口先くちさき)” の例文
おとこは、めずらしいしなつかると、こころうちではびたつほどにうれしがりましたが、けっしてそのことを顔色かおいろにはあらわしませんでした。かえって、口先くちさきでは
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
てん恩惠めぐみかさね/″\くだり、幸福かうふく餘所行姿よそゆきすがた言寄いひよりをる。それになんぢゃ、意地いぢくねのまがった少女こめらうのやうに、口先くちさきとがらせて運命うんめいのろひ、こひのろふ。
いまいまなくなつたらさびしかろうとおひなされたはほんの口先くちさき世辭せじで、あんなものはやてゆけとはうき𪉩花しほばなちならんもらず、いゝになつて御邪魔おじやまになつて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これはただ口先くちさきだけでいうので釈迦堂を指して厳格にいうようなことは致しませんですから、商売上とかちょいとした話に「チョオー・リンボチェ」を感詞のごとくに話の切れ目に投げ入れても
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
むらや、まちあるきまわって、たくさんおかねをもらってきたときは、父親ちちおや機嫌きげんがようございましたけれど、もし、すくなかったときは、口先くちさきをとがらして
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
無敵むてきにわけのわからぬ強情がうじよう加减かげん唯〻たゞ/\女房にようぼうにばかりやはらかなる可笑をかしさも呑込のみこめば、伯母おばなるひと口先くちさきばかりの利口りこうにてれにつきてもからさつぱり親切氣しんせつげのなき
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おなむらに、与助よすけという才走さいばしったおとこんでいました。このおとこは、きわめて口先くちさきのうまい、他人たにんをそらさぬので、みんなからりこうもの与助よすけといわれていました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しゆまじはればといふことはなのお師匠ししようくせにしてせどもほんにあれはうそならぬことむかしはのやうに口先くちさきかたならで、今日けふ何處开處どこそこ藝者げいしやをあげて、此樣このやう不思議ふしぎおどりたのと
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
どこへいっても、そのおとこは、口先くちさき上手じょうずでありました。そして、めずらしいいしをたくさんあつめました。かれは、それをってみなみくにへいってたかることをかんがえるとたのしみでなりませんでした。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
よしりたりとも再縁さいゑんするひとさへにはおほし、何處どこはゞかりのあることならねばとて説諭せつゆせしに、おそのにこやかにわらひて口先くちさき約束やくそくくにとかれもせん、まことあいなきちぎりはてヽ再縁さいゑんするひとあるべし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)