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微醺
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びくん
ふりがな文庫
“
微醺
(
びくん
)” の例文
杯
(
さかずき
)
のめぐるままに、人々の顔には
微醺
(
びくん
)
がただよう。——詩の話、
和歌
(
うた
)
の朗詠、興に入って尽きないのである。と、思い出したように
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黒繻子
(
くろじゅす
)
の帯の間からコンパクトを出して
微醺
(
びくん
)
を帯びた顔の
白粉
(
おしろい
)
を直してから、あたりをそっと見廻して、誰もいないのを確かめると
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
微醺
(
びくん
)
をおびていることもあった。見本に並べてある絵の中にはその人の自画像もあって、それには「ひょっとこの
命
(
いのち
)
」と傍書してあった。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
老病ほど見たくでもなくいまいましきものはなし……酒のみても腹ふくるるのみにて
微醺
(
びくん
)
に至らず物事にうみ退屈し面白からず。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「
桜時
(
さくらどき
)
ばかりの
墨堤
(
ぼくてい
)
でもあるまい。
微醺
(
びくん
)
をなぶる夜の風、夏の墨堤をさまよったって、コラーという奴もあるめえじゃないか」
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
黄昏
(
たそがれ
)
の頃だった。僕は新宿の駅前で、肩をたたかれ、振り向くと、れいの林先生の橋田氏が
微醺
(
びくん
)
を帯びて笑って立っている。
眉山
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
若
(
わか
)
き
血潮
(
ちしほ
)
の
漲
(
みな
)
ぎりに、私は
微醺
(
びくん
)
でも
帶
(
お
)
びた時のやうにノンビリした
心地
(
こゝち
)
になツた。友はそんなことは氣が
付
(
つ
)
かぬといふ
風
(
ふう
)
。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
ですからその夜は文字通り一夕の
歓
(
かん
)
を尽した後で、彼の屋敷を辞した時も、
大川端
(
おおかわばた
)
の川風に俥上の
微醺
(
びくん
)
を吹かせながら、やはり私は彼のために
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、お
互
(
たがひ
)
に
微醺
(
びくん
)
を
帶
(
お
)
びて
變
(
へん
)
に
彈
(
はづ
)
み
立
(
た
)
つた
氣分
(
きぶん
)
で
黄包車
(
ワンポイソオ
)
を
驅
(
か
)
り、
再
(
ふたゝ
)
び
四馬路
(
スマロ
)
の
大通
(
おほどほり
)
へ
出
(
で
)
たのはもう
夜
(
よる
)
の一
時
(
じ
)
過
(
す
)
ぎだつた。
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
これも
微醺
(
びくん
)
は帶びて居りましたが、なか/\の艶やかさ。二十五六の女盛りの魅力を、名殘もなく發散させるのです。
銭形平次捕物控:283 からくり屋敷
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
微醺
(
びくん
)
を帯びた勝平は、その赤い
巨
(
おお
)
きい顔に、
暴風雨
(
あらし
)
などは、少しも心に止めていないような、悠然たる微笑を
湛
(
たた
)
えながら、のっそりと車から降りた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
秋の一夜偶然尋ねると、珍らしく
微醺
(
びくん
)
を帯びた上機嫌であって、どういう話のキッカケからであったか
平生
(
いつも
)
の話題とは
全
(
まる
)
で見当違いの写真屋論をした。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
然しモウ以前の単純な、素朴な政治ではなかつた。或時は
微醺
(
びくん
)
を帯びて来て、
些々
(
ちよいちよい
)
擽る様な事を言つた事もある。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
駒井能登守が役所へ出かけたそのあとで、お君は部屋へ行ってホッと息をついて、
微醺
(
びくん
)
の
面
(
おもて
)
を両手で隠しました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
微醺
(
びくん
)
が頬へ現れた頃、歌い手三人ばかりが残照の花園に現れて、一人は
竪琴
(
たてごと
)
を奏で、一人がそれに合せて節面白く唄って酒興を添えてくれるのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
山木剛造は今しも
晩餐
(
ばんさん
)
を終りしならん、大きなる熊の毛皮にドツかと
胡座
(
あぐら
)
かきて、仰げる広き額には
微醺
(
びくん
)
の色を帯びて、カンカンと輝ける
洋燈
(
ランプ
)
の光に照れり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
微醺
(
びくん
)
の顔にほんのりと桜色を見せて、若い女の思い切り高々に掲げた裳から、白い
脛
(
すね
)
惜気もなくあらわにして、羞かしいなぞ怯れてはいず、江戸ッ児は女でもさっぱりしたもの
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
たまたまそこへ
微醺
(
びくん
)
を帯びて入ってきた吉本の支配人でTという中年の男が、京都へ出てもらう代わりには圓馬師匠へ無条件に詫びてくれんと……という条件を持ち出してきた。
わが寄席青春録
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
その気配を聴きながら、お初は
微醺
(
びくん
)
を帯びた目の下を、ひッ釣らせて、ニヤニヤした。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
守
(
かみ
)
は、すこし
微醺
(
びくん
)
を帯びたまま、
郡司
(
ぐんじ
)
が雪深い
越
(
こし
)
に下っている息子の自慢話などをしているのをききながら、
折敷
(
おしき
)
や菓子などを運んでくる男女の
下衆
(
げす
)
たちのなかに、一人の小がらな女に目をとめて
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
と取りなしたが、
微醺
(
びくん
)
をおびている文六さんは受けつけない。
明日は天気になれ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
笑
(
ゑみ
)
を
漾
(
ただ
)
ふる
眸
(
まなじり
)
は
微醺
(
びくん
)
に彩られて、更に別様の
媚
(
こび
)
を加へぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
Sはほんのり
微醺
(
びくん
)
を帯びて、TやKやHなどと一つソオファを占領して、そのまん中へ私を無理に取り込めようとするのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
こんな話をして酒を飲み合い、
微醺
(
びくん
)
を帯びてこの茶屋を出ると、
醍醐
(
だいご
)
から宇治の方面へ夕暮の
鴉
(
からす
)
が飛んで行く。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
実際往来を一つ
隔
(
へだ
)
ててゐる掘割の明るい水の上から、時たま此処に流れて来るそよ風も、
微醺
(
びくん
)
を帯びた二人の男には、
刷毛先
(
はけさき
)
を少し左へ曲げた水髪の
鬢
(
びん
)
を吹かれる度に
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
唖々子は時々長い
頤
(
あご
)
をしゃくりながら、
空腹
(
すきっぱら
)
に五、六杯
引掛
(
ひっか
)
けたので、
忽
(
たちま
)
ち
微醺
(
びくん
)
を催した様子で
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
声を掛けたは由井正雪、陣幕に染め出した菊水の紋、それをうしろに
篝火
(
かがりび
)
を左右、ずっと離れた上座の位置に、円座を敷いてすわっていたが、顔は桃色、
微醺
(
びくん
)
を帯びている。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
或時は
微醺
(
びくん
)
を帶びて來て、
些々
(
ちよい/\
)
擽る樣な事を言つた事もある。又或時は同じ中隊だといふ、
生
(
なま
)
半可な文學談などをやる若い少尉を
伴
(
つ
)
れて來て、態と其前で靜子と親しい樣に見せかけた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
微醺
(
びくん
)
をおびて歩いていると、よく町の子ども等が、彼のうしろから
尾
(
つ
)
いて来て
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、京子に断って、カクテルを注文したが、それがいつかウイスキーに変り、三杯となり、四杯となり、食事が終って、自動車に一緒に乗った時は、彼の白い顔が、
微醺
(
びくん
)
を帯びて輝いていた。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
持ち来すは、ただ
微醺
(
びくん
)
をもたらす玉杯なれ、ってね。わかるかい
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
要はみんなが黙り込んでしまったあと、ひとりそんなことを考えながら仕様ことなしに舞台の上の「河庄」の場へ、ほんのりと
微醺
(
びくん
)
を帯びた眼を向けていた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
すると
微醺
(
びくん
)
を帯びた父は彼の芸術的感興をも物質的欲望と解釈したのであろう。
象牙
(
ぞうげ
)
の
箸
(
はし
)
をとり上げたと思うと、わざと彼の鼻の上へ醤油の
匂
(
におい
)
のする
刺身
(
さしみ
)
を出した。彼は勿論一口に食った。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
旅装
(
たびよそお
)
い物々しげな武者は、
微醺
(
びくん
)
をおびて奥から出てきた男を、うさんくさい
眼
(
まな
)
ざしでじっと見、また尼の顔を見、これは
怪
(
け
)
しからぬといわぬばかりな顔つきを示し、出て行く友松のうしろ姿を
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
微醺
(
びくん
)
を帯びた女のかんばせは、美しさを加えることがあるかも知れないが、こうグデングデンに酔っぱらってしまって、大道中へふんぞり返ってしまったのでは、醜態も醜態の極、問題にならないと
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雪子は先刻の白葡萄酒が今になって
循
(
まわ
)
って来たらしくて、両
頬
(
ほお
)
にぽうッと
火照
(
ほて
)
りを感じながら、もう阪神国道を走っている車の窓から、
微醺
(
びくん
)
を帯びたチラチラする眼で
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
阿波守もそろそろ
微醺
(
びくん
)
をおびてきた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
微
常用漢字
中学
部首:⼻
13画
醺
漢検1級
部首:⾣
21画
“微”で始まる語句
微笑
微
微塵
微風
微行
微妙
微暗
微酔
微温
微睡