夕飯ゆふはん)” の例文
夕飯ゆふはん後など、原稿が書けないでゐると、風の加減で山の上から若葉越しに軽快なダンス・ミユージツクが、手に取るやうに聞えて来る。
私の社交ダンス (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
この日も終日私は船室をでず、夕飯ゆふはんの時からうじて食堂に参りさふらひしが、何ばかりの物も取らず人目醜きことと恥しく思ひ申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
湯に入りに行く前、一人の女中が入つて來て、夕飯ゆふはんには何を仕度しやうと尋ねた。「御酒をつけますか。」斯う附添して言つた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其れ夕飯ゆふはんよ、其れ顔洗ふ湯をとれ、と台所をひしめかして、夜会の時間は午後八時、まだ時もあれど用意は早きが宜しと、早速更衣かういにかゝりぬ。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
新潮社の中村さんが来た。何度逢つても例のやうな私には覚える事の出来憎い顔であるなどと話しながら思つて居た。夕飯ゆふはんを味噌漬の太刀魚さんまで食べた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
調しらやらんとて臺所へ上て休息きうそくさせけるさて其日もくれに及び夕飯ゆふはんなど與へられ夜に入て亭主は仲間帳面なかまちやうめん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
考へるのは、おやめなさい。きつと明日はお目にかゝれるでせう。さあ、お夕飯ゆふはんですよ。
三四日前さんよつかぜんかれ御米およね差向さしむかひで、夕飯ゆふはんぜんいて、はなしながらはしつてゐるさいに、うした拍子ひやうしか、前齒まへばぎやくにぎりゝとんでから、それがきふいたした。ゆびうごかすと、がぐら/\する。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
内心ないしんには、あによめつやことまたあきこと、さすがにことをしたとおもはないから、村近むらぢかだけにあしのうらがくすぐつたい。ために夕飯ゆふはん匇々さう/\燒鮒やきぶなしたゝめて、それから野原のはらかゝつたのが、かれこれよる十時過じふじすぎになつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さあ 夕飯ゆふはんがすんだら 今晩こんばんはみんなにいいものを見せてあげるぞ
ぢいやは心配しんぱいして、とうさんをひなだめにれましたが、とうさんはだれことれずに、みんなの夕飯ゆふはんむまでそこにちつくしました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
夕飯ゆふはんを済ませて明るいうちにとこを敷いてしまつた。麟に狐の子供と鳩ぽつぽのお伽噺をして聞かせた。金尾さんが来た。蒲原かんばらさんへ行つた帰りださうである。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まだ夕飯ゆふはんまへである。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
那地あち此地こちたづね居しが此所で御目に懸らうとは夢にも存ぜずと云時勝手かつてにて御花さん/\とよぶこゑの聞ゆるにぞ然らば後にと云捨て御花はやがて立去けりかくて忠八は三年ごしたづわびたるお花にはからずも今宵こよひめぐり逢たることなれば一時にかねてののぞみ足ぬと湯もそこ/\にして上り夕飯ゆふはん仕舞しまひお花の知せを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あか/\とえるたのしさうなも、みんなが夕飯ゆふはんべるさまも、にはなししたからよくえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
子供等は持つて帰つた林檎をおいしさうに食べるのであつたが、私は一れも食べる気がしなかつた。夕飯ゆふはんの時に阪本さんが来た。留守の間に浅草の川上さんのお使つかひが見えたさうである。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
夕飯ゆふはんは蔵裏の下座敷であつた。人々は丑松を取囲とりまいて、旅の疲労つかれを言慰めたり、帰省の様子を尋ねたりした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
冷たい夕飯ゆふはんを頂きました。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うちにはひろいた玄關げんくわんと、田舍風ゐなかふう臺所だいどころ入口いりぐちと、入口いりぐちが二つになつてましたが、その臺所だいどころ入口いりぐちからますと、爐邊ろばたではもう夕飯ゆふはんはじまつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)