怪物かいぶつ)” の例文
試合しあいにばかり気をうばわれていた人々は、それよりほんの少しまえに、御岳みたけの西方、御前山おんまえさんの森からいあがったこの怪物かいぶつのかげが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……貴公のごとき前世紀の怪物かいぶつが花岡伯爵家の子弟教育に従事するは身のほど知らず、ふとどき千万せんばんなり。時勢を見よ。時勢を見よ……」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ちょうは、びっくりしました。そこにいて、さっきから獲物えものをねらっていた、おそろしい怪物かいぶつがつかなかったのでした。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
黒馬旅館くろうまりょかんのおかみさんは、なんとも気もちのわるいきゃくをとめたもんだと、考えこんでいたが、この男がまさか怪物かいぶつであろうとは気がつかない。
そこで、ニールスは、「さっき海の怪物かいぶつのように見えたのも、そんなにまちがっちゃいなかったんだな。」と、思いました。
あぶなぃ。だれだ、刀抜いだのは。まだ町さも来なぃに早ぁじゃ。」怪物かいぶつ青仮面あおかめんをかぶった清介せいすけ威張いばってさけんでいます。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そこで、弟はこの怪物かいぶつかたにかついで、こいつを王さまのところへもっていこうと思いながら、かえり道につきました。
これは雪達磨ゆきだるまを十個合わせたぐらいの丸い大きな目をもった恐ろしい怪物かいぶつです。そいつは空からフワリフワリと下りて来て、私をにらみつけたのです。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところでわたしのびっくりしたことには、その怪物かいぶつは、この近所には人家はないが、ひつじ小屋は一けんあるから、そこへれて行ってやろうと言った。
この人若いに似合にあわ沈着おちついたちゆえ気をしずめて、見詰めおりしが眼元めもと口元くちもと勿論もちろん、頭のくしから衣類までが同様ひとつゆえ、始めて怪物かいぶつなりと思い、叫喚あっと云って立上たちあが胖響ものおと
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
「でも、星の世界の人間って、いったい、どんなかたちをしているでしょうね。火星人はタコみたいなグニャグニャした足が、たくさんある、おそろしい怪物かいぶつですね。」
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
千鈞せんきんかなえを挙げる勇者をかれは見たことがある。めい千里の外を察する智者ちしゃの話も聞いたことがある。しかし、孔子に在るものは、決してそんな怪物かいぶつめいた異常さではない。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その文にいわく(中略)貴嬢の朝鮮事件にくみして一死をなげうたんとせるの心意を察するに、葉石との交情旧の如くならず、他に婚を求むるも容貌ようぼう醜矮しゅうわい突額とつがく短鼻たんび一目いちもく鬼女きじょ怪物かいぶつことならねば
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
荒田老の怪物かいぶつのような顔とならんで、まだ一度も見たことのない小関という人の顔がうかんで来たが、それは血色のわるい、ほおのこけた胃病患者かんじゃのような顔で、眼だけがいやに光っていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
すべて怪物かいぶつは、昼のうちはどこかに姿すがたかくしていて、夜になってあらわれて来るものだということを知っていたので、勘太郎はまず明るいうちに寺へ着いて、どこかに自分の身を隠しておこうと考えた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
おかみさんは、ぶったおれるかと思うほどおどろいてしまった。ひょいと見た男の顔が、なんと怪物かいぶつそのままの不気味ぶきみな顔をしているではないか!
しかし、おばあさんも、そのそら怪物かいぶつたいものと、毎日まいにち毎日まいにち、みんなからうわさをきながらっていました。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
「しずかに!」白いきれを頭からすっぽりかぶり、すその方まで長くひいた怪物かいぶつが、子供の声をだした。その白いきれがとれ、中から少年の顔がでた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その恐ろしいものは、なんだかクジラやサメやそのほか大きな海の怪物かいぶつのように見えました。けれども、ニールスはそれを海の神さまだと思いました。
戸のまえには、ひとりの男が立っていて、小刀こがたなをあっしの足につきさしゃがる。庭にはまた黒い怪物かいぶつがねこんでいて、こんぼうであっしをぶんなぐりますのさ。
だれもいない南蛮寺なんばんじ緑青ろくしょうのふいた銅瓦どうがわらの上へ、あけぼのの空から、サッ——といおりてきた怪物かいぶつがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怪物かいぶつはいよいよ近くにせまっていた。もういまにも頭の上にとびかかりそうになっていた。
大きさは約四尺もあろう、真黒で頭の大きい何とも分らぬ怪物かいぶつだ、流石さすがの悪僧も目前にこんなあやしみを見て深く身の非を知りその夜住職をおこしてこの事を懺悔ざんげし、その後はうって変って品行を謹しみ
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
「こころえています。さっそく召集して、道という道に見はりを立てて、あの怪物かいぶつがにげられないようにしましょう」
たいへんな怪物かいぶつがとびこんで来た、そうとよりしか考えません。もうすっかりおびえきって、てんでに、あたまをかかえて、そとの森の中へ、にげだして行きました。
それがために、ツェッペリンの姿すがたは、建物たてものかげにさえぎられて、なかにはいらず、みんなのあせるうちにらぬかおで、この怪物かいぶつは、永久えいきゅうに、あちらへってしまったのでした。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
あれほどわたしをおどかした怪物かいぶつはもう動かなくなって、じつと往来おうらいに立ち止まっていた。
島の一ばん上に立って、両腕を高くあげていた巨人きょじんは、二つのとうのある教会でした。海の神さまや海の怪物かいぶつに見えたのは、島のまわりにとまっているボートや大きな船でした。
なんにいつけられているのかと見れば、じっさい、おどろくべき怪物かいぶつ——といってもよい大うわばみが、鞍馬山くらまやまにはめずらしい大鷲おおわしを、つばさの上から十重二十重とえはたえにグルグルきしめ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怪物かいぶつ行方ゆくえ
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、まだ鉄砲てっぽう手入ていれをしておかなかったのを、迂濶うかつであったとづいたのです。その翌日よくじつひるすぎごろのこと、ぐちへなにかきたけはいがしたので、ると怪物かいぶつかおしていました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
怪物かいぶつ怪力かいりき
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)