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億劫
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おっくう
ふりがな文庫
“
億劫
(
おっくう
)” の例文
二つには八橋に逢いに行くということが
億劫
(
おっくう
)
であるので、栄之丞は自分から進み出てその話を取り結ぼうとする気にもなれなかった。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
雪の降ったあとで郊外に住んでいる自分にはその雪解けが
億劫
(
おっくう
)
なのであったが、金は待っていた金なので
関
(
かま
)
わずに出かけることにした。
泥濘
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
夜淋しすぎるところに住んだり林町のように
億劫
(
おっくう
)
なところに居ると忽ち車代がびっくりするようになる。林町には空気全体がいやです。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
またわからない言葉を何か
喋
(
しゃべ
)
らねばならぬのも
億劫
(
おっくう
)
の種であるので、とうとう一ケ月以上も入浴をしない事は
稀
(
めず
)
らしくはなかった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
つまりそういう交渉を極端に
億劫
(
おっくう
)
がる性質なの。そういう交渉なしに子供が出来るんだったらいいけれども、そうもゆかないでしょう。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
「あなたの、『今に』はこれで
最早
(
もう
)
十五年続きますから恐れ入りますわ。そう
億劫
(
おっくう
)
がらないで、何でも宜うございますから……」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
第一俺は金持ちが嫌いだ、権勢家も虫が好かぬ、山を離れて人里へ行く、これが何より
億劫
(
おっくう
)
だ、こう云われたそうでございます。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
酔の
廻
(
まわ
)
った頭に、ものを考えるのが
億劫
(
おっくう
)
になって来ると、結局落着く先は、いつもの「イグノラムス・イグノラビムス」である。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
こんな恰好をしてこの女が不思議に思うだろうとは気が付いていたが、何をするのも
億劫
(
おっくう
)
で
頓
(
とみ
)
には姿勢を変える気にもなれぬのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
年が行かないためか、舌がよく回らないので、抗弁のしようがいかにも
億劫
(
おっくう
)
で手間がかかった。宗助はそこを特に面白く思った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「いうな、たれが
億劫
(
おっくう
)
だといった。ただ不便と感じただけのこと。よしよし、あす一日
潔斎
(
けっさい
)
して、われ一人、天師の仙家へまかるであろう」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こういう問題にとり付く一番平易な方法は、先ず雪そのものをよく観るということと、着手の
億劫
(
おっくう
)
を避けるということである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
その夜、——なんだか妙に疲れて
腑
(
ふ
)
抜けみたいになって、私は大森の家へ帰るのが
億劫
(
おっくう
)
になり、アパートに泊ることにした。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
これをつり上げるのが
億劫
(
おっくう
)
さに、夕方一度便所に水を通すことを怠けると、パイプに一杯の
糞
(
ふん
)
が凍りついてしまうのだった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
今夜は幾度でも
億劫
(
おっくう
)
がらずに答へるばかりでなく、次第に媚びを含んだやうな、何とも云へない優しい声を出すのである。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
外へ出て風に当ってみるとさしたることもない、槇町へゆこうかと思ったが、それも
億劫
(
おっくう
)
で、店へも寄らず家へ帰った。
寒橋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
寧
(
むし
)
ろ起き直ってみることさえも
億劫
(
おっくう
)
がって、せっかく破られた夢を再び結び直すのに長い暇を要することなく、村のあらゆる人々の
恟々
(
きょうきょう
)
たる一夜を
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして心身ともに以前に倍しておすこやかになり、ともすれば
懶惰
(
らんだ
)
に、
億劫
(
おっくう
)
になりがちなわたしたちのために、発奮させる原素となって下さいまし。
平塚明子(らいてう)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
手を伸ばすか、どうにかすれば、水差に水はある
筈
(
はず
)
、と思いながら、枕を乗出すさえ
億劫
(
おっくう
)
で、我ながら
随意
(
まま
)
にならぬ。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まず近郊の紅葉としてはいささか名所らしく見られたものの、交通不便の当時は市内からちょっと
億劫
(
おっくう
)
で足が向かぬ。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
目が始終
曇
(
うる
)
んで、手足も
気懈
(
けだる
)
そうであった。その晩も、近所の婦人科の医者へ行って診てもらうはずであったが、それすら
億劫
(
おっくう
)
がって出遅れをしていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それを
億劫
(
おっくう
)
がって
躊躇
(
ちゅうちょ
)
していたのを、今日はもはや猶予もせずに、直ちに
老刀自
(
ろうとじ
)
を呼んで相談して、娘にいいつけて、青木の絵を取り出してかけさせた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
女房はいちど墓参りをしたいと云っているが、私は
億劫
(
おっくう
)
にしている。草ぼうぼうに違いあるまいから、その辺の金物屋で鎌を買ってゆくことになるだろう。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
これから他人の家の一
間
(
ま
)
を借りて、恋でも情けでもない見知らぬ人間に気兼ねをするのが私には
億劫
(
おっくう
)
であった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
しかしこの
刹那
(
せつな
)
がすぎると、今度は際限のない怠惰な気持におちいり、古寺巡りなどもう
億劫
(
おっくう
)
になってしまう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
返事が無かった。少からず気になっていたが、私は人の身の上に就いて自動的に世話を焼くのは、どうも
億劫
(
おっくう
)
で出来ないたちなので、そのままにして置いた。
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一日の間に数知れぬ芸術品を見て回って、夕方には口をきくのが
億劫
(
おっくう
)
なような心持ちで帰ってくる。しばらくは柔らかい椅子に身を埋めてぼんやりしている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「アレは取りに来る様に再々家族の方へ言ってあるんですがね、
億劫
(
おっくう
)
がって誰もまだ来ないんですよ。」
鋳物工場
(新字新仮名)
/
戸田豊子
(著)
随分
億劫
(
おっくう
)
な世界一周も一緒にやり通し、だんだん人生に残り惜しいものも無くなったような経験も見聞も重ねて、今はどっちへ行ってもよいような身軽な気持だ。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
こういうことは以前からしばしばみんなに話はしたものの、
億劫
(
おっくう
)
がって実現されたためしがなかった。
残肴の処理
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
走る町を眺めながら、どんな口上で啓吉をあずけたものかと、もうそれが
億劫
(
おっくう
)
で仕方がなかったのだ。
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
前回
(
ぜんかい
)
の
竜宮行
(
りゅうぐうゆき
)
のお
話
(
はなし
)
は
何
(
なん
)
となく
自分
(
じぶん
)
にも
気乗
(
きの
)
りがいたしましたが、
今度
(
こんど
)
はドーも
億劫
(
おっくう
)
で、
気
(
き
)
おくれがして、
成
(
な
)
ろうことなら
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
こうむ
)
りたいように
感
(
かん
)
じられてなりませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
億劫
(
おっくう
)
そうに李聖学が長髯をひねりながらのろくさい様子で箱から下り、箱の蓋を取った。トラックの横にくくりつけた小さいリヤカアを外し、三人は協力して桶を下した。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
正「そんな事をするのも
億劫
(
おっくう
)
でげすから、云わない積りで
私
(
わたくし
)
まで内証で、耳打で、その作銘を一寸いって下さいな、云わねえくらい
強気
(
ごうぎ
)
と訳の分らねえ事は有りやすめえ」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼にはもう当座の嘘を言うのが
億劫
(
おっくう
)
になっていた。といって、
真実
(
ほんとう
)
のことも言われなかった。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
話をするのが
億劫
(
おっくう
)
になったので、彼は座席に深く背をもたせ、窓の外ばかりを見ていた。街並が急に明るくなって、八百屋だの薬屋だのが群れている
一郭
(
いっかく
)
に出た。矢木が言った。
記憶
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
私はその夏も殆ど山の家に閉じこもった儘でいた。八月の間は、村をあちこちと二三人ずつ組んで散歩をしている学生たちの
白絣姿
(
しろがすりすがた
)
が私を村へ出てゆくことを
億劫
(
おっくう
)
にさせていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
看護婦は叔父の言葉をおそらくはただ
億劫
(
おっくう
)
がって繰返したにすぎなかったのであろうが、ともかくそれは第三者から見てさえ
嘲笑
(
ちょうしょう
)
しているもののようにとられ、叔父はもちろん
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
と
生返事
(
なまへんじ
)
をするほかなかった。始めて口をきく幾人もの男の前で、とっかは物をいうのがさすがに
億劫
(
おっくう
)
だった。興録は事務長の意向を読んで取ると、
分別
(
ふんべつ
)
ぶった顔をさし出して
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
赤いペンキで「○○理髪店」と書いてある
硝子戸
(
ガラスど
)
に顔をくっつけて中をのぞくと、彼と同年ぐらいの、白い仕事着を
被
(
き
)
た男が、読んでいる
将棋
(
しょうぎ
)
の本ごしに
億劫
(
おっくう
)
そうにこっちをみたが
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
億劫
(
おっくう
)
なのか、忘れたのか、それとも、自分で取りに行くのはいけないと思ってか?
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
右手の谷間には人家が現われた。小滝や銀山平であるらしい。八、九町も逆戻りするのは
億劫
(
おっくう
)
であるから、左手の水の流れる窪を択んで、二丈近く伸びた唐松林の中も尾根の方へと登った。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それですから、お母さまにはいつものように
邪慳
(
じゃけん
)
で、
我儘
(
わがまま
)
のきりをいたしますけれども、自分が受けようとする感動には、きまって
億劫
(
おっくう
)
そうに、自分から目を
瞑
(
つむ
)
っては避けてしまうのです。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
お前達船酔いしそうになったらな、みんな取っ組み合って腕角力するんだぞう。すると血が顔に上って船酔いしねえそうだ。
億劫
(
おっくう
)
だったら、そうだな、より紙でもこさえて鼻穴をつついて
嚏
(
くさめ
)
を
親方コブセ
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
ちょっと駆け出して行けば、ものの三分ぐらいですんでしまうことなのに、なんとも
億劫
(
おっくう
)
で、どうしても腰をあげる気にはなれない。腰どころではない。眼さえも庭のほうへは向きたがらない。
キャラコさん:06 ぬすびと
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
おらア元から朝起きが好きだ、夏でも冬でも天気のえい時、朝っぱらの心持ったらそらアえいもんだからなア、年をとってからは冬の朝は寒くて
億劫
(
おっくう
)
になったけど、
其外
(
そのほか
)
ん時には朝早く起きるのが
姪子
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そう云えばまッ当らしいが、それから以前のことは、聞かせたくもなければ思いだすのも
億劫
(
おっくう
)
なのだ。概して昔のことは考えたくない彼であった。
勿論
(
もちろん
)
行く末のことは神さまだけしか知らないだろう。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
とると遠出の旅は
億劫
(
おっくう
)
になった。お前代りに行ってくれないか
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
かなり
億劫
(
おっくう
)
な帰郷ではあった。
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
「食べたり食べなかったりよ。わざわざ買うのは
億劫
(
おっくう
)
だし、そうかって
宅
(
うち
)
に何かあっても、
昔
(
むか
)
しのように
旨
(
おい
)
しくないのね、もう」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
億
常用漢字
小4
部首:⼈
15画
劫
漢検準1級
部首:⼒
7画
“億劫”で始まる語句
億劫千万