)” の例文
からだて頂をし、もって万一に報ずるを思わず、かえって胸臆きょうおくほしいままにし、ほしいままに威福をす。死すべきの罪、髪をきて数えがたし。
続黄梁 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
右は故鷲津毅堂の所蔵なりし趣、すぐる御通信中斎藤君の大金をてゝ加納屋より得られたる画帖がじょうも本は毅堂の所有品なりしとの事。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
然るに君が既に千金をてゝ贋品を有つてゐるといふことになると、君は知らなくても自分は心に愧ぢぬといふ訳にはゆかぬでは無いか。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
支那でも『論衡』に鼠一きょうわたれば飯てて食われず、古アングロ・サキソン時代に英国で犬や鼠の食い残しを知って食ったら神頌を百遍
但し寺とせよといふ句は家をてて寺とする平安文化の一事象から出て来たのであらうからその方に詳しい晶子さんでなければ云へない所だし
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
仄に聞けば、頃日このごろ暴富の人があつて、一博士の書を刊せむがために数万金をてたさうである。わたくしは其書の善悪を知らぬが、要するに一家言である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
校長・議員・幹事・講師及び学生諸君は必らず余の冀望をみし、共にその力を出し、以て本校の隆盛を謀り、恩人隈公が万余の義金をててこの校を建て
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
生は人の欲する所、死は人の恐るゝ所、然るに熱意は人をして生をて、死を甘受する事あらしむ。
熱意 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
神聖なる霊の居処と見られた臥し処に堆積した有形無形数々の畏るべき物・忌むべき物・穢はしい物を、物に托しててゝ、心すがしい霊のおちつき場所をつくる為である。
古代生活の研究:常世の国 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
悼王たうわうもとよりけんなるをく。いたればすなはしやうとす。((呉起))はふあきらかにしれいつまびらかにし、不急ふきふくわんて、(一〇五)公族こうぞく疏遠そゑんものはいし、もつ戰鬪せんとう撫養ぶやうす。
又後世に於て、民の、吾が故にりて、己が父母かぞほろぼせりと言はむことを欲せじ。豈に其れ戦勝ちての後に、まさ大夫ますらをと言はむ哉。夫れ身をて国を固くせむは、また大夫ますらをならざらむや。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
しよを山上にけながら眼下がんか群住ぐんぢうするあはれなる数万の異教徒ゐけうとめに祈願きぐわんめるも無益むえきなり、教会けうくわい復興ふくこう方策はうさくとは教導師けうだうしみづからつるにあり、家族かぞく安楽あんらく犠牲ぎせいきやうするにあり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
君正しからず一国正しからずと知らば、潔く身を退くべきに、身の程をも計らず、区々たる一身をもって一国の淫婚いんこんを正そうとした。自ら無駄に生命をてたものだ。仁どころのさわぎではないと。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかるに君が既に千金をてて贋品をっているということになると、君は知らなくても自分は心にじぬという訳にはゆかぬではないか。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しん深くこの恩義に感じてや、先考せんこう館舎をてられし後は、一際ひときわまごころ籠めてわが家のために立ちはたらきぬ。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
寺僧は資をてて新に壽阿彌の石を立てた。今傳通院にあるものが即是である。未亡人石はつねに云つてゐる。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
伏姫が父をいさめて、賞罰はまつりごとの枢機なることを説き、一言は以て苟且かりそめにすべからざるを言ひ、身をてゝ父の義を立てんとするに至りては、宛然たるシバルリイの美玉なり。
心深い修道者は家を捨てゝ這入つた寺を、再、てなければ、道心は遂げられなかつた。出家の後、寺には入らず、静かな小屋に、僅かな調度を置いて、簡素な生活を営む。
それへ絶句を題する者あり、いわく、〈赤心国に許すは平時よりす、敵を見て躯をててさらに疑わず、権は忌み皐は庸にして皆遁走し、同時に難に死すは只青獅のみ〉と。
さきに上宮太子の御子山背大兄王やましろのおいねのみこは、蘇我入鹿の軍に襲われたとき、御一身のため万民をわずらわすを慎しみ給い、「身をて国を固くせむは、また丈夫ますらをならざらむや」と法隆寺に自頸じけいされたのであったが
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
何様も致しかたの無い人の終りは、然様するか然様されるのが自然なのである。生相憐み、死相つるのである、力寿定基はついに死相捐てたのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
星巌の忌日を或書には九月四日となしているが、鈴木松塘の『房山楼詩稿』に「横山舒公ノ信ニ接シ星巌先生九月二日ヲ以テ館舎ヲツト聞キ位ヲ設ケテコレヲこくス。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今わたくしのもとに帰省詩嚢と云ふ小冊子がある。これは浜野知三郎さんに借りてゐる書である。霞亭の門人井達夫せいたつふ等は嘗ててゝ霞亭の薇山三観を刻して知友におくつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
燕王ついまた師をひきいてづ。諸将士をさとして曰く、たたかいの道、死をおそるゝ者は必ず死し、せいつる者は必ず生く、なんじ努力せよと。三月、盛庸せいよう來河きょうがう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これ南岳の句にして小波巌谷さざなみいわや先生書する所、石もまた巌谷翁のてて建てられしものなり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
貶黜へんちつは阿部家の医官が其主の病を治して、主のくわんつるに会ふごとに、例として行はれたものださうである。果して然らば柏軒は真に何の咎をも受けなかつたのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
忠兵衛は詩文書画を善くして、多く文人墨客ぼっかくまじわり、財をててこれが保護者となった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
嫌がらない人になれば銭をてて渋うるかを買って食べて喜んでいる。ふきとうを温灰焼にして食えば苦いには違い無い、しかし中々佳い味だ。甘いものは好む人が多いには相違無い。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)