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初冬
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はつふゆ
ふりがな文庫
“
初冬
(
はつふゆ
)” の例文
残暑の日盛り蔵書を曝すのと、風のない
初冬
(
はつふゆ
)
の
午後
(
ひるすぎ
)
庭の落葉を
焚
(
た
)
く事とは、わたくしが独居の生涯の最も
娯
(
たの
)
しみとしている処である。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
また好きな
初冬
(
はつふゆ
)
が来た。今年は雨が多いので、勤めに出かける人などは困つたらうと思ふ。しかしその雨の
故
(
せい
)
か、今年の紅葉の色は非常に好い。
初冬の記事
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
初冬
(
はつふゆ
)
の暗い夜はまだ明け離れるのに
大分
(
だいぶ
)
間があった。彼はその人とその人の
門
(
かど
)
を
敲
(
たた
)
く
下女
(
げじょ
)
の迷惑を察した。しかし
夜明
(
よあけ
)
まで安閑と待つ勇気がなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
寒空には
初冬
(
はつふゆ
)
らしい雲が望まれた。一目見たばかりで、皆な氷だということが思われる。氷線の群合とも言いたい。白い、冷い、透明な
尖端
(
せんたん
)
は針のようだ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
画工 (
枠張
(
わくばり
)
のまま、絹地の
画
(
え
)
を、やけに
紐
(
ひも
)
からげにして、薄汚れたる背広の背に負い、
初冬
(
はつふゆ
)
、枯野の夕日影にて、あかあかと且つ
寂
(
さみ
)
しき顔。酔える足どりにて登場)
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
伊藤公追弔演説會以來の
獨
(
ひと
)
り
激昂
(
げきかう
)
を思はずまた參禪論に於いてした爲め、神經が再び非常に過敏になつてゐるのが、今、路上の放浪者として、
初冬
(
はつふゆ
)
のしめツぽさと冷氣とに當つて
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
日影
(
ひかげ
)
弱
(
よは
)
き
初冬
(
はつふゆ
)
には
稀
(
まれ
)
なる
暖
(
あたゝか
)
さに
候
(
そろ
)
まゝ
寒斉
(
かんさい
)
と申すにさへもお
耻
(
はづ
)
かしき
椽端
(
えんばた
)
に
出
(
い
)
でゝ
今日
(
こんにち
)
は背を
曝
(
さら
)
し
居
(
を
)
り
候
(
そろ
)
、
所謂
(
いはゆる
)
日向
(
ひなた
)
ぼつこに
候
(
そろ
)
日向
(
ひなた
)
ぼつこは今の
小生
(
せうせい
)
が
唯一
(
ゆいいつ
)
の楽しみに
候
(
そろ
)
、
人知
(
ひとし
)
らぬ楽しみに
候
(
そろ
)
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
お
蓮
(
れん
)
が
本所
(
ほんじょ
)
の
横網
(
よこあみ
)
に囲われたのは、明治二十八年の
初冬
(
はつふゆ
)
だった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
初冬
(
はつふゆ
)
の
日
(
ひ
)
はたそがれぬ
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
初冬
(
はつふゆ
)
のかよわなる
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
君もすこやかなりしか。我もまた
幸
(
さいわい
)
に余生を保ちぬと言葉もかけたき心地なり。
寔
(
まこと
)
に
初冬
(
はつふゆ
)
の朝初めて火鉢見るほど、何ともつかず思出多き心地するものはなし。わが友
江戸庵
(
えどあん
)
が句に
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
私はしばらくそこに
坐
(
すわ
)
ったまま
書見
(
しょけん
)
をしました。宅の中がしんと静まって、
誰
(
だれ
)
の話し声も聞こえないうちに、
初冬
(
はつふゆ
)
の寒さと
佗
(
わ
)
びしさとが、私の
身体
(
からだ
)
に食い込むような感じがしました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蚊遣
(
かやり
)
の
煙
(
けむり
)
古井戸
(
ふるゐど
)
のあたりを
籠
(
こ
)
むる、
友
(
とも
)
の
家
(
いへ
)
の
縁端
(
えんばた
)
に
罷來
(
まかりき
)
て、
地切
(
ぢぎり
)
の
強煙草
(
つよたばこ
)
を
吹
(
ふ
)
かす
植木屋
(
うゑきや
)
は、
年
(
とし
)
久
(
ひさ
)
しく
此
(
こ
)
の
森
(
もり
)
に
住
(
す
)
めりとて、
初冬
(
はつふゆ
)
にもなれば、
汽車
(
きしや
)
の
音
(
おと
)
の
轟
(
とゞろ
)
く
絶間
(
たえま
)
、
凩
(
こがらし
)
の
吹
(
ふ
)
きやむトタン
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
初冬
(
はつふゆ
)
の凍つた明い朝なぞ、忽然冷えきつた鏡の
面
(
おもて
)
に、
顳顓
(
こめかみ
)
の
白髮
(
しらが
)
を見出した時の
驚愕
(
おどろき
)
、絶望、其れは事實に對する恐怖であるが、これは自分の心が生みだす空想の恐怖である
幻覺
(
ハルシネイシヨン
)
である。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
秋の日は
釣瓶
(
つるべ
)
落しだ、お前さん、もうやがて
初冬
(
はつふゆ
)
とは言い条、別して山家だ。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その晩三沢の二階に案内された自分は、気楽そうに
胡坐
(
あぐら
)
をかいた彼の姿を見て
羨
(
うらや
)
ましい心持がした。彼の
室
(
へや
)
は明るい電灯と、暖かい
火鉢
(
ひばち
)
で、
初冬
(
はつふゆ
)
の寒さから全然隔離されているように見えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
画工 (
枠張
(
わくばり
)
のまゝ、
絹地
(
きぬじ
)
の
画
(
え
)
を、やけに
紐
(
ひも
)
からげにして、
薄汚
(
うすよご
)
れたる背広の背に負ひ、
初冬
(
はつふゆ
)
、枯野の夕日影にて、あか/\と
且
(
か
)
つ
寂
(
さみ
)
しき顔。
酔
(
よ
)
へる足どりにて登場)……落第々々、
大落第
(
おおらくだい
)
。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
迸
(
ほとば
)
しる
砂煙
(
すなけむり
)
は
淋
(
さび
)
しき
初冬
(
はつふゆ
)
の日蔭を
籠
(
こ
)
めつくして、見渡す限りに有りとある物を封じ
了
(
おわ
)
る。浩さんはどうなったか分らない。気が気でない。あの煙の吹いている底だと見当をつけて一心に見守る。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初冬
(
はつふゆ
)
の山の手ほどわが
家
(
や
)
の庭なつかしく思はるる折はなし。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
三重吉は
豊隆
(
ほうりゅう
)
を従えている。豊隆はいい迷惑である。二人が籠を一つずつ持っている。その上に三重吉が大きな箱を
兄
(
あに
)
き
分
(
ぶん
)
に
抱
(
かか
)
えている。五円札が文鳥と籠と箱になったのはこの
初冬
(
はつふゆ
)
の晩であった。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初冬
(
はつふゆ
)
の朝の鰹にも我が
朝
(
ちょう
)
の意気の
壮
(
さかん
)
なるを知って、窓の入口に河岸へ着いた帆柱の影を見ながら、この
蒼空
(
あおぞら
)
の雲を真帆、片帆、電燈の月も明石ヶ浦、どんなもんだ唐人、と太平楽で煩っていたのも
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
初冬
(
はつふゆ
)
の日はもう暗くなりかけた。道也先生は風のなかを帰ってくる。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初冬
(
はつふゆ
)
の
夜更
(
よふけ
)
である。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“初冬”の意味
《名詞》
初冬(しょとう、はつふゆ)
冬の初めの頃。立冬を過ぎた頃から12月中旬あたりを指すことが多いが、晩秋の時期とも重複することも多い。
陰暦十月の異称。
(出典:Wiktionary)
初
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
冬
常用漢字
小2
部首:⼎
5画
“初”で始まる語句
初
初心
初々
初手
初夏
初春
初陣
初午
初秋
初旬