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くちおし
ふりがな文庫
“
口惜
(
くちおし
)” の例文
能く心して
生活
(
なりわい
)
の道を治めよ、と
苦
(
ねんご
)
ろに説き示しければ、弟はこれを
口惜
(
くちおし
)
く思ひてその
後
(
のち
)
生活の道に心を用ひ、
漸
(
ようや
)
く富を
致
(
いた
)
しけるが
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
はじめは、我身の
不束
(
ふつつか
)
ばかりと、
怨
(
うら
)
めしいも、
口惜
(
くちおし
)
いも、ただ
謹
(
つつしん
)
でいましたが、一年二年と経ちますうちに、よくその心が解りました。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
恥しさと
口惜
(
くちおし
)
さに二階の暗がりで風琴を前へ置いて泣いて居り升と、母が丁度帰つて来まして、此様子を見てビツクリし。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
彼は依然として無能無力に鎖ざされた扉の前に取り残された。彼は平生自分の分別を
便
(
たより
)
に生きて来た。その分別が今は彼に
祟
(
たた
)
ったのを
口惜
(
くちおし
)
く思った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私も
亦
(
また
)
、彼にとっては敵の一人であったのだ。この背負投げは、事実であるかも知れぬ……。
口惜
(
くちおし
)
くも私は半信半疑の
靄
(
もや
)
につつまれて来るのであった。——
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
▼ もっと見る
西行の心はこの歌に現れ
居
(
おり
)
候。「心なき身にも哀れは知られけり」などいう露骨的の歌が世にもてはやされてこの歌などはかえって知る人
少
(
すくな
)
きも
口惜
(
くちおし
)
く候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
吾こそは御嶽冠者なり!
口惜
(
くちおし
)
いかな、宝蔵には、
八百万
(
やおよろず
)
の大和の神あって、彼の髑髏盃を守るがため、
容易
(
たやす
)
く
櫃
(
ひつ
)
に近寄り難く、かく一旦は立ち帰れども
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その他にも『永代蔵』には「一生
秤
(
はかり
)
の皿の中をまはり広き世界をしらぬ人こそ
口惜
(
くちおし
)
けれ」とか「世界の広き事思ひしられぬ」とか「智恵の海広く」とか云っている。
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
若「
口惜
(
くちおし
)
い伊之助はん、人に怨みが有るものか無いものか、今に思い知らせる、覚えて居なまし」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
今時
(
いまどき
)
の民家は此様の法をしらずして
行規
(
ぎょうぎ
)
を
乱
(
みだり
)
にして名を
穢
(
けが
)
し、親兄弟に
辱
(
はじ
)
をあたへ一生身を
空
(
いたずら
)
にする者有り。
口惜
(
くちおし
)
き事にあらずや。女は父母の
命
(
おおせ
)
と
媒妁
(
なかだち
)
とに非ざれば交らずと、小学にもみえたり。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
身を
断念
(
あきらめ
)
てはあきらめざりしを
口惜
(
くちおし
)
とは
云
(
い
)
わるれど、笑い顔してあきらめる者世にあるまじく、
大抵
(
たいてい
)
は奥歯
噛
(
か
)
みしめて思い切る事ぞかし
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「——事実を言おう、
口惜
(
くちおし
)
いが、目が光ったんだ。鏨で突き
潰
(
つぶ
)
すと、銅像の目が大きく開いて光ったんだ。……女は驚いて落ちこんだ。」
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僧「
種々
(
いろ/\
)
なのが出ましたな、
嫉妬
(
やきもち
)
の怨霊は不実な男に殺された女が、
口惜
(
くちおし
)
いと思った念が
凝
(
こ
)
って出るのじゃが、世の中には幽霊は無いという者もある、じゃが是はある」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「君は結婚を
極
(
きわ
)
めて
容易
(
たやすい
)
事のように考えているが、そんなものじゃない」と
口惜
(
くちおし
)
そうに云う。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
心を痛めたといふことに………自分が遊戯に
耽
(
ふけ
)
つて善をする機会を失なつてしまつたといふことよりも、なぜ自分はかうも
意気地
(
いくじ
)
なく
善
(
よ
)
い決心が守れまいといふ
口惜
(
くちおし
)
さに泣けたのでした。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
一散
(
いっさん
)
に
遁
(
に
)
げもならず、
立停
(
たちど
)
まった
渠
(
かれ
)
は、馬の尾に油を塗って置いて、
鷲掴
(
わしづか
)
みの
掌
(
たなそこ
)
を
辷
(
すべ
)
り抜けなんだを
口惜
(
くちおし
)
く思ったろう。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
却
(
かえ
)
って心配の
種子
(
たね
)
にて我をも
其等
(
それら
)
の
浮
(
うき
)
たる人々と同じ
様
(
よう
)
に
思
(
おぼ
)
し
出
(
いず
)
らんかと
案
(
あん
)
じ
候
(
そうろう
)
ては
実
(
げ
)
に/\頼み薄く
口惜
(
くちおし
)
ゅう覚えて、あわれ
歳月
(
としつき
)
の早く
立
(
たて
)
かし
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
足下
(
そっか
)
にかけられ、如何にも残念に心得ます、御両親より受けました遺体を
汚
(
けが
)
せし不孝の罪、いかに盲目なればとて
口惜
(
くちおし
)
ながら手出しも出来ず、此の儘に何時まで長らえ居りましても
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
家を出ずる時は甲斐に越えんと思いしものを
口惜
(
くちおし
)
とはおもいながら、尊の雄々しくましませしには及ぶべくもあらねば、雁坂を過ぎんことは思い断えつ
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
貴女に生命を取らるれば、もうこの上のない本望、彼等に討たるるのは
口惜
(
くちおし
)
い。(夫人の膝に手を掛く)さ、
生命
(
いのち
)
を、生命を——こう云う
中
(
うち
)
にも取詰めて参ります。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此のお子が七歳の時
汝
(
われ
)
が前橋の藤本に抱えられて小瀧と云ってる時分、茂之助さんが大金を出して身請えすると、松五郎てえ
悪足
(
わるあし
)
が有って、
拠
(
よんどこ
)
ろなく縁を切ったものゝ、あゝ
口惜
(
くちおし
)
いと男の未練で
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
卑しき桂の遊女の風情に
粧
(
よそ
)
いて、
平
(
たいら
)
の三郎御供申し、
大和
(
やまと
)
の
奥郡
(
おくごおり
)
へ落し申したる心外さ、
口惜
(
くちおし
)
さ。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
いえ、死にとうない、死にとうない。親を殺した
敵
(
かたき
)
と知っては、私ゃ殺されるのは
口惜
(
くちおし
)
い。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
亀屋の亭主も
是
(
これ
)
までと口を
噤
(
つぐ
)
むありさま珠運
口惜
(
くちおし
)
く、見ればお辰はよりどころなき朝顔の
嵐
(
あらし
)
に
逢
(
あ
)
いて露
脆
(
もろ
)
く、
此方
(
こなた
)
に向いて言葉はなく深く礼して叔父に
付添
(
つきそい
)
立出
(
たちいず
)
る二タ
足
(
あし
)
三足め
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
お沢 いいえ、あの急な激しい流れ、
巌
(
いわ
)
に
身体
(
からだ
)
を砕いても。——ええ、
情
(
なさけ
)
ない、
口惜
(
くちおし
)
い。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
新聞にてたたかれし
口惜
(
くちおし
)
さと、綾子に対して言訳なさと、秘蔵の狆の不幸とが
一時
(
いっとき
)
に衝突して、夫人の剣幕さながらダイナマイトのごとくなれば、矢島は
反返
(
そりかえ
)
って両手を前に
突出
(
つきいだ
)
し
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
痛い時、辛い時、
口惜
(
くちおし
)
い時、
怨
(
うら
)
めしい時、
情
(
なさけ
)
ない時と、事どもが、まああってもよ。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
口惜
(
くちおし
)
や、われら、
上根
(
じょうこん
)
ならば、この、これなる烏瓜
一顆
(
ひとつ
)
、ここに一目、
令嬢
(
おあねえさま
)
を見ただけにて、秘事の
悟
(
さとり
)
も開けましょうに、無念やな、
老
(
おい
)
の
眼
(
まなこ
)
の涙に曇るばかりにて、心の霧が晴れませぬ。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
口惜
(
くちおし
)
い……その人の、
咽喉
(
のど
)
、胸へ
喰
(
く
)
いつきましても……
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
口惜
(
くちおし
)
い。御寮人、」と、血を吐きながら
頭
(
かぶり
)
を振る。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
海野は仕込杖もて床をつつき、
足蹈
(
あしぶみ
)
して
口惜
(
くちおし
)
げに
海城発電
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
海野は仕込杖以て
床
(
ゆか
)
をつつき、
足蹈
(
あしぶみ
)
して
口惜
(
くちおし
)
げに
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
惜
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“口惜”で始まる語句
口惜涙
口惜紛