がわ)” の例文
あまがわが大分まわり大熊星おおぐまぼしがチカチカまたたき、それから東の山脈の上の空はぼおっと古めかしい黄金きんいろに明るくなりました。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、藤沢遊行寺の陣からこの口へ、一番に立たせておいたおいの新田ノ蔵人七郎氏義を、行合ゆきあい(行逢)がわの本陣へ呼びつけた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二、三年前の、都新聞の正月版に、私は横綱男女みながわいて書いたが、ことしは横綱双葉山に就いて少し書きましょう。
横綱 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼等の枕に響いたのは、ちょうどこの国の川のように、清いあまがわ瀬音せおとでした。支那の黄河こうが揚子江ようすこうに似た、銀河ぎんがの浪音ではなかったのです。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そらあおぎますとあまがわが、下界げかいのことをらぬかおに、むかしながらのままで、ほのぼのとしろながれているのでありました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あまがわ澄渡すみわたった空にしげった木立をそびやかしている今戸八幡いまどはちまんの前まで来ると、蘿月はもなく並んだ軒燈の間に常磐津文字豊ときわずもじとよ勘亭流かんていりゅうで書いた妹の家のを認めた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ちょうど紅葉もみじ時分で、王子おうじたきがわって瓢箪ふくべの酒を飲干して、紅葉を見にく者は、紅葉の枝へ瓢箪を附けて是をかつぎ、なりは黒木綿の紋付に小倉の襠高袴まちだかばかま穿いて
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一、初心の人あまがわの題を得て句をものせんとす。心頭づ浮び来る者は
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
殊に一番人気のある信乃を主役として五犬士の活躍するは、大塚を本舞台として巣鴨すがも池袋いけぶくろたきがわ王子おうじ・本郷にまたがる半円帯で、我々郊外生活者の遊歩区域が即ち『八犬伝』の名所旧蹟である。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
天上のあまがわがすっかり凍って、その凍った流れが滝になって、この世界の地上のいちばん高いところから、どうっと氷の大洪水が地上いっぱいに十重とえ二十重はたえも取りまいて、人畜は言わでものこと
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ですからもしもこのあまがわがほんとうに川だと考えるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利じゃりつぶにもあたるわけです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
白々しろじろとして、ぎんのペンセルのように、あまがわが、しんとした、よるそらながれて、そのはし地平線ちへいせんぼっしていました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
一方、桐野・篠原・池上隊などは、玖満くま(球磨)がわを下って八代やつしろへ向っています。西郷殿の所在はしかとわかりませんが、横川に宿営したのが事実のようであります。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸山の原は東京の近郊に珍らしい広開こうかいしたである。目白めじろの奥から巣鴨すがもたきがわへかけての平野は、さらに広い武蔵野むさしのの趣を残したものであろう。しかしその平野はすべ耒耜らいしが加えられている。
ところが、つかまえられる鳥よりは、つかまえられないで無事にあまがわの砂の上に降りるものの方が多かったのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このとき、あちらの、くろもりあたまへ、ほんのりとしろく、ちちをながしたように、あまがわえました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あまがわの西の岸にすぎなの胞子ほうしほどの小さな二つの星が見えます。あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる小さな水精すいしょうのお宮です。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あきに なるので、あまのがわの こうじが はじまったから、それを みて いらっしゃるの。」
おほしさま (新字新仮名) / 小川未明(著)
あまがわの西の岸に小さな小さな二つの青い星が見えます。あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星様でめいめい水精すいしょうでできた小さなお宮に住んでいます。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あいかわらず、そのも、まちほうからはれたよい音色ねいろこえてきました。乳色ちちいろあまがわが、ほのぼのとゆめのようにそらながれています。ほし真珠しんじゅのようにかがやいています。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのまっ黒な、松やならの林をえると、にわかにがらんと空がひらけて、あまがわがしらしらと南から北へわたっているのが見え、またいただきの、天気輪の柱も見わけられたのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
樺には新らしいやわらかな葉がいっぱいについていいかおりがそこら中いっぱい、空にはもうあまがわがしらしらと渡り星はいちめんふるえたりゆれたりともったり消えたりしていました。
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてもう一度、東から今のぼったあまがわの向う岸のわしの星に叫びました。
よだかの星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そらがあんまりよくれてもうあまがわの水は、すっかりすきとおって冷たく、底のすなごも数えられるよう、またじっと眼をつぶっていると、その流れの音さえも聞えるような気がしました。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
獅子鼻の上の松林まつばやしは、もちろんもちろん、まっ黒でしたがそれでも林の中に入って行きますと、そのあしの長い松の木の高いこずえが、一本一本空のあまがわや、星座にすかし出されて見えていました。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)