御酒ごしゅ)” の例文
折節ね旦那のお供でね沖釣などに出来でかける事もありますがね、馬作は竿も餌も魚任むこうまかせにして只御酒ごしゅを頂くばかりいえも何うせいけません
始めんとする時妹のお登和小声に「兄さん御酒ごしゅをつけますか」兄「そうさ少しつけておくれ」と御馳走には必ず酒の伴うあり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「島田先生も、大へん御機嫌ごきげんがよくて、常よりは御酒ごしゅも過ごしなされ、御料理もよくいただいて、さてその帰りでございます」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お待遠まちどお様。やっとお料理が出来ました。御酒ごしゅは何に致しましょうか。老酒ラオチュ、アブサン、サンパンぐらいに致しましょうか」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「都にいる間は、酔わぬ日とてない。殿もまた、御上洛中は、日ごとに御酒ごしゅの量が上がってゆく。……いま伺うと、また大杯をいられるぞ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「只今、ここに御酒ごしゅをめしあがっていらっしゃるのが北原白秋先生に山本鼎先生でございます。お家賃は百五十円で。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「別に仔細しさいはなかろうとは思いますがそう申せば大分お帰りがお遅いようだ。事によったらお屋敷で御酒ごしゅでも召上ってるのではざいますまいか。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「あまり御酒ごしゅは召しあがりませんのですから。」とか、「うち真実ほんとうにせかせかしたたちでいらっしゃるんですから……。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「先生は御酒ごしゅばかりで」と、お袋は座を取りなして、「ちッともおうなは召しあがらないじゃアございませんか?」
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「こうして御酒ごしゅでもいただくと、実に一切を忘れますよ。わたしはよく思い出す。金兵衛さん、ほら、あのアトリ(獦子鳥)三十羽に、茶漬ちゃづけ三杯——」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「失礼であるが、今夜はこちらも取込んでおります。ゆっくりとこゝで御酒ごしゅをあげていると云うわけにも行かない。どうかこれで、ほかへ行って飲んでください。」
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「別にお構い申上げませんから、っとも面倒はございませんのよ。あの方御酒ごしゅは召し上りますか?」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「これはまた滅相な。成程御姫様の御美しさは、伎芸天女ぎげいてんにょも及ばぬほどではございますが、恋は恋、釈教は釈教、まして好物の御酒ごしゅなどと、一つぎわには申せませぬ。」
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それにお見受け申しました処、そうやって御酒ごしゅもおあがりなさりませず、滅多にはしをお着けなさりません。何ぞ御都合がおありなさりまして、わしどもにお休み遊ばします。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それと申すのも……あんまり御酒ごしゅを頂くものですから。で今じゃ、なおのこと、やけになって頂くのですよ。わたくし、貴族団長のところへ伺って、お願いしてみようと思いますの。
嫁入り支度 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
馳走ちそうになれば御酒ごしゅくだされなんと云て、気の毒にも思わずただ難有ありがたいと御辞儀じぎをするばかりで、その実は人間相互あいたがいの附合つきあいと思わぬから、金銭の事についてもまたその通りでなければならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
御酒ごしゅは手酌のグイ呑みを遊ばして、おさかなにはろくに手もお付けになりません。
おくごてんへおこしになりますと御きげんよく御酒ごしゅをきこしめされ、何くれとおくがたをいたわってお上げなされて、お女中がたやわたくしどもへまでじょうだんをっしゃったりしまして
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まあ一盃ひとつし上れな、すっかり御酒ごしゅめておしまいなすったようですね。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一 この御酒ごしゅ一つ引受ひきうけたもるなら、命長くじめうさかよる
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「承知いたしました、御酒ごしゅも召しあがりまして」
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
御酒ごしゅを召上らないかたは一生のお得ですね」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御酒ごしゅはいりますか。おさかなは。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
「どういたしまして。今日、処刑してきた悪党もお蔭さまで捕まったようなもんでさ。……ひとつ、そこらで御酒ごしゅでも一こん
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飯「昨日はお草々そう/\を申しました、如何いかにもお急ぎなさいましたから御酒ごしゅも上げませんで、おおきにお草々申上げました」
致すようですが、御酒ごしゅが一向いけないもので、中途から逃げて参ります。後は大抵葛岡さんと……
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
はい、はい、どうも御馳走さまでございます。わたくしは下戸げこでございますけれど、御酒ごしゅ
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「これはこれは、御酒ごしゅが冷えましたでございましょう、お熱いのを換えて差上げましょう」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぐしがどうやら、お召ものが何やら、一目見ました、その時のすごさ、可恐おそろしさと言ってはございません。ただいま思い出しましても御酒ごしゅが氷になって胸へみます。ぞっとします。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ……どうして御存じで……主人はいつも御酒ごしゅを頂きますたんびに重曹と、酒石酸を用いましたので……そうしないと二日酔をすると申しまして、御酒ごしゅを頂きますたんびに……」
無系統虎列剌 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かついえ公はごきげんよく御酒ごしゅをまいられ、たゞ一戦にてきをほろぼし藤吉郎めのくびを取って、月のうちにはみやこへのぼってみせようぞ、かならず吉左右きっそうを待っておられよと仰っしゃって
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
折角の御酒ごしゅも御覧の通り二、三杯いただくと唯うとうとと眠気を催すばかりさ。さすが蜀山先生しょくさんせんせいはうまい事を書いていますよ。先達せんだってさる人から『奴師労之やっこだこ』と申す随筆を借りて見ましたがな……。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
御酒ごしゅを一本綺麗におあけなすって、夕方御帰りになりました。
「だっても御酒ごしゅを召上ったんでしょう」奥様は笑いました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どうもこれはとんだ御厄介ごやっかいをかけましたね。御酒ごしゅ
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
菊「貴方また其様そん御容子ごようすいことばかり御意遊ばします、わたくしのような此様こんなはしたない者がお酌をしては、御酒ごしゅもお旨くなかろうかと存じます」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
禁盃きんぱいの寺内に於いて、御酒ごしゅ頂戴ちょうだいいたしては如何と思いますが、せっかくの御芳志ごほうし、又、この中には嫌いが少い事でもあれば、お志に甘えて、存分にべ申す』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……御新規お一人様、なまで御酒ごしゅ……待った、待った。そ、そんなのじゃ決してない。第一、お客に、むらさきだの、鍋下なべしただのと、符帳でものを食うような、そんなのも決して無い。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こんばんは、お隣りのお方から、奥様に御酒ごしゅ一つ上げてくれと持って参じました」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「……まあ……気付きませんで……御酒ごしゅはいかが様で……」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「此れはどうも結構な御酒ごしゅでございますな」
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「先生、この頃は御酒ごしゅは召上りませんか?」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
林「旦那さまは神原様のお小屋で御酒ごしゅが始まって、手前は先へ帰れと云いましたから、わしだけ帰ってめえりました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかも時勢はあすもしれぬ今日、御酒ごしゅもおたわむれも、程はよけれど、ちと、お心を国境に向けられて、戦場にす士卒たちのことも思うていただきとうござる。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ま、ま、めしあがれ、熱いところを。ね、御緩ごゆっくり。さあ、これえ、お焼物やきものがない。ええ、間抜けな、ぬたばかり。これえ、御酒ごしゅ尾頭おかしら附物つきものだわ。ぬたばかり、いやぬたぬたとぬたったおんなだ。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おれがじきに連れて来てやると御自身でお出かけになるところを、なにしろあの通り御酒ごしゅを召していらしって、お足元がお危のうございますから、それには及びませぬ、お手紙でもいただきますれば
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多分御酒ごしゅを飲んで暴れか何か致して斬り殺されてしまいましたのでございましょう、その検屍の事から葬式も此の難儀の中でわたくしが出す様な事でございまして
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
若い者のおとなしいのは可憐いじらしい。亡き殿も、平常ふだん御謹厳ごきんげんであったが、御酒ごしゅでもくださるとなれば、若侍には、おとがめなく何事もゆるされた。きょうは、御酒をいただこう
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、硯友社けんゆうしゃより、もっと前、上杉先生などよりなお先に、一輪、大きく咲いたという花形のあけぼの女史と聞えたは、浅草の牛肉屋の娘で——御新客ごしんきなべ御酒ごしゅ——帳場ばかりか、立込むと出番をする。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まことに相済みませんが、先程のお丼と御酒ごしゅは間違いました」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)