「まア随分暫らくでしたね。それで何日此方へ帰つたの?」 河村の小母さんは、何の挨拶もなく庭口からのつそりと現れた純吉を見つけて、持前の機嫌の好さで叱るやうに訊ねた。 「四五日前……」 純吉はわけもなくにやにやしながらうつかりそんな嘘を吐いた …
著者 | 牧野信一 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
初出 | 「サンデー毎日 第三巻第二十九号」大阪毎日新聞社、1924(大正13)年7月1日 |
文字種別 | 新字旧仮名 |
読書目安時間 | 約12分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約20分(300文字/分) |