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寓居
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ぐうきょ
ふりがな文庫
“
寓居
(
ぐうきょ
)” の例文
然れども不幸にしてその志を果さず
僅
(
わずか
)
に歌麿北斎二家の詳伝を著したるのみにして千八百九十六年病みて
巴里
(
パリー
)
の
寓居
(
ぐうきょ
)
に歿したりき。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
道庵先生がこの庵へ移った時の庵と、お銀様が
寓居
(
ぐうきょ
)
していた時の庵と、庵に変りはありませんが、中の意匠調度は一変しておりました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
舞陽
(
ぶよう
)
の人、
陳巌
(
ちんがん
)
という者が
東呉
(
とうご
)
に
寓居
(
ぐうきょ
)
していた。唐の
景龍
(
けいりゅう
)
の末年に、かれは
孝廉
(
こうれん
)
にあげられて都へゆく途中、
渭南
(
いなん
)
の道で一人の女に逢った。
中国怪奇小説集:06 宣室志(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とりあえず、彼はこのことを国もとの妻子に知らせ、多吉方を仮の
寓居
(
ぐうきょ
)
とするよしを書き送り、旅の心もやや定まったことを告げてやった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
予往歳
滬江
(
ココウ
)
(上海のこと)ニ
寓居
(
ぐうきょ
)
ス。先後十年間、東邦ノ賢豪長者、道ニ
滬上
(
こじょう
)
ニ出ヅルモノ、
縞紵
(
こうちょ
)
ノ歓ヲ
聯
(
つら
)
ネザルハナシ。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
「大隅さんのお嫁さんが見つかりました。」と山田君は久しぶりに私の
寓居
(
ぐうきょ
)
を訪れて、
頗
(
すこぶ
)
る緊張しておっしゃるのである。
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
このいちごの事がいつまでも忘れられぬので余は東京の
寓居
(
ぐうきょ
)
に帰って来て後、庭の垣根に西洋いちごを植えて楽んでいた。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
一生他人たるまじと契りたる村越欣弥は、ついに幽明を隔てて、
永
(
なが
)
く恩人と相見るべからざるを憂いて、宣告の夕べ
寓居
(
ぐうきょ
)
の二階に自殺してけり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
長き
海路
(
うみじ
)
も
恙
(
つつが
)
なく無事横浜に着、直ちに汽車にて上京し、
神田
(
かんだ
)
錦町
(
にしきちょう
)
の
寓居
(
ぐうきょ
)
に入りけるに、一年余りも先に来り居たる叔母は大いに喜び、一同を
労
(
いた
)
わり慰めて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
後には、牛込の
寓居
(
ぐうきょ
)
に残して来た妻子のことや、半分なげやりにして来た会社の仕事のことなどが思い出されて、とりとめのない考えにふけっていたのである。
猫と村正
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
むかし、余が駒込
蓬莱
(
ほうらい
)
町に
寓居
(
ぐうきょ
)
せしとき、門前に寺の墓地があって、その間を通過せざれば出入ができぬ。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
とこう決心を付けてその夕方
寓居
(
ぐうきょ
)
に帰りました。この頃私はサンスクリット語の書物を買うことに
奔走
(
ほんそう
)
して三部ばかりとまた外の参考品なども余程買い
整
(
ととの
)
えた。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ジョン・ヒンクマン氏の田園住宅は、いろいろの理由から僕にとっては
甚
(
はなは
)
だ愉快な場所で、やや無遠慮ではあるが、まことに
居心地
(
いごこち
)
のよい接待ぶりの
寓居
(
ぐうきょ
)
であった。
世界怪談名作集:17 幽霊の移転
(新字新仮名)
/
フランシス・リチャード・ストックトン
(著)
右は小生自身したしく
目睹
(
もくと
)
して確かめたる事実にて、昨夜
馬蹄
(
ばてい
)
にかかりて非業の死を遂げたる一酔漢の
寓居
(
ぐうきょ
)
に
於
(
おい
)
て、御子息はいかがわしき生業を営みおるその娘に
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
だが、仮の
寓居
(
ぐうきょ
)
にせよ、中学は復活しても、「勉強」はまだそこにかえってきたわけではなかった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
咸通
(
かんつう
)
元年の春であった。久しく
襄陽
(
じょうよう
)
に往っていた温が長安に
還
(
かえ
)
ったので、李がその
寓居
(
ぐうきょ
)
を訪ねた。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
自分はある友と市中の
寓居
(
ぐうきょ
)
を出でて三崎町の停車場から境まで乗り、そこで下りて北へ
真直
(
まっすぐ
)
に四五丁ゆくと桜橋という小さな橋がある、それを渡ると一軒の
掛茶屋
(
かけぢゃや
)
がある
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
九月五日動物園の大蛇を見に行くとて京橋の
寓居
(
ぐうきょ
)
を出て通り合わせの鉄道馬車に乗り上野へ着いたのが二時頃。今日は曇天で暑さも薄く道も悪くないのでなかなか公園も
賑
(
にぎ
)
おうている。
根岸庵を訪う記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それから私の本郷の
寓居
(
ぐうきょ
)
へ立ちよって、
一緒
(
いっしょ
)
に発送をするのを例とせられていた。
左千夫先生への追憶
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
葛城山ではまた二日間修業して、十二日の午後三時
比
(
ごろ
)
貝塚の
寓居
(
ぐうきょ
)
へ帰った。
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は初対面の心持で氏の
寓居
(
ぐうきょ
)
を訪ねた。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
秋田藩
物頭役
(
ものがしらやく
)
として入京していた平田鉄胤が
寓居
(
ぐうきょ
)
のあるところだという
錦小路
(
にしきこうじ
)
——それらの町々の名も、この人の口から出る。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
運送店に捜すよう
詰責
(
きっせき
)
したが、絶えて返事が無かった。ただ、先生のお写真のみは今なお僕の
北京
(
ペキン
)
の
寓居
(
ぐうきょ
)
の東側の壁に、書卓のほうに向けて掛けてある。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
余の
寓居
(
ぐうきょ
)
した今井町の高台などは遠い田舎に行ったようで空気は新鮮で
煤烟
(
ばいえん
)
が無いから、住宅や商店のあるは黒くあるは白く引続いているあたりを越して
仮寐の夢
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
こういうような喜びを持ちつつまたもカッサパ
仏陀
(
ぶっだ
)
の
大塔
(
だいとう
)
の下に在る
寓居
(
ぐうきょ
)
に帰って参りました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
暫
(
しばら
)
く秘して人に知らしむる
勿
(
なか
)
れとの事に、妾は不快の念に
堪
(
た
)
えざりしかど、かかる不自由の身となりては、今更に
詮方
(
せんかた
)
もなく、彼の言うがままに従うに
如
(
し
)
かずと閑静なる処に
寓居
(
ぐうきょ
)
を
構
(
かま
)
え
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
学士は
胸騒
(
むなさわぎ
)
がして、瑞林寺のその
寓居
(
ぐうきょ
)
に胸を
圧
(
おさ
)
えて坐するに忍びず、常にさる時は
行
(
ゆ
)
いて時を消すのが例であった湯島から、谷中に帰る
途
(
みち
)
の暗がりで、
唐突
(
だしぬけ
)
に手を捕えたのは一名の年若き警官である。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
濹東綺譚は若し帚葉翁が世に在るの日であったなら、わたくしは稿を脱するや否や、直に走って、翁を
千駄木町
(
せんだぎまち
)
の
寓居
(
ぐうきょ
)
に
訪
(
おとな
)
い其閲読を
煩
(
わずらわ
)
さねばならぬものであった。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
決心の
臍
(
ほぞ
)
を固む
寓居
(
ぐうきょ
)
への帰路、馬上より
遙
(
はる
)
かの空を眺めますと、世界第一のゴーリサンガの高雪峰の
巍然
(
ぎぜん
)
として
雲際
(
くもぎわ
)
に
聳
(
そび
)
え千古
不磨
(
ふま
)
の姿を現わして居るのを
看
(
み
)
て大いに感じたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
沈んだ日光は、寒い車の上から、私の眼に映った。林の間は黄に
耀
(
かがや
)
いた。私は眺め、かつ震えた。小諸の
寓居
(
ぐうきょ
)
へ帰ってからも、私はそう
委
(
くわ
)
しいことを家のものに話して聞かせなかった。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
女だって君よりは孤独に堪える力を持っている、女、三界に家なし、というじゃないか、自分がその家に生れても、いつかはお嫁に行かなければならぬのだから、父母の家も
謂
(
い
)
わば
寓居
(
ぐうきょ
)
だ
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
大阪なる安藤氏の宅に
寓居
(
ぐうきょ
)
すること
数日
(
すじつ
)
にして、
妾
(
しょう
)
は八軒屋という
船付
(
ふなつ
)
きの宿屋に
居
(
きょ
)
を移し、ひたすらに渡韓の日を待ちたりしに、
一日
(
あるひ
)
磯山
(
いそやま
)
より
葉石
(
はいし
)
の
来阪
(
らいはん
)
を報じ
来
(
きた
)
り急ぎその旅寓に来れよとの事に
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「
館松
(
たてまつ
)
さんは、もう
錦小路
(
にしきこうじ
)
(鉄胤の
寓居
(
ぐうきょ
)
をさす)をお
訪
(
たず
)
ねでございましたか。」
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
五月十六日
遠山雲如
(
とおやまうんじょ
)
が京師の
寓居
(
ぐうきょ
)
に没した。享年五十四。『雲如先生遺稿』には
洛北
(
らくほく
)
愛宕
(
あたご
)
郡浄善寺に葬るとしてあるが、『平安名家墓所一覧』には寺町
今出川
(
いまでがわ
)
上ル上善寺としてあるそうである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
高輪東禅寺の境内にある青木の
寓居
(
ぐうきょ
)
を指して、捨吉は菅と連立って出掛けた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
かくて作る所の小説四、五篇にも及ぶほどに専門の小説家につきて教を乞ひたき念
漸
(
ようや
)
く押へがたくなりければ遂に
何人
(
なんびと
)
の紹介をも
俟
(
ま
)
たず
一日
(
いちにち
)
突然広津先生の
寓居
(
ぐうきょ
)
を尋ねその門生たらん事を請ひぬ。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
仮の
寓居
(
ぐうきょ
)
と定めている多吉の家に近づけば近づくほど、名のつけようのない寂しさが彼の胸にわいた。彼は泣いていいか笑っていいかわからないような心持ちで、教部省の門を出て来たのである。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“寓居”の意味
《名詞》
寓居(ぐうきょ)
仮の住まい。
自分の住居の謙称。
(出典:Wiktionary)
寓
漢検準1級
部首:⼧
12画
居
常用漢字
小5
部首:⼫
8画
“寓”で始まる語句
寓
寓意
寓話
寓言
寓目
寓喩
寓意譚
寓類
寓所
寓處