兄妹きょうだい)” の例文
今しも、二人づれの兄妹きょうだいらしい日本人の少年少女が、入口の受付で、仁王におうさまのように大きいロシア人から、どなりつけられている。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
九尺二間の星野門弥の家から大病人の目を盗んで刀を持出すことは何でもない、門弥兄妹きょうだいと嘉平太の睨み合いは町内で知らぬ者もない
「おしずは、両親ふたおやも、兄妹きょうだいもないのだから、かわいがってやらなければならぬ。」といって、そこのひとたちは、いたわってくれました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
伯母さんはとても金持なんだが、われわれ兄妹きょうだいがお好きじゃない。だいいち妹が、貴族でもない弁護士風情ふぜいにとついだものでな……
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
三月みつき半年と経つうちに、近所の人はだんだんに遠退とおのいてしまって、お玉さんの兄妹きょうだいは再び元のさびしい孤立のすがたに立ち帰った。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『ホンに、あなたがた年齢としなどはないはずでございました……。でもあなたがたにも矢張やはり、両親りょうしんもあれば兄妹きょうだいもあるのでしょうね?』
たったひとりのご子息に死なれちゃ、お家は断絶、跡目がたたねえからね。わるい知恵の働く兄妹きょうだいとみえて、さっそくくふうしたのが——
右門捕物帖:30 闇男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「海月よ。お前は絶えず光りながら、この兄妹きょうだいを水の上まで送り届けよ。そうして、悪い魚が近付かないように毒の針を用意して行けよ」
ルルとミミ (新字新仮名) / 夢野久作とだけん(著)
今——、不破郡ふわごおり松尾山の長亭軒の城に立て籠っておる浅井の臣、樋口三郎兵衛ひぐちさぶろうべえと、おもと兄妹きょうだいとは、幼少から親しい間がらと聞いたゆえに
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしに勧めるとは! ……ひとでなし、何が兄妹きょうだい! ……手助けはおろか改心なされずば、その旨すぐにも宮様にお告げし……
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
鹿島家の洋館の露台テラスで、社長はじめ敬吉兄妹きょうだい、文吾などを前にして、津川重造はすっかり落ちついた静かな調子で話していた。
水中の怪人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ほかの人たちは——君の父上でも、兄妹きょうだいでも、隣近所の人でも——ただ不思議な子供じみた戯れとよりそれを見ていないのだ。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
兄妹きょうだいがこんな話をしているところへ、つかつかと庭を回って伊那から帰ったばかりの顔を見せたのは、日ごろ勝手を知った得右衛門である。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その代りよし子が美禰子の家へ同居してしまった。この兄妹きょうだいは絶えず往来していないと治まらないようにできあがっている。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は兄妹きょうだいのように話をまじえて、彼女を人間らしく、乙女おとめらしく思わせようとするようなある者と、相並んで歩いているのではないかと思った。
はアお前さんは私とは縁が切れて居ますよ、最う此方こっちへ私の籍を送ってしまえば、奧州屋の者でございますから、兄妹きょうだいでもお前さんに私がお金を
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
与八は、みどりのためにかげになり日向ひなたになって力を添え、みどりは与八与八と唯一ゆいつの頼みにして、二人は兄妹きょうだいのように親しみを加えてゆきます。
停車場へ送って行った帰りに、一郎は外の者に別れて、一の鳥居のそばにいる岡部の兄妹きょうだいを誘って、ホテルに出かけた。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「東京へ勉強にやりましたよ。今時は、女でも、学問がないと馬鹿にされますでなあ。兄妹きょうだいで行ってるんですあ。」
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
学校へゆく二人ふたり兄妹きょうだいに着物を着せる、座敷を一通り掃除そうじする、そのうちに佐介はくわを肩にして田へ出てしまう。お千代はそっとおとよの部屋へはいって
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
このふたりは、兄妹きょうだいではありませんが、まるで、ほんとの兄妹のように仲よしでした。ふたりの両親は、おとなりどうしで、どちらも屋根裏部屋べやに住んでいました。
と、いうような意味の言葉を、一言ひとことずつ、つづるように言った。とはいえ、解けあわぬ兄妹きょうだいでも、遺骨は墓地に納めさせてくれてあったのを、その人々も知っている。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
つまずいてばかりいる。暗い気持である。よっぽど、石塚のおじいさんのところへ行って、あの小さい兄妹きょうだいにおびをして来ようと思ったけれど、やはり行けなかった。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あんなに仲のよかった兄妹きょうだいなんですから、お兄さんのことは何でも知っていましょうと思いますが
情鬼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
かえり見ると、兄妹きょうだい四人はともかくも学校課程かていを終って、少しばかりの月給を貰う身となった。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
然し、八郎太殿の血を受けていながら、兄妹きょうだいとして、そうまでもちがうものか——のう、綱手殿。武士としては、単身、敵地へ間者に入る程の女を女房にしたいものじゃ。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
兄妹きょうだいらしい二人連を見ると、横顔を比べては成程と感心していたが、私は今大発見をした。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
なぜならペムペルとネリの兄妹きょうだいの二人はたった二人だけずいぶん愉快ゆかいにくらしてたから。
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自分の家の墓地から、三十間ばかり来たときに、美奈子はふと、美しく刈り込まれた生籬に囲まれた墓地の中に、若い二人の兄妹きょうだいらしい男女が、お詣りしているのに気が付いた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
得ないことですよ。御自分が尊貴であればあの子も同じ兄妹きょうだいから生まれた尊貴な血筋というものなのだからね。しかしあまり系統がきちんとしていて王風おおぎみふうの点が気に入らないのですかね
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)
じつは久米八の兄妹きょうだいは村次郎ではなく、やはり、このわっしだったのです
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
これがだ源因結果の理法にすぎないと数学の式に対するような冷かな心持でられるものでしょうか。うみの母は父のあだです、最愛の妻は兄妹きょうだいです。これが冷かなる事実です。そして僕の運命です。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
中には、あれは夫婦ではあるまい、兄妹きょうだいだろうと云うものもあった。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
兄妹きょうだいのようか、従兄妹いとこのようか、それとも師弟のようか、主従しゅうじゅうのようか、小説のようか、伝奇のようか、そこは分りませんが、惚れているにゃ違いないのですから、私は、親、伯父、叔母、諸親類
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは二段抜の初号標題みだし畜生道ちくしょうどうにおちた兄妹きょうだいとしたものであった。神中の頭はわくわくとした。神中はくいつくようにしてその記事に眼をやった。それは己等じぶんら兄妹きょうだいを傷つけた憎むべき記事であった。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その年に、母は赤ん坊をんだ。私達は兄妹きょうだい五人となった。うまれた男の子を、子守りするために、私は学校を休む日が、まえより多くなった。ともすると一週間ぐらいぶっとおしに休むことがあった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
追い出された二人の兄妹きょうだいはもとより行く所はありません。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「ふふふそれはあなた、家では何とかいうとすぐあなたの話が出るんですから、あの人だって、まだ見もしないうちからもう青木さん青木さんと言って、お出でになってもまるで兄妹きょうだいかなぞのように思っているんですもの」
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「その目がいいんだ! 目がね、よごれたどんなちりも映さない、山中のまだ発見されない、処女湖のような澄み切った、親切な目なんだ! その女は、全く、どの患者にでも、兄妹きょうだいのように、わざとらしからぬ親切さでもって、接するんだ!」
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
兄妹きょうだいでしょうか」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ビクターにメニューイン兄妹きょうだいの演奏したレコードがある(JD一六二二—五)。イタリーにこんな作曲家のあるのが不思議でもある。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「おまえは、兄妹きょうだい、カフェーのひとたちに、もう一あって、はなしをしたいとおもうか。それとも、あのしずかなはかなかかえりたいとおもうか。」
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしのおァさまは、それはそれはやさしい、いおァさまでございます……。兄妹きょうだいは、あんまり沢山たくさんかずわかりませぬ……。』
三月半年と経つうちに、近所の人はだんだんに遠退いてしまって、お玉さんの兄妹きょうだいはふたたび元のさびしい孤立のすがたに立ちかえった。
ゆず湯 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
兄妹きょうだいふなべりにつかまって、その海月の薄青い光りが、水の底深く深く、とうとう見えなくなってしまうまで見送っておりました。
ルルとミミ (新字新仮名) / 夢野久作とだけん(著)
政子の兄妹きょうだいたちも見えていた。粒々辛苦、長らく仕えて来た配所の家人たちは、ふたりの姿を見て欣し涙を抑えきれなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野々宮兄妹きょうだいと里見兄妹には上等の切符を買わせたと言っている。万事が好都合だと言っている。三四郎は与次郎のために演芸会万歳を唱えた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「送別会」とは名ばかりのような粗末な食事でも、こうして三人の兄妹きょうだいの顔がそろうのはまたいつのことかと思わせた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ゆうべから人殺し騒ぎがつづいているんだからね、今だってもきっとお屋敷にやって来て、兄妹きょうだいふたり、わるだくらみをしているに相違ねえですよ」
右門捕物帖:30 闇男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
国研へ就業しゅうぎょうさせたものであるが、決して兄妹きょうだいとも知合しりあいであるとも他人に知られてはならないという約束であった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)