つき)” の例文
旧字:
そも/\くま和獣わじうの王、たけくしてる。菓木このみ皮虫かはむしのるゐをしよくとして同類どうるゐけものくらはず、田圃たはたあらさず、まれあらすはしよくつきたる時也。
気のつきた折は是非世間の面白可笑おかしいありさまを見るがよいと、万事親切に世話して、珠運がえまに恋人のすみし跡に移るを満足せしが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そうなれば人類文化の運のつきではないか。これを以てこれを見れば、鼻の表現の研究宣伝は不可能である。可能であっても不賛成である。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
我輩も策に於てはあまり人に劣らぬという自信をもっておるが、あずさ君が事に処し物に当って、その策の滾々こんこんとしてつきざる奇才には我輩もすこぶる驚いた。
東洋学人を懐う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
この道ならば栃本から一日で楽に此山に登ることが出来る。十文字峠の道が三峰図幅の左の端で正につきんとしている所が、林道への入口に当っている。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
忘れもせぬ其奴そやつこそ、得三に使わるる八蔵という悪僕なれば、害心もあらんかと、用心に用心して、この病院の裏手まで来りしに、思えば運のつきなりけん。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
代匠記に、「草深キ野ニハ鹿ヤ鳥ナドノ多ケレバ、宇智野ヲホメテふたたび云也いふなり」。古義に、「けふの御かり御獲物えもの多くして御興つきざるべしとおぼしやりたるよしなり」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
人がはいってゆけば、その人を対手あいてにしてつきることなく、綿々めんめんと語り、悲嘆にくれるので、慰めようもなくて、捕虜になるのは禁物だと敬遠しあったほどだった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
『市之丞様、もう運のつきだ。あっしゃあ、平四郎に責められて、もうすっかり喋舌しゃべってしまいましたぜ』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
握りめ「是が本統に、運のつきと、云う者です」と言掛けて涙にむせぶ目「運の尽とはう云う者です、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
久々の逢瀬おうせに語りつきせぬ其のを明しまして、一日二日と過ぎます内にはや三月の花見時、向島の引ける頃、混雑の人を掻退かきのけ/\一人の婦人が立花屋へ駈付けてまいりまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いゝえよ、吾妻はこゝで死んだんだ。」小倉はしみ/″\した挙止とりなしで「火に追われて小梅からこゝへ逃げたんだ。——土手へさえ出ればいゝと思ったのがあの男の運のつきだったんだ。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
『だつて全く貴様あなたにお願ひして見るほか方法がつきちやつたのですよ……。』
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ごみごみしたそれらの町家まちやつきる処、備前橋びぜんばしの方へ出るとおりとの四辻よつつじに遠く本願寺の高い土塀と消防の火見櫓ひのみやぐらが見えるが、しかし本堂の屋根は建込んだ町家の屋根にさえぎられてかえって目に這入はいらない。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
川と流れて名はつき
県歌 信濃の国 (新字新仮名) / 浅井洌(著)
としつきひとかへらず
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
入れるとすぐ、御主君の石碑にお会い申しあげるのもつきせぬ縁かと、思わず涙をもよおしてしまったわけじゃ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と島人を励まして、岩と岩との間に櫓をはさんで舟をこじり出そうと致しましたのが運のつき、すわと云うに櫓は中程よりポッキと折れてしまう。そのはずみに舟は再び海上に飛出しました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
書物はよめるかえ、消息往来庭訓ていきんまでは習ったか、アヽ嬉しいぞ好々よしよし、学問も良い師匠をつけてさせようと、慈愛はつきぬ長物語り、さてこそ珠運が望み通り、この女菩薩にょぼさつ果報めでたくなり玉いしが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
文化のはじめ大雪の時高田の市中(町のながさ一リにあまる)雪にうづまりて闇夜あんやのごとく、昼夜ちうやをわかたざる事十余日、市中ともしびの油つきて諸人難義せしに、御領主りやうしゆより家毎に油をたまひし事ありき。
そして知らず/\あとを追ふて仲店なかみせつきるあたりまで来たが、若い芸者の姿すがた何処どこ横町よこちやうまがつてしまつたものか、もう見えない。両側りやうがはの店では店先を掃除さうぢして品物をならべたてゝゐる最中さいちゆうである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
文化のはじめ大雪の時高田の市中(町のながさ一リにあまる)雪にうづまりて闇夜あんやのごとく、昼夜ちうやをわかたざる事十余日、市中ともしびの油つきて諸人難義せしに、御領主りやうしゆより家毎に油をたまひし事ありき。
文「これ、吉とやらく聞けよ、生前にの様な悪事を働いても、臨終いまわきわに其の罪を懺悔すれば、慈悲深き神様は其方そちの未来を加護し給うぞ、さらりと悪心を去って静かに命数のつきるを待て」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして知らず知らずその後を追うて仲店なかみせつきるあたりまで来たが、若い芸者の姿は何処どこ横町よこちょうへ曲ってしまったものか、もう見えない。両側の店では店先を掃除して品物を並べたてている最中さいちゅうである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
(用)……おこり……居着いつき……つき
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嵐烈しゅう余寒も未だつき
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)