
)
のところに来ました。
背
(
せ
)
戸口
(
どぐち
)
の方の小さい木戸をあけて中にはいりながら、文六ちゃんは、じぶんの小さい
影法師
(
かげぼうし
)
を見てふと、ある心配を感じました。
狐
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
この門よ
槙
(
まき
)
も
通草
(
あけび
)
も目立たずてすがしかりしか雨つづりつつ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
朝ぼらけ家路も見えず尋ねこし
槙
(
まき
)
の尾山は霧こめてけり
源氏物語:47 橋姫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「これは
槙
(
まき
)
さん
入
(
い
)
らっしゃい。」
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お
槙
(
まき
)
は青白い
戦慄
(
せんりつ
)
を奥歯にかんでいた。写真の画面には、大きな自分の顔と、騎手の島崎の顔が、唇を寄せ合って、見るからに
淫
(
みだ
)
らな陶酔を語っていた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
槙
(
まき
)
のこずゑに、青鷺の
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
それを、送り出すと、
夫人
(
マダム
)
お
槙
(
まき
)
は、伸びをして、やけに、ひとりで肩を叩きながら、まだ煙草の煙の濁っている西洋間の長椅子へ、自分を
抛
(
ほう
)
り出していた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——授戒の場を去らせず、
童
(
わっぱ
)
の首をひきぬいて、千年
槙
(
まき
)
の木の股に
梟首
(
さら
)
し、
鴉
(
からす
)
に眼だまをほじらせるぞと告げるがいい」と、
脅
(
おど
)
しつけて、肩をそびやかして、立ち去った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この跛行の紳士がその日の
正賓
(
せいひん
)
であるとみえて、玄関のまえには、主人の高瀬理平や、
夫人
(
マダム
)
お
槙
(
まき
)
や、令嬢の
奈都子
(
なつこ
)
や、すべてのものが、ものものしく立ちならんで、出迎えた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
所々に、杉や
槙
(
まき
)
などの樹がぽつねんと孤立しているほか、野の視野は何里となく広かった。ただ大きな起伏が低い丘を描き、そこを縫う道に多少のゆるい登りや降りがあるだけである。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
槙
(
まき
)
の樹に、尾の長い
縞鳥
(
しまどり
)
が、まだ少し雪のある、伊那山脈の空をながめていた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とる手もおそしと、
槙
(
まき
)
の
葉鏃
(
はやじり
)
の
太矢
(
ふとや
)
をつがえた
蔦之助
(
つたのすけ
)
は、
虚空
(
こくう
)
へむけて、ギリギリとひきしぼるよと見るまに、はやくも一の矢プツン! と切る、すぐ関市が
代
(
かわ
)
り矢を出す。それを取ってさらに
射
(
い
)
る。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんもりした
槙
(
まき
)
の森蔭で、わずかな眠りをとった後。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
槙
漢検準1級
部首:⽊
14画
“槙”を含む語句
槙町
槙山
高野槙
槙島
槙柱
槙尾赤霧
槙屏
槙嶋照武駒谷
槙本坊詮応
槙村
槙柏
槙葉
槙雑木
直槙
細葉槙