埴輪はにわ)” の例文
んなことで一かう要領えうりやうず、山頂さんてうはうでは、わづかに埴輪はにわ破片はへん雲珠うず鞆等ともなど)を見出みいだしたのみ、それで大發掘だいはつくつだいくわいをはつた。
この埴輪はにわといふ言葉ことばはにといふのは粘土ねんどといふことで、といふのはかたちならべることから名前なまへだといふことであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
埴輪はにわで見た清らかさの美が又此処にも在る。ここには又節度の美がある。高さの美がある。肉体を超えた精神至上の美がある。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
そこに埴輪はにわとも玩具おもちゃの人形とも判らない七寸ぐらいの古い古い土の人形があって、その傍に一ぴきの小さな黒蛇が死んでいた。
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
埴輪はにわをいじったり、万葉の歌を拾い読みしたりしては一種の雰囲気を自分のまわりに漂わせて、ひとりでいい気になっているぐらいのものだ。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
しかし、君長ひとこのかみの葬礼は宮人みやびとたちの手によって、小山の頂きで行われた。二人の宿禰すくねと九人の大夫だいぶに代った十一の埴輪はにわが、王のひつぎと一緒に埋められた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
信吉しんきちは、埴輪はにわときいて、いつか雑誌ざっしっていた、しろうまったあか人形にんぎょうおもしました。それは、おもってもなつかしい、むねのおどるものでした。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
生きた埴輪はにわのように血の中に座らされている右衛門の顔は、真蒼になりながら泣き続けている。しかし緊張した神経には刑部の言葉はわかったのであろう。
三浦右衛門の最後 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そこに居るはずもない人間が居たのはとにかく、生ける埴輪はにわとされた土中のおりんをなぜ助けてやらないのか。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
埴輪はにわというのは、元来はその言葉の示している通り、埴土で作った素焼き円筒のことである。それはたぶん八百度ぐらいの火熱を加えたものらしく、赤褐色を呈している。
人物埴輪の眼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
埴輪はにわなどを見附みつけて一時間いちじかんとたたないうち千円せんえん千五百円分せんごひゃくえんぶんったことがあるそうです。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しいていえば、国史でおそわった日本の埴輪はにわに、どことなく似ています。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
埴輪はにわもここより出づ。また石斧石刀の類も出づ。蓮台野には蝦夷銭えぞせんとて土にて銭の形をしたる径二寸ほどの物多く出づ。これには単純なる渦紋うずもんなどの模様あり。字ホウリョウには丸玉・管玉くだたまも出づ。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これは、我が国では、埴輪はにわ人形の昔より、人間や、人間が愛していた動物などの形をつくって、それが生埋いきうめになることからのがれさせて呉れたのであるが、その後、愛玩物としての人形が発達した。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鋳られてはひとつ形のひと色の埴輪はにわのさまにかまど出でむか
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
また埴輪はにわ人形にんぎよううまおなかたちのものを、いしつくつておはかてたこともありました。これを石人せきじん石馬せきばなどゝまをしてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
埴輪はにわというのは上代古墳の周辺に輪のように並べ立てた素焼の人物鳥獣其の他の造型物であって、今日はかなり多数に遺品が発掘されている。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
それでは、野見宿禰のみのすくね獻言けんげんしてつくした埴輪はにわ土偶どぐうとはべつに、すでに三千ねんぜん太古たいこおいて、土偶どぐうつくられてつたのですね
きみには、埴輪はにわがいいだろう。東京とうきょうかえったら、一ついい模型もけいをさがしてあげましょう。」といいました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼女の体は、鶏血草を掘り返したあなの中へ突き落とされて、忽ち土をもってめられようとする。生ける埴輪はにわは生きながら埋められてゆく身をもがくのみです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど古代の人々がふいとした思いつきで埴輪はにわをつくりあげたような気もちで、書いてやろうとおもって、古代の研究がてら、大和にやってきて、毎日寺々を見て歩いているうちに
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
埴輪はにわもここより出づ。また石斧・石刀の類も出づ。蓮台野には蝦夷銭とて土にて銭の形をしたる径二寸ほどの物多く出づ。これには単純なる渦紋うづもんなどの模様あり。字ホウリヤウには丸玉・管玉も出づ。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
たゞ埴輪はにわといつて、ひとぞう動物どうぶつかたちつぼかたちつちつくつたものがならべてあつたことは、そののこものがあるのでわかります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
活東子くわつとうしはなうごめかして『いや、これは、埴輪はにわよりずツとふる時代じだい遺物ゐぶつです。石器時代せききじだい土器どき破片はへんです』と説明せつめいした。
というと安蔵が、手に持っていた埴輪はにわを、力まかせに彼方の樹の幹へ向ってなげつけました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕は万葉集をひらいたり埴輪はにわの写真を並べたりしながら、十二時近くまで起きていて、五つか六つぐらい物語の筋を熱心に立ててみたが、どれもこれも、いざ手にとって仔細しさいに見ていると
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
まさかは、摺鉢すりばち破片かけかともはなかつた。が、それは埴輪はにわ破片はへんだらうとうてうてた。
信長が本曲輪ほんぐるわの広庭を、大玄関のほうへ迂回うかいして来ると、中門あたりからその辺まで、埴輪はにわ土器のような泥にまみれた武将とその部下が、暁天の下に、白い息をひげに凍らせて、粛然しゅくぜんと整列していた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより埴輪はにわや土器などには目もくれない。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)