小母をば)” の例文
まあ、父さんも、どんなに幼少ちひさ子供こどもだつたでせう。東京行とうきやうゆき馬車ばしやなかには、一緒いつしよ乘合のりあはせた他所よそ小母をばさんもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これは渠がよく遊びに行く芸者のうちで、蝶吉と小駒の二人が、「小母をばさん」と呼ぶ此女を雇つて万事の世話を頼んで居る。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
河村の小母をばさんは、何の挨拶もなく庭口からのつそりと現れた純吉を見つけて、持前の機嫌の好さで叱るやうに訊ねた。
(新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「つい、小母をばさんに、御客さんのる事を云つて置かなかつたものですからな」と門野かどのは気の毒さうにあたまいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おい、こら、初坊、もう帰るんだよ。こゝへ来て、小父をぢさんや小母をばさんに「さよなら」をいひなさい。
五月晴れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
かうには母などは居ません。手伝ひ人の小母をばさん位がおもな人で、女中や雇ひお婆さんなどばかりです。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
この童謡は国国くにぐに色色いろいろと歌ひくづされてゐます。しかし、みんなあのあかい円いつやつやしたお月様を、若い綺麗きれい小母をばさまだと思つてゐます。まつたくさう思へますものね。
お月さまいくつ (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「なんだ、苺のジヤムか。めづらしくもないや。小母をばさん、僕いつも苺畑に働いてるんだよ。」
同時に又いつかお民の名は一村の外へもひろがり出した。お民はもう「稼ぎ病」に夜も日も明けない若後家ではなかつた。いはんや村の若衆などの「若い小母をばさん」ではなほ更なかつた。
一塊の土 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「でも、小母をばさんは病氣びやうきときたかつて、いまだれないんぢやないか。」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
烏の小母をばさん 機織つてた
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
そのらない小母をばさんがたびふくろからお菓子くわしなぞをしまして、それをとうさんにおあがりとつてれたこともありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『まあ小母をばさんは!』と同情深い眼を上げて、『小母をばさんは何だわね、私を家の人の樣にはして下さらないのね?』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
また御出掛でかけですか。よござんす。洋燈ランプわたくしが気をけますから。——小母をばさんが先刻さつきからはらいたいつてたんですが、なにたいした事はないでせう。御緩ごゆつく
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私と弟とが母と姉の中に腰を掛けた馬車の中の向側には、妹を抱いた乳母うばや女中が居ました。親類の小母をばさんなども居ました。私の家の大阪行には、必ず決つた様式がありました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
小母をばさん、マスクはないんですか。早く逃げなきや駄目ですよ。弱つたな。もう起てないんだね。待ち給へ、おゝい、救護班……救護班来てくれ。苦しいの。さう/\、喉が苦しい。
小母をばさん頂戴ちやうだいな」「其蟲そのむし頂戴ちやうだいな」とくうちに、むしは、うつくしいはねひろげず、しづかに、鷹揚おうやうに、そしてかるたて姿すがたさばいて、水馬みづすまし細波さゝなみかけごとく、ツツツと涼傘ひがさを、うへ梭投ひなげにくとおもふと
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「さうだよ、なにか用なの、小母をばちやん。」
 森の小母をばさん 山彦さん
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
かへろ小母をばさんものへぬ。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
小母をばさん、さうはたらいちやわるいだらう。先生の膳は僕が洗つて置くから、彼方あつちつてやすんで御出おいで」とばあさんをいたはつてゐた。代助は始めてばあさんの病気の事を思ひした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今迄お利代の坐つてゐた所には、長い手紙が擴げたなりに逶迤のたくつてゐた。ちらとそれを見乍ら智惠子は室に入つて、『マア臥床おとこまで延べて下すつて、濟まなかつたわ、小母をばさん。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかし、小母をばさんだつておんなじレコードには聴き飽きてらつしやる筈ですよ。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
いくらつてもつても、なか/\東京とうきやうへはかないものですから、しまひにはとうさんも馬車ばしや退屈たいくつしまして、他所よそ小母をばさんにかれながらそのひざうへねむつてしまつたこともりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
小母をばさんもへんだ、第一だいいち嬌瞋けうしん」をはつしようし……そこンところがなんとなく、いつのまにか、むかうが、あねが、あねが、といふから、年紀としわたしうへなんだが、あねさんも、うちつけがましいから、そこで
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小母をばさん、今日こんにち
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
向ふの小母をばさん
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
小母をばさん!』と智恵子は口早に圧付おしつける様に言つた。そして優しい調子で
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
人のことを小母をばさんだなんて、あなたは、いつたい、おいくつ?
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
鼠の小母をばさん
蛍の灯台 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
『マア臥床おとこまで延べて下すつて、済まなかつたわ、小母をばさん。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
では、御免あそばせ……小母をばさまによろしく……。
五月晴れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
猫の小母をばさん
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
小母をばさん、私の顏紅くなつて?』と箸を動かしながら訊いた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
小母をばさんは?
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)