さん)” の例文
宛然さながら、ヒマラヤさんあたりの深い深い万仭の谷の底で、いはほと共に年をつた猿共が、千年に一度る芝居でも行つて見て居る様な心地。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
四国阿波あわの国第一の峻峰しゅんぽう、つるぎさんいただきから一羽の角鷹くまたかが、バタバタバタと翼を鳴らして斜めに飛び、やがて、模糊もことしたかすみの底へ沈んで行った。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私達の握りこぶし二つがけ位の穴を地べたで見つけて、一ばんしたへは枯草だの草の穗だけで圓い穴形あながたをこしらへ、上へは馬の毛をたくさんれて柔かい床を拵へる。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
ウルピノさん聖人ひじりおつしやつたやうに、むかしから色々いろ/\口碑くちつたへのあるなかで、船旅ふなたびほど時日ときえらばねばならぬものはありません、凶日わるいひ旅立たびだつたひと屹度きつと災難わざはひ出逢であひますよ。
やがて、ふじさんが、大きくみえてきました。二十めんそうは、ふじ山のうらのほうへまわっていきます。
かいじん二十めんそう (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さん豺狼さいろう麋鹿びろくおそれ従はぬものとてなかりしかば、虎はますます猛威をたくましうして、自ら金眸きんぼう大王と名乗り、数多あまた獣類けものを眼下に見下みくだして、一山万獣ばんじゅうの君とはなりけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
その時つい気のついたはむろさんからいたゞいて毒消どくけし御封ごふう、これさいはひと懐中ふところに手を入れましたがつゝみのまゝ口へれて雪をつかんでれてみましたが、毒消どくけし御利益ごりやく
合衆国がっしゅうこく桑港サンフランシスコから、国の中央を横切っている、かの横断鉄道には、その時、随分ずいぶん不思議なはなしもあったが、何分なにぶんロッキーさんの山奥を通過する際などは、そのあたり何百里というもの
大叫喚 (新字新仮名) / 岩村透(著)
巴屋の主人のさん三郎の身體を、ギユウと押し潰すやうな恰好になつてゐたといふのです。
少年しょうねんは、じいさんから、不思議ふしぎたのみをけて、ふくろって、この地球ちきゅううえあるきました。あるかれはアルプスさんなかあるいていますと、いうにいわれぬいい景色けしきのところがありました。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このこと西暦せいれき千九百二年せんくひやくにねん五月八日ごがつやうかマルチニックとうプレーさん噴火ふんかついしるしたとほりであるが、サンピール二萬六千にまんろくせん人口中じんこうちゆう生存者せいぞんしや地下室ちかしつ監禁かんきんされてゐた一名いちめい囚徒しゆうとのみであるので
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
言語はもとより多端なり。さんと云ひ、がくと云ひ、ほうと云ひ、らんと云ふ。義の同うして字の異なるを用ふれば、即ち意を隠微のかんぐうするを得べし。大食おほぐらひを大松だいまつと云ひ差出者さしでもの左兵衛次さへゑじと云ふ。
師の名は疎石そせき夢窓むそうと号して、ねいさん会下えかに参じ、仏国禅師ぶっこくぜんじの法脈をつぎ、今や、五山第一のとなえもあるとか。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、無用だ、——俺の心の中に残る、昔のお綾殿のおもかげでたくさんだ」
主人のさん三郎さんは、物の迷ひで、お前といふ女に手を出した。あんなに立派な内儀はあるが、内儀は綺麗過ぎ、賢こ過ぎ、それに身體も丈夫でなく、山三郎の氣に入つてばかりはゐなかつた。
ここより三十里彼方かなたに、五だいさんという名山がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人のさん三郎さんは、物の迷いで、お前という女に手を出した。あんなに立派な内儀はあるが、内儀は綺麗過ぎ、賢こ過ぎ、それに身体も丈夫でなく、山三郎の気に入ってばかりはいなかった。
九里さんの草木は知ってるとサ、戦場のあとだとサ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私共は腹違いの兄妹で、私はさん之助、妹はお比奈ひなと申します。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)